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新型コロナが破壊した「既得権益が守り続けてきたもの」

守屋実(新規事業立ち上げプロフェッショナル),鬼塚忠(作家エージェンシー代表)

2020年04月28日 公開 2022年12月21日 更新

 

既得権益側が一歩後退。しかし新規参入者は「資金」をどうする?

(鬼塚)動かなかったものを動かすより、動き始めたものを動かす方が100倍ラク。激しく同意です。とは言え、冷静に考えるとまだ行動には移せない。既得権益の存在する産業に参入するにはそれなりには資金が必要ですよね。資金調達は難しい局面にあると思いますが、現状はどうでしょうか?

(守屋)資金調達で言うと、確かに、調達しにくくなっていると思います。何しろ、いま世界全体が狂ってきていますから。

例えば、ファンドで言えば、すでに組成したものに関しては、組入れをしていかなければなりませんから、そう言った意味では、その部分での血流は流れていますが、これから組成をする予定、ということで言うと、なかなか難しいかも知れません。足元の影響もあるが、その先になって、より深刻な症状があらわれてくるという感じかと。

ただし、じゃぁ苦しいだけなのか、というと、そうでもないと思っています。そもそもの前提なのですが、コロナの直前が、少し過熱し過ぎていました。

お金が余っているような話が方々から聞かれていましたし、実際、VC(注:ベンチャーキャピタルの略)からのお金に加えて、CVC(注:コーポレートベンチャーキャピタルの略)からのお金も加わりました。だから、急激な冷え込みによる衝撃は確かに大きいですが、過熱を冷ます、正常への揺り戻しが含まれているとも思うのです。

また、まさに「チャンス到来」という部分かも知れませんが、こういった状況だからこそ、投資のオンライン化、というのもあると思います。

これまで、上場株への投資は、とっくにオンライン化されていましたが、未上場株への流通は、VCなどの法人、そしてエンジェルと呼ばれる一部の富裕層による限られたオフラインの世界でした。

それが、規制の緩和を含むオンライン化の流れがコロナで加速、株式投資型クラウドファンディングのような、フルオンラインによる小口投資が、芽吹いてきているのです。

このように、資金が調達しにくくなっていることは事実ですが、お金が流れなくなっている訳ではないので、チャンスはまだまだ探せると思います。

(鬼塚)資金調達しにくくなっているがお金は流れているということですね。

 

自社都合の考え方をやめ「マーケットアウト」に転換していくことの重要性

(鬼塚)日常の売上の落ち込みについては、どう考えればいいですか? コロナの影響で売上減に直面しない企業はないと思いますが。

(守屋)たしかに、一部企業を除いて、かなり苦しい状況になっています。1年以上、影響は長引く、という話も出始めているなか、明るい未来を考えるなんて、本来は出来ないのかも知れません。

ただ、そうであっても、それでも辛い、辛いと考えていると、より一層辛くなってしまうので、考え方を変えたらいいと思います。これは、難しい話しかも知れませんが、最初にすべきことは、「減った売上をどうにかして穴埋めする」という考えに立たない、ということです。

この「補填」のような考え方の主語は「自社」です。こう考えてしまったら、「終わりの始まり」に突入しています。逆の立場で考えるのが分かりやすいです。

自分自身がある企業の売上げ補填対象とみなされ、扱われたら、気分がよくはありませんよね。お客様は、搾取の対象ではなく、喜んでいただく対象なのです。喜んでいただくのが先、お金はあと、です。

だとしたら、どうやってお客様に喜んでいただくかです。それは、「マーケットアウト」に考える、ということだと思います。

このマーケットアウトとは、ミスミ創業者の田口氏が考案したビジネスの考え方で、例えば、ラクスルでは、たくさんのチラシを刷ってくれているお客様は、きっと配ることに困っているはずだと考えました。印刷業者であるラクスルは、刷ることがラクスルの事業の一区切りなのですが、お客様のニーズの一区切りは、刷って配るだと考えたのです。

だから、印刷会社を束ねたように、新聞折込会社やポスティング会社を束ね、簡単に刷って配れるサービスを構築しました。

経済全体が縮んでいるなか、自社都合なサービスに、お金がつくわけがありません。いまこそ、自社から出発するのではなく、お客様からの出発で考えて欲しいですね。マーケットアウトの考え方はとても大事です。

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