苦痛の体験が「話上手の聞き上手」をつくる?
「話し上手の聞き上手」になるには、どうしたらいいのでしょう。そのひとつのヒントが、「相手の心の痛みがわかる」ということです。こんな心理実験があります。
まず最初、実験の参加者のうち半数は、「赤ランプが点灯すると電気ショックを受ける」が、「青ランプが点灯すると電気ショックがこない」という体験をしました。残りの半数の人は、こうした体験をしませんでした。
つぎに、すべての参加者は、「最初の実験と同じ実験に参加した他人の様子」を撮影したビデオテープを見て、それが赤ランプのとき(電気ショックを受けているとき)のものか、青ランプのとき(電気ショックがないとき)のものかを判断します。
そうすると、テープを見る前に自分も同じ体験(電気ショックを受ける)をした人ほど、正解率が高くなったのです。とくに、自分が電気ショックを受けたとき、強い不安を体験していた人ほど、その正解率は高くなりました。
苦痛な体験をした人ほど、他人の痛みがよくわかることになります。つまり、相手と共通の体験をすることが、「話し上手の聞き上手」になるためのひとつの条件と言えそうです。
おしゃべりは言葉のキャッチボール
会議のとき、話の口火をきって発言する人がリーダーになりやすい。これは多くの人が経験的に知っている原則です。なかには、これを恐れて、意識的に発言を控えるという人がいるかもしれません。
ある心理実験によると、グループ討論で最もよく意見を述べた人が、「リーダーにふさわしい人物」とみなされやすかったのです。実際、このような人がリーダーに選ばれやすいことがわかっています。
日常会話のなかで、どの程度の割合で話すと相手に好かれるのでしょうか。
これは男女の会話の場合です。いずれか一方が会話全体の80パーセント、50パーセント、20パーセントのあいだ話しているテープを聞き、それぞれの人物にどんな印象をもつかが調べられました。
そうすると、80パーセントのあいだ話した男性と女性は、いずれも、「温かく、友好的で、知的で、社交的」とみなされました。逆に、20パーセントのあいだしか話さなかった男性と女性は、「冷たくて、非友好的で、知的でなく、内向的」とみなされました。
ところが、全体の80パーセントのあいだ話し続けた男性は、社交的などの先の印象のほかに、「思いやりがなく、無礼で、配慮に欠ける」とみなされたのでした。
一般に、おしゃべりな女性は好意的に評価されるようです。しかし、一方的におしゃべりする男性は、「いい人だけど、ちょっと思いやりに欠ける」とマイナス評価されるかもしれません。
おしゃべりは、言葉のキャッチボールです。相手の気持ちを考えながら、相手が話しているときにはしっかり聞いて、話していいときには思いっきりおしゃべりするのが、好かれるコツです。
黒柳徹子さんは、早口の女優として、また司会者として知られています。しかし、テレビ番組「徹子の部屋」では、持ち前の早口を返上して、多彩なゲストから意外な話を引きだす聞き役に徹しています。
「話し上手で、聞き上手」な黒柳さんが、多くの人から好かれているのは、当然なのかもしれません。