「なんで私ばっかり」そのイライラをコントロールする5つの方法
2026年04月23日 公開
仕事上のちょっとしたミスで「あぁ、やってしまった」と落ち込む、「頑張っているのに評価されない」とイライラする、そんなあなたに、気持ちを切り換えて持続可能な"上機嫌"を手に入れるヒントをお届けします。
※本稿は、『PHP』2024年3月増刊号より内容を抜粋・編集したものです。
そもそも"機嫌"って何?
一日をできるだけ機嫌よく過ごすのは、あなたの人生の満足度にも大きく影響します。
たとえば職場には納期のドキドキや、人間関係のイライラなどがつきものです。しかし、いつもニコニコしながら仕事をしている人もいて、一体何が違うのだろうと考えたことはありませんか。
実際に、不機嫌の延長線上には精神的な負担の抱え込み過ぎがあり、人によっては療養が必要な状態まで悪化する場合もあります。ここでは、そうなる前に自分にのしかかる負担をコントロールしながら、機嫌よく仕事をするコツについてお話しします。
あなたの機嫌は、「気持ち」と密接に関係があります。では、気持ちとは何なのかについて紐解いてみましょう。実は、気持ちというのは、細かく分けると「情動(エモーション)」と「感情(フィーリング)」に分けられます。
何か起きたとき、まず情動が発動され、次に感情が出てくるという順番です。難しそうな話ですが、あなたも日常的に経験していることなので、安心してください。
情動とは、出来事への瞬間的な心理的な反応です。たとえば、棚の上から何かが落ちてきたら「ドキッ!」とするでしょうし、ビンゴで大きな賞を当てたときは「やった!」と反応するでしょう。大小の差はあれど、だいたいの人で同じような心の反応になるのが特徴です。
しかし、この情動に対して、認知というプロセスを介して、人それぞれで違った感情が生まれます。
たとえば、仕事のミスで叱られる瞬間は、「やってしまった」というネガティブな情動が発動されるでしょう。それに対して、「周りにバカにされるかも」という認知での恥ずかしいという感情や、「降格させられるかも」という認知での不安の感情が渦巻くかもしれません。
その一方で、「自分のために言ってくれている」という認知での感謝や、「これで自分の課題が見えた」という認知でのやる気向上という感情になる人もいます。同じ出来事でも、これだけ感情は異なってくるのです。
「色眼鏡」を取り換えて、物事を捉え直す
この認知というのは、起こった事実の見え方を変える色眼鏡です。
あなたの価値観や思考のクセとも言えるものであり、今までの知識や経験によって作りこまれているため、Aが起きているときに「Bに違いない」という思い込みや「Cをすべきだ」という決めつけも働きやすく、不機嫌から抜け出せないこともよくあります。
つまり、機嫌よく仕事をするコツは、この色眼鏡をうまく扱うことにあるのです。
大前提として、忘れないでほしいことが一つあります。それは「自分が色眼鏡をかけていると認識すること」です。
何を今さらと思われるかもしれませんが、イラッとしたり意気消沈したときは、今の感情が色眼鏡のレンズを通して生まれている感情であることを、つい忘れてしまいます。
そのネガティブな感情に引きずられず、機嫌よく過ごせる人は、この色眼鏡を柔軟に取り換えて、目の前で起きた物事を捉え直しているのです。ある意味で、自分のなかに落ち着いた感情が生まれるように、都合のよい色眼鏡にパッと取り換えるのが上手です。
それだけ多くの選択肢を持っているという意味でもあります。
ここからは、色眼鏡を取り換える、つまり気持ちを切り替える5つの方法を紹介します。
気持ちを切り替える5つの方法
【鏡を見て自分を客観視する】
1つ目は、自分の顔を鏡で見る方法です。
色眼鏡を取り換えるには、今の自分の状況を俯瞰的に見るのが有効な手段です。とくに、イライラしているときには効果抜群。鏡に映るあなたは目つきが鋭く、顔全体に力が入って顎や頬の筋肉が張って、とても怖い顔になっていませんか。
