国内外の旅行の雑誌やWEB媒体を中心に活動するカメラマン・矢巻美穂さん。7月に出版した『はじめて旅する釜山』(辰巳出版)は、韓国第2の都市・釜山の魅力を、現地取材による豊富な写真とともに紹介した一冊です。今回は観光や街の魅力、そして現地で出会った人々についてお聞きしました。大きな荷物を抱えていると、必ず誰かが手を差し伸べてくれたそうです。
曇り空との闘い、会心の一枚を求めて何日も通った甘川文化村
――甘川文化村は、本の巻頭に使われるほど象徴的な場所ですね。実際に訪れてみていかがでしたか?
上空から見る甘川文化村(撮影:矢巻美穂)
はじめて写真を見た時に衝撃を受けて、釜山では必ず行きたい場所でした。ここは韓国政府の都市再生プロジェクトで、芸術家と住民が協力して作り上げた街です。カラフルに塗られた家の壁や屋根、階段などが日本にはないのでとても面白かったです。
取材中は天気が悪く、何度もこの街に通いました。曇り空ではなかなかこの色合いを伝えられないので、この色彩をどうしても伝えたいと何日も通い、ようやく会心の一枚が撮影できました。
毎週テーマが変わる無料ドローンショー
――広安里は、ビル群とビーチが同居する不思議な景色が印象的でした。
ビルと浜辺のコントラストが面白い広安里ビーチ(撮影:矢巻美穂)
ビーチとビルが立ち並ぶ不思議な写真になっていますが、実際に歩いてみると海・海・海という感じです。確かにビルはたくさんあるのですが、ビーチは1.5kmと広いので圧迫感はなく、とても開放的な街です。
桁違いのスケールの驚くドローンショー(撮影:矢巻美穂)
広安里ビーチでは、毎週土曜日の夜に無料のドローンショーが開催されます。ビーチに座ってくつろぎながらショーを見ることができます。このショーがすごいのは、毎週ショーの内容が変更すること。滞在中2度見ましたが、1度目は韓国の世界遺産がテーマで、その翌週はスパイダーマンでした。空いっぱいに広がるお釈迦様が一回転したりするんですよ。「うわー、すごいなー」と、大きな歓声が上がりました。このドローンショーは曜日があえば、ぜひ見てほしいです。
ここは本当に韓国? まるでハワイのようなビーチリゾート
――海雲台は、韓国屈指のビーチリゾートとして紹介されていました。実際に訪れてみていかがでしたか?
海雲台も広安里同様に、ビーチを中心とした街です。ビーチには遊歩道もあるので、海を見ながらのんびりしたり、散歩したり。ここが本当に韓国なの? 実はハワイなんじゃない? なんて思うほどです。
海雲台ビーチの遊歩道(撮影:矢巻美穂)
海雲台の開放的なビーチの様子(撮影:矢巻美穂)
海雲台には今大人気の海岸を走る2つの列車のブルーラインパークがあります。これは本当にかわいいし、ぜひ乗ってほしいのですが、大人気でなかなかチケットが取れないんですよ。本には、もしかしたらチケットがとれるかもという方法を書いてあるので、ぜひ参考にしてみてください。
海を走るブルーラインパークのスカイカプセル(撮影:矢巻美穂)
ごちゃごちゃした路地の先に海が広がる、釜山の中心地
――釜山の観光の中心でもある、チャガルチ・南浦エリアの印象はいかがでしたか?
ここがやはり、釜山の中心だと思います。今、釜山は革新的に街が変わってきています。もしかしたら、以前に釜山を旅したことがある人は、甘川文化村や海雲台のかわいらしさや雰囲気に驚くかもしれません。思わず写真を撮りたくなる写真映えするスポットがたくさんあります。一方で、このチャガルチ周辺はかつての面影を色濃く残している地域だと思います。
チャガルチ市場の場外(撮影:矢巻美穂)
チャガルチ魚市場周辺には昔ながらの外で魚介を売る屋台があり、ノスタルジーを感じます。また、このエリアにはチャガルチ魚市場、国際市場、富平カントン市場と3つの市場があり、アジアの雑多な雰囲気が満載です。でも他のアジアの国と違うのが、圧迫感や閉塞感を感じないこと。これはアジアのごちゃごちゃとした雑踏のすぐそばに海があるからだと思います。ごちゃごちゃした路地裏を抜けると、海が広がっている。こんな街、他にないと思います。私は釜山の魅力を一番感じるこのエリアが大好きです。
冷凍施設のない魚屋(撮影:矢巻美穂)
世界遺産の古都・慶州、海の神社とカニの街・機張
――釜山から足を延ばせるおすすめのスポットはありますか?
