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「すぐ集中が途切れる人」と「集中力が高い人」の決定的な違い

池田義博(一般社団法人記憶工学研究所 (MEI) 所長)

2022年04月16日 公開 2022年04月18日 更新

 

能力に大きな差をつけるのは集中力だった

しかし現実には、成績に差が生じます。覚えた量を競うのですから、はたから見れば記憶力の差に見えるでしょう。しかし先ほどご説明したように、誰もが技術を使って覚えることから考えると、成績の差にはあきらかに別のファクターが介在します。

それが冒頭で申し上げた、集中力です。

この集中力、人それぞれいろいろな捉え方があると思います。集中しているかどうかを測って数値を出すのは困難ですし、ある意味抽象的で定義づけが難しい能力です。しかし共通して言えるのは、いずれも周囲の雑音を排除し一つのことに取り組めるという点です。

集中力が重要なのは記憶力だけではありません。ほかの脳を使う能力は、すべてこの集中力が土台となっています。集中力の働きが悪いと、思考力や想像力、コミュニケーション力も、どんな能力も本領を発揮するのが難しくなります。

そういった意味で、この集中力は「能力の王」といっても過言ではないでしょう。

この集中力の重要性について、私も最初からわかっていたわけではありません。数々の実体験から導き出した答えです。あるとき記憶力の大会ごとに自分の成績にばらつきが出ることに気づきました。行っている競技内容は同じ、記憶の仕方も同じ、つまり使われている記憶力は同じなのに成績が違うのは何が要因か考え出た結論が、集中力だったのです。

 

「イメージ空間」に入れる人は集中力が高い

そこから記憶力だけでなく集中力に対する研究も始め、たどりついたのが意識や注意、そして思考が行われる「スペース」が集中力の決め手になる、ということでした。

たとえば面白い小説を読んでいるときに、目では文字を追っていますが、意識は別のところに行っているかのような感覚を経験したことがありませんか。頭のなかに映像が浮かぶ人もいると思います。そういうときほど、物語を記憶したり登場人物に感情移入したり、しやすかったはず。

意識がこの状態にあるとき、間違いなく人は集中モードに入っていると言えます。

この集中力を発揮しているときに入ることができる思考の空間、「イメージ空間」と言い換えてもいいかと思いますが、ここに意識が入れるかどうかが集中力をアップさせる鍵を握るのです。

記憶力グランドマスターの称号を獲得する条件のなかには記憶時間が1時間、思い出す解答時間が2時間、合計3時間にもおよぶ競技があります。ここまでくるともはや記憶競技ではなく集中力競技といってもいいくらいです。

この脳にとって過酷なタスクを乗り越えて私がグランドマスターを獲得できたのも、意識をイメージ空間のなかに置き続けられたからこそと考えています。

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天才たちは、こうやって集中力を養っていた

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