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生き方

トライ&エラーは変数が大切? 東大院卒・スパイス料理研究家の「好きを仕事にする方法」

印度カリー子(スパイス料理研究家、タレント)

2022年04月12日 公開 2022年04月13日 更新

 

知識をインプットしたら、ひたすら実践で経験値を上げる!

――膨大な量のレシピ本を読みながら、スパイス料理の全体像を学んだり、各レシピを見比べて共通項を見つけたり、まさに勉強のように情報の整理をされていたのですね。知識を身につけた次のステップは?

【カリー子】実践あるのみです。またレシピ本をみながら作るのですが、以前と圧倒的に違うのは、どこがポイントなのか理解したうえで作っていること。おかげでスパイスの組み合わせや量、炒め具合などが身につき、失敗も減りました。

ちなみに2回目失敗の原因は、玉ねぎの炒め不足とトマトの入れすぎでした。いま、スパイスの話をしていたのに、「玉ねぎ !?」と思われますよね(笑)。玉ねぎの炒め方をおろそかにしていたら、いくらスパイスを調合しても美味しいカレーにはなりません。それに気づいて玉ねぎをしこたま炒めるようになってからは、ごく少ないスパイスの量でも美味しく作れるようになりました。

トマトは、トマト缶で代用していたのですが、残ってしまうのがいやで1缶まるまる入れていたんです。レシピに書かれている倍以上もの量を入れている時点で、カレーではなくトマトスープになってしまう(笑)。これも私のように普段レシピを読まずに感覚で料理をしてきた人間にありがちな失敗。「レシピにはこう書かれているけど、ぜんぶ入れても美味しくできるでしょ」と思ってしまう癖があって。

ここからレシピを自分で書けるようになるまで、さらに半年。いろんな方のレシピ本をもとに、ひたすら作って真似して。最初は人の"真似っこ"をするのがいい勉強になると思います。

とにかく経験ゼロなので、たくさん経験値を積むことが重要でした。毎回作ったら、それをノートにまとめて整理して、レポートと一緒ですよね。こんなレシピで、このように作ったら、こうなった、というようなことを、ずっと書き続けたんです。100レシピくらいまで続けたでしょうか。知識や経験はアウトプットすると、自分の中に定着しやすくなるのでおすすめですよ。

 

知識と実践を重ねて手に入れた、"脳内でスパイスを調合できる"能力

――ここからさらにレシピが書けるようになるには、どんな能力が必要でしたか? 

【カリー子】一通りレシピ本を真似たら、次はレシピを自分なりにアレンジしてみたり、お店で食べて美味しいと思ったカレーを再現するようにしました。

やり方はこうです。まず独特なスパイスを感じたら、「これは何だったっけ?」と舌と香りを頼りに記憶をさぐります。次は、カレーのベース部分。「玉ねぎやトマトの分量はどれくらいなのか?」最後は液体部分で、「ヨーグルトやココナッツミルクはどれくらいの割合で含まれている?」、「どういう風に作ったらこの味になる?」そんなことを考えながら、頭の中でシミュレーションするんです。

その頃にはある程度感覚が身についているので、頭の中で組み合わせるだけで、だいたいの味が想像できるわけです。「こう作ったら、確かにこの味になる!」というのがわかったら、実際に家で作って検証する。たまに想像していた味にならないときもありましたけど(笑)。

そして、この「脳内でスパイスを調合できる」感覚こそ、私がずっと手に入れたかったものでした。楽にレシピが書けるようになったのも、この力のおかげです。

皆さんも和食を作るとき、しょうゆ、砂糖、みりんなど、いちいち計量せずに適当に入れていますよね? それでもだいたい美味しくできますよね? それって、自分の中に感覚として、この分量のしょうゆを回し入れたら、どの程度のしょっぱさになるのか、わかっているからできるんですよ。

スパイスカレーでもこの感覚がずっと欲しくて、何度も作って、失敗して、やっと手に入れることができた。これはもう、実践あるのみですね。どんなに本を読んでも手を動かさないとダメだし、どんなに手を動かしても知識がないとダメ。知識と実践、この2つが合わさって、ようやくものにすることができました。

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極めることは膨大なトライ&エラーの繰り返し

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