釜山に旅行に来られる方のほとんどの目当ては多彩なグルメだと思います。美味しいものを食べるという目的ですね。海のリゾートや市場もあるので、2泊3日なら特に外に出かけなくても十分楽しめますが、実は少し足を延ばせば、世界遺産のある古都「慶州」や海の神社とカニの街、「機張」にも行けます。慶州は釜山駅から鉄道で約30分、機張へは海雲台からバスでアクセスできます。
世界遺産の仏国寺(撮影:矢巻美穂)
大荷物の私を助けてくれる確率、まさかの100%
――取材の中で、釜山の方々の気質について印象的だった話はありますか?
みんなとても優しかったと思います。なんていうんでしょう、みなさんニコニコしてた。歓迎してくれる雰囲気を感じました。例えば言葉が通じなくても、なんとかコミュニケーションを取るように努めてくれたりとか。
広安里ビーチ近くの鮮魚店の店主(撮影:矢巻美穂)
あと私が機材など大きな荷物を持っているので、いろんな人が手伝ってくれました。長い取材になるので、初日の移動はカメラ機材を15kg背負い、スーツケースは30kgと、とにかく重くデカい荷物に。その重さに苦労していると、どこからともなくやってきてサッと手伝ってくれる。階段に差し掛かると、必ず誰かが助けてくれました。確率でいうと本当に100%。年上の人に敬意を払う文化がある韓国ですから、あのおばさん大きな荷物を持って大変そうだ、と思われたのかも。とにかく、みなさん本当に優しくて、本当にありがたかったです。
そんな優しくてニコニコな雰囲気をこの本でも伝えられたらと、みなさんの笑顔を写真に収めました。
国際市場の屋台の店主(撮影:矢巻美穂)
グーグルマップが使えない! 現地アプリとQRコードで乗り切る
――はじめて釜山を訪れる方に、事前に知っておいてほしい実用的な情報はありますか?
本でも書きましたが、グーグルマップが日本のように使えないことですかね。地図は表記されるのですが、そこに建物の情報がなかったり、アクセスが調べられなかったりします。なので、現地のアプリを入れておくのがおすすめです。
そこで現地の方がよく使用しているのが、ネイバーマップかカカオマップです。ネイバーマップは乗り換え案内が細かくて、乗車する電車の何号車の扉の番号まで教えてくれます。でも少々厄介なことがあって、検索がちょっと調べにくいんです。もちろん日本語対応はしていますが、ちょっと検索にコツがいるんですね。韓国のアプリの調べ方は、正式名称を正しく入れるのではなく、主要の文字をいくつか入れるとプルダウン表示されるので、その中から選ぶという方式なんです。これが結構難しくて、ネイバーの検索の仕方をAIで調べるというのも"あるある"なんです。
この本はそんな私の体験から、施設やお店、エリアに全てQRコードを入れました。これを読み込めば、簡単に目的地を検索できます。これは我ながら、なかなか良いなと(笑)。便利に使っていただけると思います。
――最後に、旅行者へメッセージをお願いします。
釜山はエリアによってたくさんの顔を持っている街だと思います。チャガルチ・南浦には雑多で楽しい市場が広がり、広安里や海雲台は海のリゾートを満喫、甘川文化村では色彩豊かなかわいいフォトジェニックな街並みが楽しめる。少し足を延ばせば、世界遺産もある。行く場所によってその印象がガラリと変わる。そんな街、なかなかないと思います。
一度に色々な雰囲気が楽しめて、そのうえ食べ物が美味しい。日本各地から直行便もあり、東京からは約2時間で到着します。
今、円安が進行していて、なかなか海外旅行に行くにはどうかなと思っている人も多いと思います。これまで両替していた感覚とは違う。例えば、タイでは今1万円を両替すると2100バーツです。え、ちょっと前までは3000バーツくらいだったよねと。台湾も同じような変動です。
でも、韓国は違う。なぜなら日本も円安が進行していますが、韓国も世界的にウォン安なんです。円安、ウォン安なのでそこは相殺というか。10年前とほぼ両替する金額に変動がないんです。これはもう、韓国に行くひとつのきっかけになるのではと。しかも、チップ文化もないし、消費税もない。かなり旅がしやすいと思います。
しかも、料理にはたくさんのパンチャンがついて、ひとつのメインを頼めばたくさんのおかずでテーブルがいっぱいになります。料理単品の価格は日本とそれほど変わりませんが、たくさんのサービスで結果お得な印象を感じます。
こんな観点からも、韓国、さらにソウルよりも物価が安い釜山は、今断然注目の都市だと思います。