「自分らしさ」は人と関わる中から見つかる
ここまで読んだあなたはきっと「だったらどうしたらいいの?」と思われているのではないでしょうか。
ここから私の専門である文化人類学の観点を使いながら処方箋を提供しようと思います。私は、オンラインでの人類学講座や、書籍の執筆を通じて、幅広い世代の方と出会ってきましたが、いつも驚かされるのは、自分に自信のない人の多さです。
自信のなさは、世代や、能力、職業とは一切関係ありません。どれだけ若くて能力があろうとも自信のない人はめずらしくありません。自信のなさは他者との比較によって作られます。そして自信のない人のうちの少なくない人たちが先に記した「自分探しの罠」に陥っています。
だからこそ「あなたの中にかけがえのないあなたが眠っている」という人間観からの脱却をはかり、「あなたという存在は他者との関わりの中で初めて立ち上がる」という観点を持って、世界と自分を見つめ直して欲しいのです。
まず、あなたの人生を振り返り、心から楽しいと感じた瞬間、生きていることの喜びを味わえた瞬間を探ってみてください。それは多くの人から「いいね」をもらえたとか、賞をもらったとか、そういう刺激のことではありません。
あなたの心が穏やかに安らいだ瞬間、社会的評価はなくとも、自分はこれでいいと感じられた局面のことです。そのとき、あなたの周りにはどんな人がいましたか?
その人たちはどのようにあなたと接し、どのような言葉をかけてくれましたか。翻って、あなたはどのようにその人たちと接しましたか。そのように人生のカケラを集めていくと、どのような人間関係の中であれば、あなたは心穏やかに過ごせるのかが見えてくるはずです。
そしてそのような人間関係の中で立ち上がるあなたのあり方こそが、「自分らしさの罠」に陥ることのない「あなたらしさ」です。性格診断でも、SNSの検索でもなく、「あなたらしさ」を共に立ち上げてくれる人たちをあなたの人生の軌跡の中から探し、そのような人たちと出会う工夫を重ねていってください。