「経営者は孤独」の時代は終わったー仲間意識と少数意見を重視する世界の勝者たち
2018年11月08日 公開 2018年11月09日 更新
ジャック・マー「行き場がなかったから、結束した」
社長がなんでもできるかのように、引っ張っていく。そうしたカリスマ性で統率するのではなく、社長は信頼できる仲間を集めたうえで、同級生のように意見交換できる雰囲気をつくり、チームを整えていく。それが求められています。
たとえば、アリババグループ創業者で会長のジャック・マー氏も、じつはカリスマリーダーだと思われがちですが、最初は自身の教え子も含む、18人のパートナーとともにアリババを創っています。ジャック・マー氏本人もこう言います。
「我々は行き場がなかった。だから結束したんです」
だから、新時代のリーダーに経営学や会計学、帝王学などといった専門的な知識やスキルは必要ありません。その知識を身につけるために大量の時間を消費するよりも、その知識を持った人を仲間にすればいいのです。必要な情報も検索すればほとんど手に入りますし、AI が瞬時に分析・判断・提案してくれます。
じつは今時代を牽引している世界的リーダーには、いわゆる「優秀」ではない人たちがたくさんいます。
たとえば私がお会いしたジョージ・ブッシュ元大統領は、自分自身は学生時代、成績が悪くて優秀ではなかったと公言しています。サザンメソジスト大学でのスピーチでは、次のような言葉を学生に残されていました。
「優秀な成績を収め、数々の賞を受けて卒業する皆さんには『よく頑張りました』というひと言を贈ります。普通の成績だった皆さんには『あなたも大統領になれる』という言葉を贈ります」
アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は大学を、グーグル創業者の一人ラリー・ペイジ氏は大学院を、それぞれ「中退」していますし、イギリスのヴァージン・グループの創設者リチャード・ブランソン氏は17歳のときに高校を、やはり中退しています。
学校での成績に代表されるものを私たちは「優秀の定義」とし、成績の良し悪しで人の優秀さを判断しがちですが、そうではなく、自分の「好きなこと」を人より早く見つけた人たちが、新しい時代を牽引するリーダーになっているのです。
日本でいえば、脳神経科学などを起点に学習・教育事業を展開する株式会社を立ち上げた青砥瑞人さん。
高校卒業前に学校が嫌になって中退してから、フリーターとしてしばらく過ごしていました。野球選手になろうと思っていたものの、肩を壊してしまい、夢はかなわずに途方に暮れていたようです。優秀といわれるレールや一般的な社会人になるためのレールというものから外れたといえます。
でも、その「小休止」の時間で自分の心の叫びのようなものに触れ、本当に好きなことは何かを見つけたようです。
カリスマ的なリーダーシップはもうリーダーの条件たりえません。
「カリスマ」から「同級生」へ。
これが世界のビジネスシーンに共通している、新時代のリーダー像なのです。