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生き方

「人生が苦しい」と感じる人に共通する“他人への不理解”

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2021年10月15日 公開 2023年07月26日 更新

 

喜びと苦しみは表と裏の関係

それから、もうひとつ大切なことは、人を愛すること。人間は社会的動物なのである。どんなことをしたって、一人で孤立しているのは、不自然である。一人でいて他人と関係なくしていれば、どうしても異常になる。何かもの足りない。

だれでもいい、だれかと関係を持つこと、このことが大切なのである。そのさい同年齢の人とはかぎらない。だれとも関係なくなったらどうしても空虚になる。人間は関係する動物なのである。有名大学や大企業にあこがれても、また次のものにあこがれるようにきりがない。

カッコよさなどで、あれもほしい、これもほしい、あるいは、あれのほうがいい、これになりたい、などといっていたらきりがない。大切なのはカッコよさではない。大切なのは、今自分に何が適しているか?ということである。

自分を生かす仕事がしたいのなら、ひとつだけ聞きたいことがある。あなたは楽をしたいのか、厳しさを求めているのか。もし楽をしたいと考えながら、自分を生かす仕事がしたいなんていう人は、虫がよすぎる。自分を生かすということは、血のにじむような苦しさなのである。

マラソンの選手を考えてみよう。彼らは自分を生かしている。だが、彼らはどれだけ厳しい生活をしているか。

そして実をいえば、自分を生かす仕事をしようという人は、あらゆる厳しさに耐え、覚悟のある人だから、そんなノホホンとした生活をして、毎日不平などいいつつ「ああ、もっと自分を生かす仕事がしたい」などといってはいない。

そんなことをいう暇に、自分を何かで夢中で鍛えている。喫茶店などに座っていやしない。自分を生かした仕事とは、レジャーではないのである。死にもの狂いなのだ。

僕も自分を生かした仕事をしたい。僕はけっして自分の生き方を人に強制しない。人には人の考えがある。人はそれぞれ自分の考え方に従って生きているのである。僕と正反対に生きる人を責めはしない。

しかし、もし自分を生かした仕事がしたいなら、部屋中のたうちまわってあばれるほどの苦しみだけは覚悟しろ、といいたいのである。それがいやならもう「自分を生かした仕事がしたい」などと甘ったれたことをいうのはやめたほうがよい。

どっちかだ。どっちもほしいなんていったって、そうは問屋がおろさない。どっちの人生にだって苦しみはあるのだから。要はどのような種類の苦しみをえらび、どのような種類の喜びをえらぶかだ。

喜びと苦しみは表と裏である。喜びだけとるわけにはいかない。他人の人生を見て、うらやましいと思う時は、その表しか見ていないのである。必ずその裏があるのである。

【著者紹介】加藤諦三(かとう・たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。    

 

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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