御社のホームページ制作費、実は割高? “ネットの相場”にはびこる「情報格差」の実態
2020年03月25日 公開 2023年11月02日 更新
本当に「ネットにくわしい人」は圧倒的に少ない
ネット業界は、日本に誕生してからまだ20年ぐらいしか経っていない、歴史の浅い業界である。そのため、「知っている人」が圧倒的に少なく、その人の価値が非常に高い。
これが自動車業界だと、100年以上も経っている業界なので、整備士や販売員などの自動車に関して「知っている人」が多く、人の価値が低くなる。競争相手も増えて、人件費も下がり、相場が安定する。
つまり、ネット業界は自動車業界のように「知っている人」が少ないために、競争が起こりにくく、人件費が高騰したまま、定価が不安定になってしまっているのである。
このような背景を考えると、ネットで安くて質のいい仕事をしてもらうためには、自分自身が「知っている人」になるしかない。しかし、「知っている人」になることがそもそも難しいので、一般的に考えれば「知っている人」と出会い、その人に安く作ってもらうしか方法はない。だが、ネットを「知っている人」と出会うことは、思いのほか難しい。
「いやいや、ネットにくわしい人なんて、身のまわりにたくさんいるよ」
そう思う人も多くいるかもしれないが、その人がネットにくわしいかどうかは、「知らない人」では判断することができない。そのため、本人は「知っている人」だと思って信頼を寄せている相手でも、じつは「知らない人」だったというパターンは少なくない。
よくよく考えてみれば、20年前にネットに携わり始めた人たちが、ようやく経験を積んで「知っている人」になったのが"今"だといえる。
結果的に脚光を浴びる仕事にはなっているが、当時、インターネットに可能性を見出した人たちは、どちらかといえば変わり者の部類で、マイノリティの人間ばかりだった。
本当に限られた数の人間しかこの業界に興味を示さなかったし、途中で変化のスピードについていけず挫折したり、違う業界に転職したりした人のことを考えれば、ネット業界で20年以上の経験者と出会うことがいかに難しいかは理解してもらえるはずである。
あえて高い料金をふっかけて「面倒な仕事」を避ける人も
では、「知っている人」さえ見つければすべてが万々歳かといえば、そういうわけではない。「知っている人」は、「知らない人」にいくらでも高い価格をふっかけることができる。「知らない人」も、「知っている人」を頼ることしかできないので、提示された価格で仕事をお願いするしかない。
しかも、ネットを本当に「知っている人」は、面倒くさい仕事をしたがらない。ネットの仕事をまともにやると、時間と手間ばかりかかり、効率が悪いことを理解しているからだ。
受けたくない仕事に対しては高い料金をふっかけて、相手から断らせようとするケースが多いのである。
担当者の態度が大きかったり、打ち合わせの段階でいろいろ注文をつけてきたりする面倒なクライアントに対しては、「この仕事はストレスが多そうだから高めの見積りを出そう」と、相場より高い料金を提示する。そもそもネットを「知っている人」は仕事には困っていないので、やりたくない仕事は無理して引き受けないのである。
そうなると、「知らない人」が集まる面倒くさいクライアントは、安い見積りを出した会社に仕事を依頼するしかなくなる。
人件費が主となるネットビジネスにおいて、安い見積りを出すということは、「人の質が悪い」か、「人数を削って仕事を請け負った」かのどちらかである。結局、「知らない人」が集まる会社は、安かろう悪かろうの仕事しかできない会社といっしょに仕事をするしかない。
このように、ネット業界は「知っている人」と「知らない人」の格差が大きいため、相場がほかの業界に比べて開きやすい。適正な相場でネットビジネスをするためには、最低限の知識と情報は持ち合わせなくてはいけない。
また、歴史が浅い業界のため、人の当たりとハズレの差が大きい。紹介や個人的な知り合いだけでなく、さまざまな人と会って相手のスキルを確認する作業は怠らないほうがいいだろう。