長男の「2時間迷子事件」で気づいたこと
3歳になったばかりの長男が、2時間ほど迷子になったことがありました。その日私は長男と、生まれて間もない次男、そして夫の母、つまり子どもたちにとってのおばあちゃんの4人で連れ立って、美容院に来ていました。お会計をして、さあ帰ろうというとき、長男の姿がどこにも見当たらないのです。
大人2人がほんの一瞬だけ目をはなした隙の出来事です。自分の顔から血の気が引いていくのがわかりました。美容院はビルの2階にあったのですが、建物中を探しても長男の姿はありません。まさかひとりで外に出た? 交通量が多い地域です。悪い想像をしそうになりますがグッと抑えて、2時間ほど近隣を探しまわりました。
結論からいうと、長男は建物の裏手にある交番に迷子として保護されていました。アイスクリームをもらい、ニコニコ機嫌よく待っていた長男。「ここで待っていればお母さんが迎えにきてくれる」と信じきっている様子に、体中からヘナヘナと力が抜けました。
美容院が入っている建物の向かいには、当時私の仕事場だった店舗がありました。私がお会計をしているとき、長男は母親の姿が陰に隠れて見えなくなったことにびっくりし、「あそこに行けばお母さんがいる!」と思い、ひとりで美容院を出たのでした。店舗に行くには大きな交差点を渡らなければならず、横断歩道を前におどおどと躊躇している長男を見て、通りがかりの人が迷子だと気づき、交番に連れていってくれたそうです。
理屈にかなった行動ですし、結果的には迷子になりましたが、幼いながら行動力があるなと感心するところもありました。ですが、このとき長男の中にはもっと大きな不安があったのだろうなと、いまなら推察できます。
まだ言葉にできなかった複雑な感情
(弟が生まれ、お母さんがそっちにかかりきりになっている。ぼくのことを見ていないんじゃないか、忘れてしまっているんじゃないか)
そんな不安がずっと胸にあり、私の姿が見えなくなったことで一気にふくらんで、何かせずにはいられなくなって外へ飛び出したのでしょう。長男は次男の誕生を喜び、お兄ちゃんとして懸命にお世話しようとがんばっていました。
私もそんな姿が頼もしくもあり愛おしくもあったのですが、彼の中にあった、まだ言葉にできない複雑な感情は想像できていませんでした。早い時期に私が子どもの本心に気づき、寄り添っていれば、長男も無茶な行動はしなかったでしょう。
このことで長男を叱ったりすることはありませんでした。私が「目をはなしてごめんね」と謝らなければいけないことです。幸い無事でしたが、何かあってもおかしくない状況でした。子育てをしていると、こんなふうにヒヤヒヤすることが何度もあります。そのうちのいくつかは、子どもの目線で考えてみることで、未然に防げることなのでしょうね。