背景1 就活が自由競争化した
まず1つめは、就活が自由競争化したことです。
親御さんの世代の就職活動は、学内の求人票か教授や研究室からの推薦、あるいは固定電話や葉書を駆使しての企業とのやり取りが中心でした。そもそも応募者も限られており、1社あるいは数社に応募すれば、おおむねその中から内定をもらえました。
しかし現在の就活では、大学の就職課は影響力を失い、それぞれの学生がリクナビやマイナビといった「新卒就活サイト」を通して、自由に応募する形が基本です。
これによって、誰でもが希望の企業に応募できるようになった反面、各業界のトップ企業や人気企業ランキング上位の企業に応募が殺到するようになりました。
応募自体もウェブ上ででき、ほんの数分しかかからない企業も多いため、「名前がよく知られている企業」には定員数の何百倍、何千倍もの学生の応募が集まります。
その中から「内定」という数席をめぐって、誰もが争っている状況なのです。
背景2 大学生が多すぎる
2つめは、そもそも大学生の希少価値が落ちたことが挙げられます。
文部科学省のデータ(「文部科学統計要覧(平成30年版)」)によると、親御さん世代の進学率(大学+短大)は30~40%前後。大学入学者数も、40万~50万人の間で推移しており、まだまだ大学生は希少でした。
そのため企業側も「大卒枠」と「高卒枠」を分けて採用を行なっていたわけです。
「大卒枠は高卒枠に比べると出世がしやすい」という世の風潮、そして「夢のキャンパスライフ」の2つを柱に、その後、大学進学率はどんどん上昇していきました。さらに、日本の教育制度では高校生で就きたい職が決まっている子はそこまで多くないので、「やりたいことを探しに大学に行こう」という提案もとても魅力的に映ったのだと思います。
高卒の求人数もかつての1~2割に減っています。当時の高卒の主な就職先は製造・機械運転・建設・農林産業でしたが、工場の海外移転や不況による公共事業削減などで国内の雇用が喪失したためです。こうして、「大学に行かないと職がない」状況がつくられていったのです。
その結果、2018年の進学率は57.9%と、過去最高を更新しました。大学入学者も2017年には62.9万人に増加しています。大学の数そのものも、1985年には460校だったものが、2017年には780校に増えました。
一方、受け入れ側である「一流ホワイト企業」の採用枠はというと、総数では多少増えているものの、大学生の増加のスピードにはとても追いつけません。イス取りゲームのイスが増えないまま参加者だけ増えれば、イスに座れない人が増えるのは当然です。