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脳科学者・中野信子が「集中力は身につけるものではない」と語るワケ

中野信子(脳科学者)

2021年12月03日 公開 2023年10月13日 更新

脳科学者・中野信子が「集中力は身につけるものではない」と語るワケ

東京大学を卒業後、同大学大学院の博士課程で脳神経医学を専攻して博士号を取得した中野信子氏。フランス国立研究所にポスドク(博士課程修了の研究者)として勤務したり、世界の全人口で上位2%の知能指数に入る人のみが入会を許される団体・MENSAの会員になったりした経験も持つ。その中で見てきた「世界の頭のいい人たち」に共通することとは?

※本稿は、中野信子著『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)の一部を再編集したものです。

 

環境を整えることで集中力は自ずと湧いてくる

集中力とひと口に言っても、個人差が大きいもの。自分は飽きっぽいから、集中力なんて身につかない…。そんな風に思っている人もいるかもしれません。でも、もしあなたがそう思っていたとしたら、非常にもったいないことです。

「自分はいろいろなことに目移りしがちなので、一つのことに集中するのが難しいんです」という人は、まず「集中力を身につける」という発想を捨ててほしいと思います。

本来、脳というものは、集中できる環境を作ってやると、勝手にそのことに集中してしまうようにできています。「集中力をつける」ための意味のなさそうな努力を一生懸命するよりも、脳が集中しやすい環境作りをすることのほうが、ずっと簡単で効果的なのです。

私自身、かなり目移りしがちな性格です。自分でもそう思いますし、友人たちに聞いても口を揃えてそう言います。かといって、物事に集中できないかというと、そうでもありません。読書でもゲームでも、一つのことを始めてしまうと、周りで誰かが何かを言っていてもまったく耳に入らないような状態を作ることができます。

高校時代の思い出ですが、私が勉強に熱中するあまり、母が心配して「あんまり勉強すると頭がおかしくなるからやめなさい」と怒られてしまったこともありました…。でもこれは、私に「集中力がある」からではなく、集中するためのお膳立てがうまくいっていたということにほかなりません。

それでは、集中しやすい環境を整えるには、どうすればいいのでしょうか?

人の脳は、雑音や騒音があると、そちらに注意が向いてしまい、集中すべきことに集中できなくなってしまいます。音楽やテレビの音、人の話し声などがそうです。

集中している状態が続いているときには、これらの音は気にならなくなります。

 

聴覚や視覚を刺激するものを遮断することが大事

そこでまず、集中するための一つ目の方法を紹介します。仕事や勉強を始めようというときには、人間の注意を惹きがちな音楽やテレビなどは消してしまいましょう。できるだけ、注意を向ける音が少ない環境で始めるようにします。

誰かが何かしら話しているようなオフィスや喫茶店で、作業に集中しないといけない場合は、相手に失礼にならない範囲で耳栓を使ってみるのもいいでしょう。

耳から入る刺激ばかりではなく、目から入る刺激も気になる人は、作業を妨げない程度のレンズの色が薄いサングラスや、色付き眼鏡をかけてみるのも悪くない方法です。これは、注意が外界に向きがちになるのを抑えてくれるでしょう。

集中する二つ目の方法は、途中で邪魔が入らないようにすること。

例えば、パソコンで仕事をする場合、資料をまとめたり、気を遣う相手へメールを書いたりするのは、とても集中力を要する仕事です。なるべく前もって、邪魔になりそうな要素を排除しておきたいものです。

恐らく一番の邪魔になるものは、メールやSNS経由のメッセージでしょう。これらに邪魔されると、そのメールやメッセージを処理するのに1分程度で済んだとしても、頭をもとの集中状態に戻すのに30分以上かかることもあります。

「朝と晩の2回など、メールをチェックする時間帯をあらかじめ決めておいて、それ以外の時間はチェックしない」など、自分でルールを設定しておくといいと思います。

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快適にすればするほど集中力は高まる

著者紹介

中野信子(なかの・のぶこ)

脳科学者

1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所に博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。現在、東日本国際大学教授。

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