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自分なりのストレス対処法を100個書き出し、常に持ち歩こう

伊藤絵美(洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長)

2020年02月20日 公開 2023年08月17日 更新

マッチングを重ねるとストレス耐性も上がる

 モニタリングの次は、「コーピングレパートリー」を作ります。

 コーピングレパートリーとは、ストレスへの対処法のリストです。これをすると気が晴れる、ホッとする、頭を冷やせる、といったことをいくつも書き出しましょう。

 項目数は多いほどよく、100個書き出せれば理想的です。これだけあれば、一つや二つ試してみて効かなくても、いくらでも他の方法に切り替えられます。

 数を多くするコツは、細かくすること。「ラーメンを食べる」なら、「A店の〇〇ラーメンを食べる」「B店の〇〇ラーメンを食べる」と、お気に入りの店やメニューをすべて書き出せば数が増えます。

 実際に何かをする「行動的コーピング」だけでなく、頭の中で行なう「認知的コーピング」もあります。

 例えば、「相手の立場で考えてみる」「過去の成功体験を思い出す」「不幸中の幸いを探す」なども、ストレスに対処するための認知的コーピングです。

 建設的なものだけでなく、「○○温泉にゆったり浸かっている想像をする」「意地悪なアイツがカッコ悪い目に遭う場面を空想する」「モテモテになっている自分を妄想する」なども、立派な認知的コーピングです。

 また、憧れの人をイメージするのもいいでしょう。「あの人ならどんなコーピングをするだろう」「あの人にこういうふうに慰めてもらおう」などと考えるのです。有名人でも歴史上の偉人でも、架空のキャラクターでも構いません。

 こうして書き出したリストは常に持ち歩き、ストレスを感じるたびに、その中のどれかを実践します。そして効果を検証し、効かなければ別の方法を試しましょう。

 効かなかった方法も、リストから消さず、ストックしておいてください。別の機会には効くことも十分にあり得るからです。

 こうしてマッチングを繰り返すと、徐々に精度が上がり、「こんなときにはこれが効く」といった法則性が見えてきます。そうなれば、いつでも素早くストレス状態を脱けられます。

 加えて、ストレス耐性自体も上がります。ストレスに対して、「どうしよう」ではなく、「どの方法で対処しようかな」と考えられるようになるからです。

「私は対処できる」という認識は、自信と安心感の基盤になります。 

 

《取材・構成:林 加愛》
《『THE21』2020年2月号より》

著者紹介

伊藤絵美(いとう・えみ)

洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長

精神科クリニックや民間企業でメンタルヘルスの仕事に就いたあと、2004年より現職。オフィスでのカウンセリングの他、企業研修やセミナー、ワークショップなども開催。慶應義塾大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。臨床心理士。精神保健福祉士。公認心理師。著書に『ケアする人も楽になる 認知行動療法入門』『ケアする人も楽になる マインドフルネス&スキーマ療法』(ともに、医学書院)などがある。

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