経営者と社員の壁を解消する方法
では、どうすればこの壁を解消できるのでしょうか。
1つ目の、Webメディア化を進めていきたい2代目経営者の事例のように社員がブレーキになる場合は、経営者は身近な協力者を作ることがDX成功への最初の1歩です。DXの重要性を理解してくれる人と一緒に綿密に計画しましょう。
さらに経営者という立場で社員に命令をするのではなく、なぜDXをするのか、このメディア化を進めることで社員にとってもどんなメリットがあるかを丁寧に伝えていく必要があります。
社員を動かすには「自分にもメリットがあるかもしれない」と感じてもらうことが必要です。ただ、それを経営者がすべての社員に伝えることは不可能なので、DX推進担当を任命して、理解者、協力者を増やしていくコミュニケーションの計画を作り、実施していくことをおすすめします。
2つ目の経営者がブレーキになった事例では、社員が主導して経営者をその気にさせる必要があります。骨が折れる作業だと容易に想像できますが、手をこまねいていては何も前に進みません。
経営者をその気にさせるには、デジタル化というソリューションの話をする前に、会社が抱える経営課題から話を進めることです。「デジタル化すれば成果が上がる」のではなく「営業部として成果を上げるために、デジタル化という手段が必要」と伝えるのです。
これは営業部だけの話ではありません。経理部なら「より経営のためになる情報を伝えるためにクラウドサービスを導入したい」と伝えれば、デジタルに詳しくない経営者でも一考の余地はあると考えてくれるでしょう。
それぞれの立場を思いやれば成功が近づく
DXを推進するときにぶつかる経営者と社員の壁について解説いたしました。DXは単なるデジタル化ではなく、働き方改革とつながったり、会社の古い業務を新しくしたりする“痛みを伴う改革”であるとも言えます。それゆえDXを始めるときに、すべての社員がポジティブに考えることは稀です。
ある調査では、中間管理職の3分の2がDXにできれば関わりたくないと回答しています。DXを進める際は、それぞれの立場で、さまざまな思いが交錯するので、コミュニケーションを十分に取るべきです。経営者は社員目線で、社員は経営者目線で、それぞれを思いやることが、結果としてDXを成功へと導く近道になると心得ましょう。
【プロフィール】
日淺光博(ひあさ・みつひろ)
DX専門コンサルティングファーム・株式会社日淺CEO。DXコンサルタント。公益財団法人九州経済調査協会アドバイザー、三越伊勢丹グループ会社顧問などを歴任。直近2年で40社以上のDXプロジェクトに関わり現在に至る。DXに特化した情報発信やデジタル人材育成動画を配信する「GoDX」を運営。
DX専門コンサルティングファーム 株式会社日淺 公式サイトhttps://hiasa.co.jp/