なぜダ・ヴィンチは数学に熱中したのか? 歴史に見る数学と美術の関係
2019年02月07日 公開
セザンヌ、エッシャー、ダリの絵画に息づく数学
ところで、ルネサンス期の後、数学と美術の距離はどんどん遠ざかって行ったのか、というと、実はそうでもありません。美術家たちは、たびたびかたちの本質についての思索を深め、それを表現しようとします。
その際には数学の視点が重要なポイントになることがあります。
特に、かたちを一般化し、かたちの本質を捉えようといった視点は、絵を描くときにも重要です。
ポール・セザンヌは複雑な自然のかたちを円筒、立方体、円錐で捉えるように別の画家にアドバイスしていました。
また、ヴァシリー・カンディンスキーやパウル・クレーは、数学的・幾何学的な考察も視野に入れた上で、線や点を独自の視点で定義しながら作品を制作していました。ルネサンス期の後も、数学の視点は美術の中に静かに息づいているのです。
また、ときには数学の発展と呼応するようなかたちで、数学をモチーフとした作品が作られることもありました。
マウリッツ・エッシャーは当時の最先端の数学や物理学の考え方をもとに様々な作品を作りました。エッシャーの作品には数学の考え方そのものを作品で表現しようという試みも見られます。
サルバドール・ダリはシュルレアリスムの画家として知られていますが、数学をモチーフにした作品も描いています。
ダリの最後の作品のタイトルは『ツバメの尾(TheSwallow's Tail )』。数学で扱う"ツバメの尾"というかたちをモチーフにした作品です。
数学者ルネ・トムのカタストロフィー理論に着想を得て描かれました。また、ダリはこのほかに超立方体をモチーフにした作品も描いています。
数学者だけでなく美術家たちもかたちについての思考を重ね、ときには数学の視点を取り入れながら、かたちとは一体何なのかを探りながら表現しているのです。