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生き方

「本当は嫌いなこと」を自覚すれば、“生きづらさ”が和らぐ

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2021年02月04日 公開 2023年07月26日 更新

本性に従って生きれば辛くない

「あーでもない、こーでもない」と悩むのではなく、今日一日、精一杯歩く。

歩いていればいい。歩いていればわかることがある。生きるのには順序がある。

本性に従って生きているときには、からは困難に見えても、本人にはそれほど辛くはないものである。

政治家が選挙のときに、われわれが「するだろうなー」と思っても、彼らが元気なのは、本性に合ったことをしているからである。

それに対して、病気がちな人というのがいる。重い責任を負った仕事をしているわけではないのに病気がちになるのは、多くの場合、本性に逆らった生き方をしているからである。

自分の本性を探すのは、そう簡単なことではない。生まれてからの環境が、本性を探すのに望ましいものでなかったのだろう。本性に気がつくことができないような環境で成長してきたのだろう。

だれでも、自分の本性に従って生きたい。世の中に、自分の本性に逆らって生きたいと思っている人はいない。

事故を起こしたくて自動車事故を起こす人がいないように、本性に逆らって生きたくて本性に逆らって生きている人はいない。人は本性に逆らって生きたいとは思っていなくても、心ならずも本性に逆らって生きてしまう。

だから、何かわからないけれども、将来が不安であるとか、生きるのがなぜか辛いとか、どうしようもなく不愉快な気持ちをどうすることもできないという人は、自分の本性を探すことである。

どうしようもない重苦しい気持ちは、本性に逆らって生きてきた結果なのである。重苦しく黙っているあなたの性格は、作られた性格である。もともとのあなたの性格ではない。今までの環境が悪かった。

でも、今までのことはそれでよい。だから、今まで自分は本性に逆らって生きてきたということを認めて、自分の本性を探すことである。それは他人にはできない。自分でするしかない。

 

喜びの体験をする

そのためには、いろいろと方法はある。

たとえば、第一には、小さなことでいいから喜びの体験をする。そのためには、小さな選択から始める。人からの賞賛よりも、自分の小さな喜びの体験を選択する。

今まで、あなたは賞賛を選んできたから、自分を頼りなく感じている。それを少しずつ変えていくのである。そして、自分の小さな喜びの体験を選択して、何が起きても、まず「起きて良かった」と思うことである。

「幸せになる」と毎日言う。すると他人に思いやりが出る。

愛する者のために、何か一つすること。やることは、毎日違ってもいい。

 

必要でない物と人を捨てる

第二には、捨てるものを探す。

本性に逆らって生きてきたあなたは、生きるのに疲れ、うつになった。何もかもがなんとなく億劫。

人が「おはよう」と言っても、「おはよう」と言うのがめんどうくさい。家族とも親友とも話すのが億劫。雨が降っているのに、傘をさすのも億劫。お風呂に入るのが億劫。

まずは、こういうときには、「だれも助けてくれないんだな」と気がつくことである。

うつのときには、捨てられるものを探そう。あなたは必要でないものを持ちすぎている。物も人も。

「この人には、5年後にさよならを言う」と決める。
「この人とは、どんなことがあっても十年先には別れよう」
「この部長とは、今はつきあうけれども定年退職してからは会わない」
そして、「これを神に誓う」と書く。すると、「これは十年頑張ればいいのだ」とわかる。

百年たてば、みんな死んでいる。あなたは今まで、人が来ると喜んでうけいれてしまった。

小学校のときからそうではなかったか。そして今、ここまで来てしまった。二度とこうしたことはすまい。あの時代の人間関係は、いずれ、すべて清算しよう。

うつ病は心理的な便秘なのである。過去の出来事を消化できていない。心理的に必要なくなっているものを捨てられていない。だから、体調が悪い。

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自分が無理していることを認める

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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