家族が亡くなったとき、お墓はどのように決めればよいのでしょうか。故人に希望があっても、詳細までは生前に聞けなかったというケースも少なくありません。
30年以上にわたり葬儀の現場に携わってきた株式会社ディライト代表・高橋亮さんは、著書『後悔しない葬儀とお墓選び』で最低限知っておきたいお墓の知識を解説しています。本稿では同書から、永代供養墓に関する基本的な情報をご紹介します。
※本稿は、高橋亮著『後悔しない葬儀とお墓選び』より内容を一部抜粋・編集したものです
永代供養墓とは
永代供養とは、お墓の管理者である寺院や霊園が、遺族に代わって長期にわたり供養を続けてくれる仕組みのことです。お墓の後継者がいなくなった場合でも、寺院や霊園側が責任を持って供養とお墓の管理を行ってくれます。
永代供養で管理しているお墓を「永代供養墓」といい、この後説明する納骨堂や樹木葬などは、基本的に永代供養の仕組みがセットになっています。また、複数の遺骨を1カ所に納めて供養する合祀墓も、永代供養墓の一種です。
樹木葬や納骨堂などでは、契約内容により、3年、13年、33年といった一定の期間供養した後、合祀墓に移されるのが一般的です。後継者の心配が不要なため、独り身の方や、子や孫に負担を残したくないという方の選択肢の1つとなっています。
一方で、合祀墓に移されると、他の人の遺骨と混ざってしまうため、遺骨の取り出しができなくなることに注意が必要です。
納骨堂...遺骨を屋内で安置
納骨堂は遺骨を屋内で安置するタイプのお墓です。
一般墓のように広い土地を購入したり大きな墓石を建てたりする必要がない分、経済的な負担が抑えられる傾向にあります。設備管理や清掃も専門のスタッフが行うため、自分で維持管理の手間をかけたくない人におすすめです。
ビルや寺院の堂内など建物内部に遺骨を保管するため、天候や季節に影響されずにお墓参りができる一方、地震など災害時の安全性や、将来的な建物維持管理についてはよく確認する必要があります。
納骨堂には自動搬送式、ロッカー式、仏壇式、位牌式、墓石式、神棚式などいくつかのスタイルがあります。
【自動搬送式】
遺骨を保管スペースに格納し、遺族が参拝する際にICカードなどで操作すると、指定の参拝スペースに遺骨が自動で搬送される仕組みです。機械式駐車場のような構造で、高層化された保管棚とスタッカークレーンで効率的に管理されています。
納骨堂の中では最も一般的なスタイルで、参拝者が遺骨の安置場所に移動する必要がなく、参拝の負担が少ないのが特徴です。
【ロッカー式】
扉付きの棚が並ぶ構造になっていて、棚の中に骨壺を納める方式です。従来はコインロッカーのようなイメージが強いものでしたが、近年では扉に装飾が施されたものなど、デザインに選択肢が増え、人気が高まっています。
【仏壇式】
仏壇式は、屋内に一般的な仏壇がずらりと並べられている形式です。それぞれの仏壇の上段には遺影や位牌、お花などをお供えでき、下段に遺骨を納めるスペースがあります。
伝統的な仏壇のような雰囲気で、参拝するスペースが広いのが特徴です。装飾が施されてきらびやかなものが多く、他のタイプに比べると費用が割高になります。
【位牌式】
位牌式は、戒名や没年月日が書かれた位牌が個人の区切られたスペースに並べられている形の納骨堂です。比較的安価で、寺院内に多く設置されています。
遺骨が位牌と同じ場所に納められている場合と、別々に保管されている場合があります。
【墓石式】
墓石式は、屋内に個別の墓石が設置されている形式で、屋外にあるお墓と同じように、お墓の区画まで行って参拝をします。
一般墓のような形でありながら、屋内で天候の影響を受けにくいため、清潔な状態を保てることが利点です。
【神棚式】
神棚式は、主に神道を信仰する人に利用される形式です。日本の伝統的な神棚を模したものや、それに近いシンプルな神棚構造になっています。
個別の仕切りや扉のない簡素な構造であることが多く、棚に骨壺が直接安置される点が特徴です。比較的安価な選択肢の1つです。
樹木葬...樹木を墓標とする新しい形態
樹木葬は、墓石の代わりに樹木を墓標とする、比較的新しい形態のお墓です。1999年に岩手県一関市の祥雲寺で始まり、全国に広がったと言われています。
シンボルとなる樹木の下に遺骨を埋葬するため、故人が「自然に還る」イメージがあり、近年人気を集めています。寺院の境内の一角に作られる「都市型」や自然の山林を生かして作られる「里山型」、霊園の一角が庭のように整備された「庭園型」などがあります。
樹木葬の区画は公園のように整備されていることが多く、見た目にも明るく美しいため、生前に「ここで眠りたい」と希望する方も増えてきました。遺族の方にとっても、植えられた樹木が年月とともに成長していく姿を見ることで、故人を偲びながら生命の循環を感じ取ることができます。類似のお墓に、花を植えた区画に埋葬する「花壇葬」というスタイルもあります。
樹木葬は、運営している霊園や墓地によって管理の質に差がある点に注意が必要です。植栽の手入れが行き届いていない場合や、十分な供養が行われないケースがあります。利用を検討する際には、環境維持や供養方法を事前に確認することが大切です。
また、同じ樹木葬でも、埋葬方法にいくつかの種類があります。
【個別型】
家ごとに個別の区画が割り当てられる形式です。墓標となる樹木は一家に1つ用意します。家ごとに分けられているため自由度が高いですが、樹木葬の中では料金が割高です。
【合祀型】
1本の樹木の根元に他の人の遺骨と一緒に埋葬される形です。次項で説明する合祀墓の一種で、料金は比較的安く設定されていることが多いです。
【集合型】
墓標となる樹木を他の方と共有する形です。共同埋葬ですが、遺骨の保管は個別なので、合祀型よりも費用は高くなります。
合祀墓...複数の遺骨まとめて埋葬
合祀墓は、複数の遺骨を1つのお墓にまとめて埋葬する形態です。個人ごとの区画や墓石はなく、大きな供養塔や共同の納骨室に他人の遺骨と合同で安置されます。
故人の名前は共同碑に刻まれ、合同の慰霊碑や供養塔に対して供養を行う形になります。一般墓のような区切られた空間ではない点は、留意しておく必要があります。
1つのお墓を多数の人で共有するため、費用負担が少ないことが特徴です。また、前述のとおり、いったん他の人と合同で埋葬されると、特別な事情がない限り遺骨を個別に取り出したり別の場所に移したりすることはできません。
なお、類似の墓地の形に「共同墓」がありますが、これは後継者不在や経済的な理由などで個別のお墓を建てる代わりに、複数人で建てるお墓です。友人や知り合い同士でお墓を作るケースなどが当てはまります。
【関連情報】
『株式会社ディライト』https://delight.co.jp
『葬儀の口コミ』https://soogi.jp
『お墓の口コミ』https://oohaka.jp