いつも恋愛が実らない、長続きしないと悩んでいる人はいませんか。うまくいかない恋愛には心理学的な原因があるのかもしれません。目白大学名誉教授の渋谷昌三氏が解説します。
※本記事は渋谷昌三著『[新装版]すぐに使える! 心理学』(PHP研究所)の一部を抜粋、編集したものです。
第一印象で好意の返報性を活用する
悪いイメージを第一印象で与えてしまうと、それをくつがえすのは大変です。心理実験で、1人の人物に2通りのパターンで雑談をしてもらいました。1つは「あたたかくて、好感がもてる振る舞い」、もう1つは「つめたくて、横暴で口やかましい振る舞い」を演じてもらいました。
すると、後者の彼を見た被験者は「容姿やクセ、言葉の訛りが腹立たしく、好きになれない」と回答しました。
容姿やクセ、それに言葉の訛りはどちらのパターンでも変わらないものです。それなのに、いったん嫌われると、その人のもつすべてが気に入らないものと受け取られてしまうのがわかると思います。最初の印象が後の印象を強く規定してしまうこの現象を初頭効果といいます。
そうしてできあがった印象のもとでは、どんな言動でも悪くとられてしまうので、そう簡単にくつがえせません。初対面の人と会うときは細心の注意を払うべきだという教訓でもあります。
さて、そこでポイントになるのは、相手に対し好意をもつことです。人は本来自らの評価を高めたいという欲求をもっています。ですから、高く評価されたり好感をもたれると、欲求が満たされ、その相手を好きになるのです。嫌われたり酷評されれば当然逆の結果になります。これを好意の返報性と呼びます。
マイナス面を最初にオープンにする勇気も
もう1つ押さえておきたいのは、自分にとって都合の悪い情報は最初にオープンにしておく、ということです。これは接種理論と呼ばれるもので、インフルエンザにかからないように、前もって病原体を体内に取り入れておく予防接種と同じ考え方です。
たとえばあなたが人が憧れるようないわゆるカタカナ職業についていて、華やかな交友関係ばかりを交際相手にアピールしたとします。その実、忙しいばかりでたいして収入がないということが後からわかると、相手はだまされたという気持ちになるかも知れません。
ところが、「忙しくて収入も少ないけど、充実した仕事で毎日が楽しい」というような伝え方をしていれば、好意的に受け取ってくれることでしょう。
これはセールストークでも有効な方法で、よいところばかり伝えるよりも、マイナスの情報も伝えておけば、伝える側の正直さもアピールできるし、後からマイナス面を知って不信感をもたれるのを避けることができるのです。