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生き方

「お前は何者でもない」中傷された14歳、自閉症の作家が闘い続ける理由

ダーラ・マカナルティ(著)、近藤隆文(訳)

2022年07月27日 公開

 

参加者は1万人超。ビッグイベントでのスピーチ

ぼくのソーシャルメディアはここ何週間か、ミツバチの巣箱みたいに大にぎわいだ。ナチュラリストでテレビ司会者のクリス・パッカムが<ピープルズ・ウォーク・フォー・ワイルドライフ>をロンドンで開催するということで、「人新世(じんしんせい、ダーラ自作の詩)」を暗唱してほしいと頼まれた。

ここ何週間か、ぼくはロンドンでのそのチャリティウォークの認知度を上げようと動画を撮ったり何度もツイートしたりしてきた。思い描くだけでわくわくする。何千とまではいかなくても、何百人もの人が野生生物のために行進するんだ。

ハイドパークには空港から直行してかなり早めに着いた。何千人もがもうやってきていて、暗くなる雲の下、さらに数千人が人間の共感(エンパシー)と仲間意識に輝くこの日に到着した。

ぼくはずぶ濡れになり、降り注ぐ雨のなかに立つほかのみんなと同じで、髪の毛からしずくが垂れていた。不安が渦巻きはじめた。みんなの前に立つと、静寂が人々の上に下りるように見えた。期待だ。

でもステージ上のぼくは強い気持ちでスピーチした。ぼくの言葉はきっぱりとして、情熱に燃えていた――ほかの人にうまく火をつけたのならいいんだけど。

最後はけっこうアドリブで話したし、何を言ったのかはっきりはおぼえていない。もどかしくて、どうにもならない気持ちがあふれ出てきた。ぼくは感じていることをぶちまけた、たしかに伝えた。もしかしたらぼくの言葉が助けになるかもしれない。

そのあとのスピーチはどれもすごかった。世代を超えていた。有意義で勇気がわいてくる。

つづいて、ぼくらはハイドパークからホワイトホール〔ロンドンの官庁街〕へと向かい、野鳥の鳴き声を携帯電話から流しながら、嘆きと希望の行進として、2万本以上の足で舗道を踏みしめ、野生生物のために、失われたもののために、これからの使命のために進んでいった。

気づくとぼくはホワイトホールのどこか大きくて騒がしいスペースに、5人の若い運動家とクリス、それから総理大臣の環境方面の特別顧問といっしょに座っていた。

これは意見を言うチャンス、政府の役人に聞いてもらうチャンスだった。だからぼくは体と脳をひとつに整え、不安をしまいこみ、気持ちを抑えた。やるしかない、ぼくは決意した。

特別顧問はいい人そうだったけど、話してみてとてもはっきりしたのは、政治的には、おたがい鳥や自然を愛していても、立場がぜんぜんちがうということだ。それでもぼくはあきらめずにチャンスをつかみ、言葉をほとばしらせた。

環境教育が不足していること、政府は急がないといけないこと、社会はすっかり変わらないといけないこと、根本的な改革が、勇気と大胆さが必要なこと。

それはぼくの言葉というだけじゃなかった。ぼくら、老いも若きも含めたたくさんの人の思いだ。気にかけるぼくらの。ぼくらはそれを、毎日ずっと感じている。それで胸をしめつけられたりへとへとになったりしても、前に進みつづけること、心からの行動をすることが肝心だ。

こうして書いているいま、暖かさが湿った肌を通してしみ込んでくる。ぼくらは何か大きなものの一部だった。まる1日、ちょっと地下鉄で移動しているみたいで、あまりにも目まぐるしくて全部は理解できなかった。

でもぼくは手助けできるとわかっている。ぼくらみんなが手助けできる。一部を担うことが大切だ。いまはそう思う。ぼくらのアイディアや訴えが風に飛ばされてしまうかどうかに関係なく、まだまだ変化を求めつづけないといけない。

 

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