「やりたいこと、自分の進むべき道が分からない」と悩む人が訪れるべき場所
2022年08月23日 公開 2024年12月16日 更新
故郷へ足を向けてみる、「自分」を再発見する旅に出る
自分とは何か。自分の人生とは何か。本当にやりたかったことは何か。
それを模索するのは、若いころばかりではありません。40歳になっても、50歳を過ぎても、人はふと立ち止まって自分を振り返ることがあります。
反省でも郷愁でもない。自分の存在というものを突き詰める瞬間がある。その繰り返しの中で人間は生きているのです。
「私の人生はこれでよかった」。そう言いきれる人はとても幸福です。しかし、100%そう言いきれる人間などいないのではないでしょうか。
程度の差こそあれ、みんなどこかで「本当の自分探し」をしながら生きている。「自分とは何者か」という答えを探し続けているものです。
そんな時には、自分が育った故郷へ足を向けてみることです。ご先祖のお墓にお参りしながら、自分というものを考える時間をもってみる。
もしも両親が健在であれば、久しぶりに酒でも酌み交わしながら聞いてみる。
「父さんの人生は幸せだった?」「これまでの人生で一番苦しかったのはいつだった?」「母さんは、本当はどんな生き方をしたかったの?」。
父と母が若かったころの話を聞いてみてください。きっとそこには生きるためのヒントが隠れています。
自分の存在を浮き彫りにしてくれるヒントが埋もれているはずです。ご先祖から子孫へ、親から子へ、延々と受け継がれてきた「目に見えない心」が必ずあるものです。
自分の身体と心に受け継がれている何か。それを再発見する旅に出かけてみることです。
たとえ両親はこの世から去っていたとしても、故郷の姿がすっかり変わっていたとしても、あなたが育った町に帰ってみる。
故郷に流れる川や山、故郷に注ぐ陽の光はかつてと同じものです。その懐かしき場に佇み、自分自身ともう1度向き合ってみることです。
【枡野俊明(ますの・しゅんみょう)】
曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー、多摩美術大学名誉教授
1953年神奈川県生まれ。大学卒業後、大本山總持寺で修行。「禅の庭」の創作活動により、国内外から高い評価を得る。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞。ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。2006年には『ニューズウィーク』日本版にて、「世界が尊敬する日本人100人」に選出される。庭園デザイナーとしての主な作品に、カナダ大使館庭園、セルリアンタワー東急ホテル日本庭園など。