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生き方

「わかる」「できる」「やるぞ」で人生は変わる!

蝦名玲子(ヘルスコミュニケーションスペシャリスト)

2012年05月31日 公開 2022年12月22日 更新

「わかる」「できる」「やるぞ」で人生は変わる!

生きていると仕事や家庭、災害のことなど、様々な困難にぶつかる。

ヘルスコミュニケーションスペシャリストの蝦名玲子氏は、「困難を乗り越える力(SOC:Sense of Coherence)」が高まれば、ストレスに負けることなく生きていけると語る。

このSOCとは何か。どのようにしたら高めることができるのか。同氏の著書『困難を乗り越える力 はじめてのSOC』にて詳しく解説している。

※本稿は、蝦名玲子 著『困難を乗り越える力 はじめてのSOC』(PHPビジネス新書)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「わかる感」「できる感」「やるぞ感」を高めるメリット

生きていれば、「仕事がうまくいかない」「家族や恋人、上司や部下とうまくいかない」「家族の介護が大変だ」「大病を患っている」「災害で多くのものを失ってしまった」など、レベルの差こそあれ、思うようにならないさまざまな困難に遭遇する。

そうした困難に遭遇したときは、「大変だ、どうしよう」と不安が高まるものだが、「自分が今どういう状況に置かれていて、これから何が起こり得るのか」がわかったら、少しは落ち着くだろう。

また次にどのような問題が起こるかを予測できたら、実際にその問題が起きたときに受けるショックを和らげることもできる。つまり、「わかる」という感覚が高まると、動じにくくなるのである。

また困難に遭遇したときに、「自分ひとりで、この困難を乗り越えていかないといけない」と思うと追いつめられるが、「自分には助けてくれる人がいる」と困難を乗り越えるときに使える「資源」に気づくと、「なんとかなる」と思えやすくなる。

また、そうした「資源」を上手に活用してうまく乗り越える経験を積むことで、自信も高まる。つまり、「できる」という感覚が高まると、追いつめられにくくなるのである。

さらに「こんなに大変なことが多いのに、自分はどうして生きているのだろう」「自分なんていなくてもいいんじゃないか」と思うと、すべてがどうでもよくなってしまうものだが、「この困難を乗り越えることは大切なことだ」と感じられたら、つらいからといって、生きることを諦めてしまわず、乗り越えていこう、生き抜いていこうと思える。

つまり、「やるぞ」という感覚が高まると、諦めてしまいにくくなるのである。困難を体験しても、健康状態を悪化させず、さらにその困難を成長の糧にするような生き方ができている人には、こうした「わかる」「できる」「やるぞ」という感覚が高いという共通点がある。

困難を乗り越える力(SOC:Sense of Coherence)は、これら3つの感覚で成り立っているのだが、困難に遭遇しても、動じず、追いつめられず、諦めないことが、うまく生き抜いていくためには重要なのかもしれない。

私たちは人生で降りかかるすべての困難を回避することはできない。しかし大変なことがあっても、そうした出来事にうまく対処する経験を積み重ねてSOCが高まると、ストレスに負けることなく、どんな困難をも乗り越えていけるようになるのである。

 

自己啓発との相違点

わかりやすく説明するために、私は「困難を乗り越える力(SOC)は“わかる”“できる”“やるぞ”という感覚から成り立っていて、これらの3つの感覚が高まると、困難をうまく乗り越えていくことができるようになります」と説明することが多い。

すると、あるとき「“わかる”“できる”“やるぞ”って、自己啓発本に書かれていることみたいですね」というコメントをいただいた。

自己啓発本を読み、元気になる人もいるため、似ていると感じられたのかもしれないが、前提となる人生の見方が、自己啓発とSOCとでは異なる。

自己啓発の人生に対する見方は「人生は選択です。今の現実はあなた自身が招いたことです」というものではないだろうか。この前提のうえで、「もし現状に不満があるのであれば、まずあなたが変わりなさい。変わるときっといい未来になりますよ」というメッセージを伝えることが多いようだ。

つまり、自己啓発では、「生活世界と対峙する自己」が想定され、生活世界と比べて自分の存在や能力は優位にあるという確信や自分に対する信頼に光が当たっている。このため、「生活世界をより良い方向にコントロールするために、個人が変わること」がポイントになる。

一方、SOCの人生に対する見方は「生きていれば困難はあるものです。どれだけ素晴らしい人であっても、困難のない人生をおくることはできません」というものである。

この前提のうえで、「あなたはこの世界でたったひとりしかいないステキな存在なのだから、今のあなたでいいんです。もし現状に不満があるのならば、自分やまわりを冷静に見てみましょう。今の困難を乗り越えるための資源となるような情報や考え方、人やサービス等はありませんか?

あなたを支えてくれる資源はきっとあるはず。そうした資源に頼ったらいいのです。大丈夫、きっとなんとかなりますよ」といったメッセージを伝えることになる。

つまり、SOCでは、「生活世界とともにある自己」が想定され、生活世界を構成する自分と、自分の周囲の人々や環境等への信頼に光が当たっているのである。このため、「ありのままの自分や生活世界を理解し、そこにある資源に気づき、それらを上手に活用する経験を積むこと」がポイントになる。

したがって、たとえば前向きになりたいという人がいた場合、自己啓発的なメッセージだと「物事をどう捉えるかはあなた次第です。前向きに捉えられるようになったら、あなたの人生はより良いものになります」ということを伝える。

一方で、SOC的なメッセージは「前向きになろうと努力することは素晴らしいことです。でももし努力してみたけれど悲観的な自分はやっぱり変えられないというのであれば、ムリに前向きになろうとしなくてもいいのです。それより前向きな人がいないか、まわりを見渡し、もしそういう人がいたら、その人と長い時間を一緒に過ごしてください。きっと知らず知らずのうちに影響され、前向きな体質になっていくはずです」ということを伝えるイメージなのである。

自己啓発を試みて、自分を変えようとしてみたけれど、うまくいかずに落ち込んでしまったという人がいる。そうした人は、「他人に頼っていいんだよ」というSOC的考え方を試してみてもらいたい。心が楽になるはずである。

 

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