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「恋愛はするが結婚はしない」ずるい男性の正体

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2022年02月08日 公開 2023年07月26日 更新

「恋愛はするが結婚はしない」ずるい男性の正体

世の中には悪賢い人がたくさんいるが、ある種の女性は、そういった質の悪い人に狙われる可能性があると加藤氏は警鐘を鳴らす。ずるい人が「俺の言うことなら何でも聞く」と察知して狙いを定める女性とは、どういった特徴があるのか?

※本稿は、加藤諦三著『不安をしずめる心理学』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。

 

自分の価値を自分で信じられない

「馬恐怖症」という有名な話があります。

なぜか馬を怖がる子どもがいる。変だなと思ってその理由を調べてみると、実は父親への恐れがありました。子どもがお父さんを怖がっていては、お父さんは自分のことを良く思ってくれないでしょう。

父親への恐怖に怯えて、その葛藤が馬恐怖症に置き換えられていたのです。

この、父親に良く思ってもらいたいという心理がとても重要です。もしこの少年が「僕、お父さん嫌い」と思っていたとしたら、どうなるでしょう。「お父さん嫌い」。これは子どもの父親が望む感情ではありません。だから、子どもは父親が怖いという感情を自分の意識から無意識に追放して、何か他のもの(馬)を見つけてきて対象を置き換えるのです。

こうした恐怖の置き換えは、特に小さな子どもに多く見られます。子育てをされている方は思い当たることがあるのではないでしょうか。子どもが、奇妙なものをとても怖がるというのは、本当は他の誰かが怖いのです。その人から悪く思われることが、自分の存在に危険をもたらすので、不安になるのです。

恋人と一緒にいても、いつも不安だという人がいます。恋人に良く思ってもらおうとして何かをしたとする。今度はその何かしたことで恋人に良く思ってもらえたかどうかと考えて、不安になるのです。

 

断って嫌われるのが怖い

人に良く思ってもらうことによって、安心感を得ようとすると、こんなことを話題にしたら、人間性が疑われるのではないか、ということが気になってきます。

また、他人に良く思ってもらうことばかり考えていると、結果的に他人が嫌いになります。他人にぺこぺこしてばかりいるような人は、自分に対して心を閉ざしているわけで、相手に対しても心を開いていないのです。言い換えると、やはり自我の確認というのは自分自身でしなければいけないということです。

何かを頼まれ、自分の能力をオーバーしたことまで引き受ける。できなかったらどうしようと不安になり、そのまま頑張るのですが、あらゆることが不安になり、どんどんつらくなっていきます。

人の評価を得ようと一生懸命努力しながらも、そのために、ますます人を嫌いになるという人がたくさんいるのです。

要するに、人間関係をめぐる挫折やコミュニケーションのトラブルは、自分が自分であるということを信じられないことから生じます。それこそが不安の正体です。

さらに不安の症状というものを考えてみたいと思います。なぜ、それほどまでに不安になるのかを、もう少し考えてみましょう。

一生懸命努力して、頑張って幸せになれればいいのですが、前にも述べたように、現実の世の中にはそのせいで不幸になっている人がいるのです。なぜ一生懸命頑張って、自分から不幸になるようなことをするのでしょうか。

些細なことで悩む、というのは、不安を感じていない人からすると「どうしてあんなことで悩んでしまうのだろう?」と不思議に思えます。「断ればいいではないか」と思うのです。

ところが、本人は断れません。自分の能力以上のものを引き受けてしまいます。

なぜなら、断って嫌われるのが怖いからです。そして無理をして、背伸びをするような努力をします。自分の能力を超えて引き受けてしまう人は、断ることで、自分の価値が否定され、自分の価値を認めてもらえなくなるのが怖いので断れないのです。

これが「他者への逃避」です。ロロ・メイや、さまざまな人が言っている「成功者のうつ病」です。

「笑顔のうつ病者」とも言いますが、うつ病になる人は頑張って努力して、最後はみんなから「おかしいんじゃないの?」と言われます。そういうふうに思われるのも、その人が、いかに他者からの評価によって、自分自身を維持しているかの証です。

自分の自我の確認ができる人、他者への逃避をしない人は当たり前ですが、こうしたことでは悩みません。「なぜそんなことで悩むのだ?」と不思議に思います。

人からの頼みを断ることで嫌われたとしても、「あいつに嫌われてどこが困るの?」と考えることができるからです。それは、その人の自我が確立されているから、他人に嫌われる、低く評価されることがその人にとって不安ではないからです。

ところが、自我の確認を他者に頼っている人は、低く評価されることを怖がります。先ほどから述べているように、この不安は非常に強烈な感情のため、無理してでも頼まれた用件を引き受けてしまいます。

ですから、些細なことで悩んでいる人に、「なんで、そんなつまらないことで悩んでいるのか?」「そんな悩みは無意味だ」と、いくら理屈で説明しても、当の本人は自分の価値を自身で確認できないわけですから、抱えている不安は消えません。

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「会社を辞めればいい」では済まない

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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