孫正義・25文字の成功哲学
2014年06月19日 公開 2016年12月08日 更新
19歳のときに立てた「人生50年計画」
昭和32年(1957年)8月11日、孫正義は佐賀県鳥栖市で生まれた。
中学生のころは、「大人になったら学校の先生になりたい」という夢を描いていた。だが、出自が影響して教師の道をあきらめざるを得なくなってしまう。
その代わりに「将来の大事業家」を志し、高校生時代に単身、米国カリフォルニアに留学した。そして弱冠19歳で、次のような「人生50年計画」を立てる。
20代で、自ら選択する業界に名乗りを上げ、会社を起こす。
30代で、軍資金を貯める。軍資金の単位は、最低1千億円。
40代で、何かひと勝負する。1兆円、2兆円と数える規模の勝負をする。
50代で、事業をある程度完成させる。
60代で、次の世代に事業を継承する。
以後、この計画に基づいて事業を行なってきた。
孫正義は平成26年(2014年)5月現在、56歳。いま「50代 事業を完成させる」という段階にあるが、ソフトバンクグループの売上規模は6兆円を大きく超えており、目標はすでに達成しているに等しい。
そこで一足早く、「60代 次の世代に事業を継承する」という人生計画の最終段階に向けて、「事業継承」に相応しい人材の養成に取りかかったのである。
「ソフトバンクアカデミア」は、次代を担う経営者を養成する学校である。孫正義は、その校長として教壇に立ち、教鞭を振るい、直接指導する。中学生のころに思い描いていた「学校の先生になりたい」という夢を別の形で実現したともいえる。
20代中盤で「孫の二乗の法則」を開発
そんな孫正義が、「ソフトバンクアカデミア」で自らの後継者候補に、最も教え伝えたいと考えているのが「孫の二乗の法則」である。事実、「ソフトバンクアカデミア」の開校式で行なわれた特別講義で、孫が真っ先に取り上げたのもこの「孫の二乗の法則」だった。
これは、孫正義が20代中盤のころに自ら開発した経営指針で、世界的に有名な兵法書『孫子』からピック・アップした言葉に、孫正義が独自に考え出した「オリジナルの言葉」を組み合わせた「25文字」の「文字盤」で表されている。
縦5段、横5文字の「25文字」は、横に読む。縦に読むと意味がわからなくなる。上の段から次のように順次、読んでいく。
道天地将法=どうてんちしょうほう
頂情略七闘=ちょうじょうりゃくしちとう
一流攻守群=いちりゅうこうしゅぐん
智信仁勇厳=ちしんじんゆうげん
風林火山海=ふうりんかざんかい
1段目「道天地将法」と4段目「智信仁勇厳」、5段目の「風林火山」は『孫子』の一節をアレンジしたもの、2段目「頂情略七闘」、3段目の「一流攻守群」、5段目「海」は、孫正義の創作、つまりオリジナルである。
「孫の二乗の法則」は、孫正義が経営の岐路に立ったとき、その都度、拳拳服膺して、判断と決断に役立ててきたものである。新規事業に挑むときや新しいプロジェクトをスタートするときなど、新たな局面や分岐点を迎えるたびに、常にこの「25文字」を頭に思い浮かべ、何回も自問自答を繰り返しながらチェックし、進むべき道とビジネスのありようを決断してきたのだ。
孫は「ソフトバンクアカデミア」開校式の講義で、次のようにも語っている。
「いままで僕は何千冊の本を読んで、あらゆる体験、試練を受けて、この25文字で、これを達成すれば、到達すれば、僕はリーダーシップを発揮できる。後継者になれる、本当の統治者になれるというふうに心底思っている、その25文字です」