頭でわかっていてもなかなか実際にできていない
洋服を買いに行くと、店に入った瞬間にさっと店員が寄ってきます。「いらっしゃいませ。試着できます」と、まだ何も見ていないのに声がけされます。マニュアル通りの接客ですが、実際どう感じるでしょうか。逆に引いてしまい、買う気が失せてしまうことはありませんか。
これは顧客の購買心理を理解していない間違ったマニュアルのせいです。
店に入ってきてもすぐに声はかけずに、しばらく遠目で見守りながら、出で立ちや行動を観察する。ある商品の前で立ち止まり値段や生地をチェックし始めたら、そこが声がけのタイミング。会話に乗りやすい最初の一言を用意しておいて、さりげなく声がけをする。Hさんの事例から立てられる正しい接客マニュアルの仮説です。
第三者として考えれば、バイトでもわかる簡単な当たり前の話です。ところが組織に入り、商品を売ることを義務づけられプレッシャーをかけられると、顧客の気持ちはどこかに飛んでしまいます。
「顧客の真のニーズを理解する」。耳にたこができるくらい言われることですが、本当にできている営業がどれくらいいるでしょうか。頭でわかっていても、実際できているかどうかは別な話なのです。
「できる営業」は自分が顧客になった時の気持ちを忘れないでいられる、幸せな人なのかもしれません。
仕事に関係なさそうなことを相談されたら?
相談を受けることは信頼獲得の近道です。仕事に直接関係なさそうなことでも相談を受けることです。効率ばかりが求められる世の中ですが、遠回りに見えても、相談を受け解決に協力することが、信頼獲得の確実なルートなのです。
顧客が相談してくれるのは、"潮目が変わる重要なタイミング"が多いです。顧客との信頼関係を一歩進めるために、決して見過ごしてはならないサインです。
ようやく自分が信頼され始め、試されているのだととらえてください。取引額を伸ばす、シェアを拡大する、競合から乗り換えてもらう。こういった営業目的を達成するために、とても大切な一歩なのです。
「できる営業」は、前回訪問時にもちかけられた相談や宿題に対する準備に抜かりがありません。
B2Bビジネスでよくある相談は、(1)事例調査(うまくいっている成功事例や失敗した事例)、(2)競合情報(どういう動きをしているか、特に新しい試み)、(3)市場・価格調査(市場の将来予測、価格変動)などです。
こういった依頼に真摯に対応して役に立ちそうな情報を提供すると、信頼できるかどうかのテストをパスできます。質問も出やすくなるので、次の「宿題」も自然ともらえます。
「営業的な接点を多く持て」というのは昔から言われる営業の鉄則の一つですが、そのためにどうすればよいかという問いに対する正解が「相談・宿題対応」です。
難易度は上がりますが、「こういうことができないかな?」はとてもおいしいキーワードです。提案している商品だけでは対応できないことへの相談ですが、そこに真の顧客ニーズが隠れていたりします。
成功している新規事業の中には、こういった顧客からの相談対応から始まったケースが多い、という話も聞きます。