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「企画のダメ出しばかり繰り返す上司」の残念な言い訳

和田秀樹(精神科医)

2022年09月23日 公開 2024年12月16日 更新

「企画のダメ出しばかり繰り返す上司」の残念な言い訳

せっかく考えた企画なのに、上司に難癖をつけられて通らなかった、そんな経験のあるビジネスマンは少なくないはずだ。なぜ上司は部下にそのような態度を取ってしまうのか。また、企画を通すにはどうしたらいいのか。和田秀樹氏が解説する。

※本稿は、和田秀樹著『なぜあの人の意見が通るのか』(PHP新書)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

“難癖をつける上司”の心理

20代の頃の私は、反感を買う材料に十分だった。大学時代から「アイドルプロデュース研究会」でマスコミに注目され、ライター業も始めた。加えて「東大卒業」という冠のおかげで受験本を書くきっかけに恵まれた。それがさらに大ヒットし、100万部著者になった。だから周囲からは「若造にこれ以上手柄をとらせてたまるか」と思われていたに違いない。

盤石な意見をつくったところで、相手に「この意見を通したくない」という感情があれば通らない。「あいつ、若いから鼻をへし折ってやろう」と意地悪されることだってあるだろう。若さへの嫉妬もあれば、学歴へのひがみもあるかもしれない。

つまり、盤石な意見にもかかわらず通らない背景には、相手に「通したくない」というモチベーションがある可能性が高い。

しかし、あなたの意見は未来永劫通らないわけではない。通したくないモチベーションが発生するには"わけ"がある。それを把握し、取り除く努力をすれば、道が拓ける可能性もある。

あなたがホームページのリニューアルを手掛けていたとしよう。特に就職活動中の学生さんに、自社の良さをもっと知ってほしいと思っている。だから社内で活躍する先輩方にホームページに登場してもらい、会社や仕事の魅力を語ってもらおうと考えた。

よくある企画かもしれないが、企画にリスクはつきものだ。もしかしたら、ホームページに登場した先輩が注目され、ヘッドハンティングされるかもしれない。カワイイ女性社員がツイッターで話題になり、ストーキング被害にあうかもしれない。

「そんなことを言い始めたらキリがない」と思われるかもしれないが、減点主義の会社ではリスクにおびえる上司も多いのだ。

こんな上司は、いくつかの戦略であなたの企画をつぶしにかかる。1つは、いろんな角度から「難癖」をつけることで、あなたが企画を取り下げるのを待つという方法だ。

前出のように「ヘッドハンティングされる」「ストーキング被害にあう」というリスクを前面に出す上司もいるだろう。度胸のない上司だと思われるかもしれないが、リスクヘッジは管理職の仕事のうちだ。彼は仕事を全うしているとも言えなくもない。

また費用対効果をネチネチと突く上司もいる。

「先輩方の記事を作るのにいくらかかるの?」
「制作会社に問い合わせたところ、ライターやカメラマンの人件費を合わせて、1人あたり15万円だそうです」
「で、15万円かけてうちに応募する学生は、何人増えるの?」

...そんなのわからないよ、と言いたくもなるだろうが、費用対効果の検証も上司の仕事。上司はこんな難癖をつけながら、あなたが企画を取り下げるのを待っているのだ。

なぜ、ハッキリと断ってくれないのか。それは責任をとりたくない上司は、「企画を却下する」責任すらとりたくないからだ。

もし競合他社が世界を舞台に活躍する先輩社員をどんどん紹介し、挙句の果てに新聞で「グローバル企業TOP 50」などと紹介された日には、企画を却下した自分が責められてしまう。これで競合企業に優良大学の学生が集まった日には、責任問題だ。

だから「あの企画はあいつが潰した」と言われないよう、「提出者自らが企画を取り下げた」格好にしたいと上司は考える。おそらく彼らは、会社員人生で培った知恵と経験を総動員して、「質問」という名の「難癖」をつけ始めるだろう。もし難癖に負けたら、あなたは相手の作戦にはまったといえる。

「責任の香り」がする提案に、彼らは見て見ないふりを決め込むかもしれない。冒険的な新商品などはいい例だろう。大失敗のリスクがあるのに、工場に頼んで製造ラインを整えなければならないし、新しいカタログを作ればコストがかさむ。彼らにとって、こんな「ハイリスク」な案件は見たくもないから、やっぱり難癖をつけるのだ。

いずれにしてもあなたは難癖という名の質問に答え続けなければならない。でも面倒臭いと諦める必要はない。難癖をつけるということは、少なくともあなたの意見は相手の琴線に触れているという証拠だ。

圧迫面接を乗り切ったら向こうの姿勢が「YES」に転じることもある。あなたがどれくらい本気なのかを見定めている可能性もあるので、タフなメンタル力で乗り切ればいいのだ。

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