子どもたちが多感な時期に親は「がん年齢」を迎える
鬼塚忠さん(作家エージェント)
(一石)身近な人ががんになったとき、特に、物心ともに最も強いダメージを受けるのは多感な子どもたちです。
現状、親ががん患者である18歳未満の子どもの総数は、約8万7000人に上ります。この数字からも分かるように、親ががんになって苦しめられる子どもたちは多いのです。
子どもたちが中学生、高校生に差し掛かる頃に親は「がん年齢」を迎えます。がん年齢とは、がんの発症が急激に増える40歳以上を指します。例えば、20代後半で子どもを授かった親は、子どもが小学生になると、皆、このがん年齢に達します。
ところが、その子どもたちを守るべき立場の親が、予備知識がないまま、がんに侵されたらどうでしょう。親はパニックになり、その動揺は子どもたちの心や生活を必要以上に脅かすことになります。
親のがんはその子どもにとっても深刻な問題なのです。なので、やはりがん教育は必要でしょう。さらに言えば、がん教育は子どもだけのためだけでなく、むしろ親子で考えるものではないでしょうか。
だから、私はこの『親子で考える「がん」予習ノート』を上梓しました。
(鬼塚)がんの知識は親と子の両方に必要なのですね。
(一石)そうなのです。さらにがん治療の進化は日進月歩ですので、知識を更新しなければなりません。「がんはすぐ死ぬ不治の病」というのは、旧い過去の医学常識です。年を追うごとに、がん治療が進歩していることを知れば前向きになれるはずです。
「必ず死ぬ病気」ではなくなりつつある"がん"の今
(鬼塚)実際がん治療はどの程度進んでいるのでしょうか。
(一石)いまは医学の進歩で早期発見・早期治療が可能になり、がんの5年相対生存率は6割を超えています。「治るがん」、「怖くないがん」も徐々にわかるようになってきました。
がんは「必ず死ぬ病気」から糖尿病や高血圧などと同じく、完治はしなくても「一生付き合っていく病」に変わりつつあるのです。がんと共生するための社会整備も徐々に整ってきています。
こうしたことを正しく理解すれば不安や怖さも軽くなりますし、「がんが消える○○食事法」、「末期がんでも治る○○療法」といった根拠のない話や、偏った情報や治療法に振り回されることもなくなります。
その意味では自分自身や身内ががん患者になる前から、「がんについて予習」しておくことがとても大切だと思います。
(鬼塚)子どもの頃から、がんについての正しい知識を得、その知識を更新していくことは重要ですよね。世にあふれる正確でないがんの情報を排除する上でも。