毎日晩酌をしていて、いつも飲みすぎてしまう...。お酒が好きで毎日欠かさず飲んでいるという人も少なくありません。中にはアルコール依存症に陥ってしまっている人も。やめたくてもやめられない「お酒の悪習慣」から抜け出すにはどうしたら良いのでしょうか。心理士の中島美鈴さんが、解説します。
※本稿は、中島美鈴著『脱ダラダラ習慣!1日3分やめるノート』(すばる舎)より内容を一部抜粋・編集したものです。
「自分を救ってくれるものがお酒しかない」はずがない!
「お酒の問題がある方に一定の傾向があるのか」と言われると、ひとまとめにはできないほど、さまざまなキャラクター、さまざまな飲む理由があるので、なかなか一言では言い表せません。
晩酌が常で休肝日が設けられないといった悩みの人もいるし、日頃は全く飲まないのにたまに飲み会で失敗してしまうという人もいます。中には、お酒のせいで家族も仕事も友達もお金も失ってしまった人もいます。
ちなみに、どのぐらいの量が「飲み過ぎ」と言われるのかについては、ご存じでしょうか?
厚生労働省は、健康な方の節度ある適度な飲酒量を1日平均20グラム以下に定めています(女性では代謝の関係でその半分の10グラムです)。唐突に20グラムなんて言われてもピンときませんが、だいたいビール(5%)なら中瓶1本(缶ビールなら1.5本ぐらいですね)、缶酎ハイ(7%)なら1缶です。ワインならグラス2杯。
いかがですか? お酒が好きな人なら、わりと軽く超えてしまう量だと思いませんか?
私もお酒をこよなく愛する人間ですから、ここで説教くさいことは申し上げることはできません。目安を一応知っておき、「健康を害して1滴も飲めない人生にはしたくないな」「そのために今からうまくつき合う方法を探ろうかな」と思っていただければ幸いです。
話を戻しますと、お酒にハマりやすい人たちは、こうしたアルコールの量以上に飲んでいることになるわけですが、問題はわりと毎日飲んでいて、「好きだから飲む」のは当然ですが「ないとやってられない」ほどに必要性が高いことが特徴です。
たとえば、「ストレスでお酒でも飲まないとやってられない」なんて台詞は何度も耳にしたことがあるでしょう。
このストレスが溜まったときに、本来なら体を動かしたり、誰かにグチったり、ストレスの原因そのものに立ち向かっていったりと、いろんな解決法のバリエーションを持ち合わせていれば、いつもいつもお酒に救ってもらわなくてもいいのでしょう。
しかし、問題になるほどお酒を飲む人は、体を動かすのが好きじゃなかったり、誰かに頼りたくなくてなんとか自分で問題を解決しようとしていたり、気持ちを吐き出したところでストレスの原因はなくならないのだからムダだと考えていたりします。
一方で、ストレスの原因に立ち向かう勇気がなかったり、解決をあきらめていることが多くあります。
こんなふうなので、一見お酒の問題を抱える人は優しい印象です。だって、ストレスがあっても人にグチったり、ましてや八つ当たりなどしません。むしろ、ひょうひょうとして見えたり、おだやかでユーモラスな一面も見えたりします。
心の奥底にストレスを押し込めて、そのストレスを見ないふりをしているのです。家族など身近な人でない限り、人々は彼らを「いい人」と呼ぶでしょう。
お酒にハマる4つの理由とは?
ここで、よくある「お酒にハマる4つの理由」をご紹介したいと思います。
【よくあるお酒がやめられない4つの理由】
1. 脱力できる(身体的感覚)
2. 人とうまくしゃべれる(社会的注目)
3. 嫌なことを忘れられる(逃避)
4. 食事が進む(物や活動が得られる)
ひとつずつ解説していきます。
1. 脱力できる(身体的感覚)
お酒を飲むと筋肉の緊張がゆるんで、表情までふにゃふにゃになります。血行もよくなり、全身でリラックスできますね。1日の終わりにこうした体の感覚を味わいながら、ご褒美にする人は多いでしょう。
2. 人とうまくしゃべれる(社会的注目)
人とお酒を飲む機会は多くあります。職場の飲み会でも、同窓会でも、祭りやお祝いの席でもお酒が出ます。
お酒が入ると、日頃しらふのときには真面目な話しかしなかった相手とも心の距離がぐっと縮んで、本音で話せたりします。そのため商談がうまくいったり、相手と仲良くなったり、お祝いの気持ちが表せたりするわけです。
中には、「お! 君飲める口だねえ」なんて目上の人に声をかけられて気に入られることで、ますますお酒を飲もうとするかもしれません。
3. 嫌なことを忘れられる(逃避)
「飲まないとやってらんないストレスだ!」と、イライラをお酒と共に洗い流したり、つらくて泣きそうな気持ちを打ち消すようにお酒を飲んだりするのがこのタイプです。一瞬でもいいから嫌なことを忘れさせてくれるお酒は、短期的には、身近でコスパのいいストレス解消法とも言えます。
ただし、「短期的には」です。嫌なことはなくなったわけでも解決したわけでもなく、しらふになればまた現実感が戻ってくるのです。
4. 食事が進む(物や活動が得られる)
最近はコース料理の内容に合わせて、シャンパン、白ワイン、赤ワイン、デザートワインなど、味をひきたててくれるようなお酒を提案してくれるペアリングというサービスが流行っています。
こんなふうに、食事の楽しみ方のひとつとしてお酒が選ばれるわけです。食文化とも言えるような、生活を豊かにする機能がありそうです。