「自分を追い込みすぎている」「無理しすぎている」と、自分を客観視するきっかけになり、気持ちを切り替える効果があります。
さらに、鏡のなかの自分に「よくがんばってるよ」と声をかけてあげるのも、等身大の自分を認めて心おだやかにする方法です。
【他の人ならどう動くか考える】
2つ目は、「あの人だったらどうするだろう」と想像する方法です。
あなたが尊敬する人でもいいし、漫画やアニメのキャラクター、歴史上の人物でも構いません。同じ場面に遭遇したとき、あの人だったらどうするか考えるだけで、自分と異なる価値観を手に入れることができます。
また、多くの人と関わることは、より多くの価値観に触れることでもあります。そのため、普段から家や職場ではない地域のコミュニティーや趣味の集まりなどのサードプレイスも積極的に作るように。普段は関わらない人の話を聞くだけでも、「そんな生き方してもいいんだ!」という発見があるものです。
【イラッとしたら真似してみる】
3つ目は、真似をすることです。
人間は誰でも悔しい思いをしたり嫉妬をしたりします。「がんばっているのに評価されない」という不満だけではなく、「あの人は手抜きの仕事しかしていない」「偉い人に媚びてるだけ」と決めつけてはイライラしっぱなしのことも。
そのようなときは、あえて相手を観察して真似してみましょう。学ぶのは真似するところからです。その人がうまくやっているコツや秘訣がわからないときは、素直に「どうすれば、それだけ早く仕事をこなせるのですか」と聞いてみるのも効果的です。
時には、高いプライドという色眼鏡を外して相手に関わることで、はじめて見える景色もあるものです。
【自分が恵まれている部分を探す】
4つ目は、下方比較することです。
これはつらいときに自分よりもっと大変な人を想像する方法。落ち込むときに「もっとブラックな会社もあるし、まだマシか」や「各地で戦争があるのに、衣食住が安定しているだけでも幸せだ」と考えてみることです。
どれだけつらいことがあっても、自分は恵まれているほうだと思うことで気持ちを切り替えるきっかけを作ります。自分より苦しむ人を探すことに抵抗があるかもしれませんが、これは他人ではなく見逃している自分のプラス要素を探す行動なのです。
【小さなケア方法をたくさん持つ】
5つ目は、普段からのストレスケアです。
生きていると誰しもストレスがのしかかるため、抱え込みすぎずに心身のケアをする習慣を持ちましょう。それによって、認知をコントロールする余裕を持てます。
ケアの方法は、たくさん寝ることや好きな音楽を聴く、サウナに行くなど人によって違うので、あなたに合ったケアを見つけておきましょう。
海外旅行に行くような大きなケアだけではなく、高級な入浴剤を使う、メイク道具を変える、コンビニスイーツを買う、デリバリーフードを頼んでみるなどの小さなケア方法を数多く持っている人こそ、ケア上手な人です。
「色眼鏡」を柔軟につけ換えてみる
「色眼鏡」というのは否定的に使われる言葉かもしれませんが、人間は誰もがそれを持っていることを受け入れるほうが大切です。
自分だけではなく、相手も色眼鏡をかけていることを忘れないでください。他人と価値観が違うのは当然で、共同社会で生きるには折り合いをつけることも必要になります。
たしかに、それには時間もエネルギーも消耗することでしょう。しかし、たくさんの色眼鏡を柔軟につけ換えることで、ストレスを抱え込みにくくなったり、折り合いをつけやすくなったり、トラブルが起きても他の方法を見つけやすくなったり、自分のキャパシティに合わせた持続可能な機嫌のよさを手に入れられるのです。
【井上智介(いのうえ・ともすけ)】
兵庫県生まれ。島根大学医学部を卒業後、大阪を中心に産業医、精神科医として活動。産業医として毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたる。『どうする? 家族のメンタル不調』(集英社)など著書多数。