今年1-8月、ニューヨークでの『銃』の売り上げが前年比で8割近く増加しているとの調査結果が出た。新型コロナの感染拡大阻止のために講じられたロックダウン期間中には、アメリカで銃の売り上げが伸びているとのニュースに「さすがアメリカ、クレイジーだな」などと嘲笑する声も聞かれたが笑っている場合ではない。
我々日本でも手段は違えど同様のことが起きている…それは、SNS等での誹謗中傷である。誹謗中傷は許されることではないが、コロナ禍が引き出す人間の本能的行動ともいえる。
明治大学教授、堀田秀吾氏にコロナ禍で誹謗中傷という言動に走る人々の心について分析してもらった(聞き手:吉澤恵理)。
自分の心を守るために他者を攻撃してしまう「攻撃機制」とは?
SNSに対する誹謗中傷が原因で自殺者まで出る昨今、そういった誹謗中傷には目を背けたくなるような酷い言葉が投げつけられることも。なぜ誹謗中傷を行ってしまうのか?
「誤解に基づく意見の相違、発信者の行き過ぎた規範意識や異常なパーソナリティーなどさまざまなもの考えられますが、その多くの原因となるのが不安や不満です」
不安や不満は誰にでもあり、誰かを誹謗中傷することで解決の糸口が見つかるとは思えないが…
「本来、人間には、"適応機制"という心を守るためのメカニズムがあります。人は、不満を持ったり、不安にさらされたりすると、心を守るための行動に出ます。
何か他のことに関心を移すことで解消したり、自分の中で解決策を理性的に考えて見出したり、現実逃避したりといろいろな心の守り方がありますが、他者の攻撃に出るのもその1つで"攻撃機制"と呼ばれます」
他者を攻撃することで、そういったネガティブな感情を解消する…冷静な状態で考えればそのような行動は道徳的にもよくないことは誰にでも理解できるはずだが誰にでも攻撃規制をとる可能性がある。
「また、人は本能として、誰かの優位に立ちたいという欲求があります。生存競争を勝ち抜くためには優れている必要があり、他者と比較することで自分の"位置"を確認できます。誰かを誹謗中傷することで、自分の優位性を確認・確保しようとするわけです」
確かに子供の頃はスクールカーストがあり、大人になってもマウントを取り合うなど「他者との比較」に縛れている現代は、常に強いストレスに晒されていると言っていい。
まして、長期化するコロナ禍の生活は常に不安がつきまい。無意識に「攻撃機制」をとってしまうことがSNSの誹謗中傷が増加する一因かもしれない。
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SNSの誹謗中傷が他人を傷つけると同時に、自分の脳へもダメージ