明示的にコンセンサスをとる
イラスト:大野文彰
小さな合意形成をしながら、話を前に進める。ファシリテーションの基本と言っても過言ではないでしょう。
ファシリテーターは場の合意形成をするとき、「コンセンサス」「合意形成」などの言葉を明示的に発するようにしましょう。なぜなら、ファシリテーター本人が合意形成をしたつもりでも、メンバーに合意したつもりがなく、後から思わぬ「ちゃぶ台返し」を喰らうことがあるからです。
「僕は合意したつもりはないよ」
「あの時私は何も言わなかったと思いますけれど...つまり、その案に納得していないです」
「えっ、私、賛成って言いましたっけ?」
こうなると、議論の仕切り直しや手戻りが発生。参加メンバーのモチベーションも下がります。合意形成をするとき、ファシリテーターは次のようなフレーズを発しましょう。
「では、いったんコンセンサスを取りましょう」
「予算案Aの金額についてはみなさん合意という前提で、ここから先の話を進めてもいいですか?」
「それでは、B社との契約を進めることについて合意形成します。いいですか?」
このように、明示的に「コンセンサス」「合意形成」を強調して、暗に「異論があるなら、いまのうちに言ってください」「後出しじゃんけんはやめてください」と伝えるのです。
そして、そのまま議事録に「合意事項」の項目を起こし、「~についてコンセンサスを得た」「~を合意した」と記録する。
できれば、会議室のプロジェクターに書記役のパソコンの画面を投影し、議事録に記録する様子を映し出す。オンラインミーティングであれば画面共有する。ここまでやれば、悪質または無邪気な「ちゃぶ台返し」を防ぐことができるでしょう。
合意事項はその場で書き出す
合意されたと思う内容は、ファシリテーターのあなたが率先して書き出しましょう。
・ホワイトボードやオンラインミーティングツールで画面共有した白紙のファイルに「合意事項」と書いた項目をあらかじめ用意しておく
・最初の合意形成がおこなわれた瞬間、「合意事項」の文字を書いて、その下に合意内容を箇条書きし始める
視覚化されることで、何が合意事項で、何がまだ検討したほうがいいのかを、出席者により強く意識してもらうことができます。
「OK。異議ありません。先に進みましょう」
「いや、まだ合意したつもりはない」
「総論は合意だけれども、各論をじっくり吟味する必要があると思います。たとえば...」
出席者の意見やスタンスを引き出すきっかけにもなるでしょう。
ポイントは、あなたが合意事項だと思ったこと、合意形成したいと思ったことをとにかく書き出すこと。失敗を恐れるべからず。だれかが率先して合意形成を仕掛けなければ、話はなかなか前に進みません。
ただし、参加者から「違う」と言ってもらえる余地を作る。ここが重要です。
「ここまで書き出した事項は合意事項として、先に進めます。いいですか?」
できればこんなワンクッションを挟んで、明示的に合意形成して先に進めたいですね。場を観察し、腹落ちしていなさそうであれば後で個別に意見を聞いてみるなどしましょう。
オンラインミーティングの場合は、チャットで合意形成していいかどうか投げ込んでみるのもアリです。
「では、画面に書き出した『合意事項』について合意形成していいか、みなさんのスタンスをお聞きしたいと思います、次の(1)(2)(3)のいずれかをチャットで回答してください」
こう発言しながら、チャットに以下を書き込みます。
(1) 合意(先に進もう!)
(2) 意義あり(ちょっと待った!)
(3) 考え中(時間が欲しい)
(2)(3)の回答があれば、その場でチャットしてもらうか議論する、後で個別に意見を聞く。丁寧なコミュニケーションを図りながら、合意形成を進めていきましょう。