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社会

「生まれたときから貧困の地域も」日本人事業家が単身でタンザニアに渡った理由

角田弥央(株式会社Darajapan代表取締役)

2022年03月13日 公開 2022年12月12日 更新

 

パートナーとしてタンザニアと日本を繋ぐ

――角田さんはタンザニアを拠点に活動していますが、実際に足を踏み入れて感じた社会課題は何でしょうか。

【角田】やはり貧困格差ですね。都市部から少し町を離れると、途端に劣悪な環境が広がっています。たとえば、アフリカのサブサハラ地域では人びとが1日2ドル以下の収入で暮らしており、大きな問題は、彼らは生まれたときから貧困から抜け出せない状況にいるということです。生活を改善しようとする意思すら芽生えませんから、貧困から抜け出せない負のループが各地で生まれています。

加えて、タンザニアは深刻な生活環境の問題を抱えています。電気が通っていない地方では、いまだに8割を超える市民が薪を使って生活していますが、家の中で火を焚く人が多く、煙を吸って亡くなる人が後を絶ちません。とくに犠牲になっているのが家庭を守る女性や子どもたちで、調査したところ驚くことに、1日で71人もの人が燃やした薪から出る煙のせいで命を落としています。

衛生に関しても課題を抱え、マラリアなどの感染症の被害も相次いでいます。町のゴミ問題も解決されていません。国家・行政として収集システムが構築されていないために、現在はゴミが町中に溢れている状況です。そこで私が考えたのが、ゴミや糞尿などを再利用して、カーボンニュートラル燃料を開発するというものです。

――具体的にはどのような燃料なのでしょうか。

【角田】いま開発しているのは「バイオブリケット」と呼ばれる新バイオマス燃料です。原料は有機ゴミや糞尿などの有機廃棄物で、環境にも優しくて二酸化炭素の排出量を抑制できるよう開発を進めています。ただし、燃料の製造には多くの課題が残っており、現在は資金調達を行ないながら現地のエンジニアや固形廃棄物、有機ゴミの専門家と協力して商品開発をしている段階です。

最終的には、いまから1年後にはテストマーケティングを終えて、現地の薪・木炭を使っている飲食店で活用できる状態に漕ぎつけて、3年後にはダルエスサラーム郊外・タンガ地域全体に届けることが大きなビジョンです。

もう1つ社会課題をお話しすると、タンザニアは人口に対する働き先が少ない。ここでも新バイオマス燃料の製造は効果的で、「ものづくり産業」を実現させれば、現地で製造・運送・販売にともなう雇用を創出できます。

――バイオブリケットの開発以外にもあらゆる公衆衛生事業に取り組まれていますが、そのビジネスモデルについて、あらためて教えてください。

【角田】Darajapanの活動を紹介すると、現地の植物や果物の廃棄物からエッセンシャルオイルを生成するなど、さまざまな商品を開発・流通させることで収益を得ようと考えています。行政とともに未電化地域への送電事業やゴミの回収事業に繋げていくことも考えています。

――そんなタンザニアに対して、日本はどのような関係構築を働きかけるべきだとお考えですか。

【角田】日本にとってタンザニアはODA(政府開発援助)などで支援する関係ではなく、対等に渡り合うパートナーとして共に活動していくことが大切だと考えます。

Darajapanでも人材育成に力を入れていますが、私としてはタンザニアのエンパワーメント(能力開化)を実現していきたいと考えています。国家全体の生活水準の向上は、一人ひとりの経済的自立の実現が何よりも重要です。その際、礼儀や規律を重んじる日本人の姿勢は、信頼関係を築くうえで必ず役に立つはずです。

――タンザニアの経済的自立が、結果的に日本にも恩恵をもたらすかもしれません。

【角田】ここ最近、紛争地や貧しい家庭で育った若者のなかにも、「祖国を良くしたい」という熱意を抱いて起業する潮流が起きはじめています。そうした発展途上国のスタートアップに技術提供や資金投資を行なえば、将来的には日本経済にも価値を与えるようなグローバル企業が誕生する可能性だってゼロではありません。

また、日本は食料を輸入に依存している一方、タンザニアは自給自足がメインです。もともと食料が豊富であることに加え、サステイナビリティ(持続可能性)といった価値観や、コミュニティで食事を共にするなど資源を分け合う文化が根付いています。そんなポテンシャルを活用しながら、日本とタンザニアが共同で商品を開発すれば、両国の経済はおのずと活性化されるはずです。日本人にとっては馴染みが薄いかもしれないタンザニアにも、じつは大きな可能性が潜んでいるのです。

 

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