罪悪感の手放し方
失敗に反省はつきものですが、何かにつけて罪悪感を抱いていると、心が消耗してしまいます。ここでは、罪悪感を軽くするコツをお伝えします。
【私たちを苦しめる3つの罪悪感】
日常生活の中で起こりやすい罪悪感は、主に3つあります。
まず1つめは、「望みに従えない」という申し訳なさ。頼まれごとを断るときに気がとがめる、といった葛藤です。
2つめは、「楽しむこと」への申し訳なさ。「同僚は残業なのに、自分は遊びにいっていいのか」などがいい例です。
そして3つめが、「老いた親の世話ができない」など、「責任」を感じての罪悪感です。
これらを軽くするためには、いくつかのコツを知っておくことが有効です。罪悪感には、複数の感情が含まれているもの。たとえば「相手への思い」と「自分の正直な本音」など。このように、罪悪感の中身を紐解くことで、適切な対処法が見えてくることもあります。
断るときは、喜びや感謝も伝えよう
友人やパートナーなど「大事な人」からの頼みを断りたいけど、申し訳ない......。この場面では、2つの気持ちが同時に起こっています。1つは、当然ですが「やりたくない」気持ち。忙しかったり、内容に賛成できなかったりと、さまざまな理由があるでしょう。
一方で、見落としやすいのが「嬉しい」気持ちです。「自分を頼ってくれた」という喜びや感謝があるからこそ、断るのがつらいのです。
人は何かを断るとき、やりたくない理由のみを伝えがちですが、頼まれて嬉しい気持ちも含めて相手に伝えてみてください。「頼んでくれてありがとう。でも、今は難しい」と伝えることで、相手の納得を得られるだけでなく、自分の気持ちもスッキリするでしょう。
笑顔は伝染すると考えよう
「自分だけが楽しい思いをしていいのか」と悩む人は少なくありません。真面目でやさしい性格だからこそ、そう感じやすいわけですが、楽しむことや幸せになることは本来、悪いことではないはずです。
たとえば「子供を預けて、夫婦でデートを楽しむ」ことに罪悪感を覚えたとき。自由な時間を満喫してリフレッシュできたぶん、よりいっそう明るい笑顔で子供と接することができるのだと考えてみましょう。
思い切り楽しんで、その結果として生まれた笑顔で周りの人に接すると、笑顔の輪は広がります。楽しむことを我慢して心がギスギスしてしまうよりも、ずっと建設的だと思いませんか。
客観的な事実にも目を向けよう
責任感からくる罪悪感の中でも、とくに厄介なのが、親に関するもの。たとえば、「実家から出たいけれど、親が悲しむからできない」などが典型例です。
ここでもポイントになるのは、複数の感情を紐解くこと。「自立したい」という気持ちのほかに、「親が平気だと、それはそれで寂しい」という気持ちがあるのなら、自分自身が親離れできていない可能性があります。
また、責任感からくる罪悪感にとらわれたときは、客観的な事実のみを洗い出し、冷静にジャッジすることも大切です。罪悪感をいったん脇に置いて、「今の状況のメリットとデメリット」に公平に目を向けてみましょう。
たとえば、親との同居におけるメリットは「家賃の節約ができる」、デメリットは「干渉される」など。自分の本音と、客観的な事実を把握したうえで出した決断であれば、将来的な後悔も少なくなります。
【岩壁茂(いわかべ・しげる)】
カナダMcGill大学大学院カウンセリング心理学専攻博士課程修了。心理学博士。札幌学院大学人文学部専任講師、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科助教授を経て、2022年より立命館大学総合心理学部教授。専門分野は、感情と心理療法など。