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「厄年」の起源は平安時代? 人生の転機を示す先人たちの知恵

マーク・矢崎(日本占術協会認定占術士/日本占術協会理事)

2023年03月22日 公開 2024年12月16日 更新

「厄年」の起源は平安時代? 人生の転機を示す先人たちの知恵

「厄年」は中国や朝鮮半島といった大陸から伝来した風習です。日本に、厄年の文化が取り入れられた当時と、現在では、その形態にも少し異なる部分も存在します。新聞や雑誌等で、数多く執筆されているマーク・矢崎さんが、厄年の歴史について紹介します。

※本稿は、マーク・矢崎著『いにしえからの贈り物 お守り・厄除け・おまじない』(説話社)より、一部を抜粋・編集したものです。

 

厄年の風習はいつごろからか

人生の大きな転機である厄年の風習は、いつ頃から行われてきたのか。一説では、平安時代まで遡ることができるようだ。『源氏物語』の若菜下巻には、紫の上が37歳の厄年で、加持祈祷を受け、物忌みをするくだりが書かれている。

わが国は、奈良時代や平安時代は、大陸の進んだ文化を積極的に取り入れていた。そして中国や朝鮮半島の大陸文化を起源とする、七五三やお節句などの人生儀礼や年中行事などの風習を、宮中行事としてわが国の文化に反映させてきた。

奈良時代に伝来した仏説灌頂経には厄年は7歳、13歳、33歳、37歳、42歳、49歳、52歳、61歳、73歳、85歳、97歳、105歳と書かれている。

当時は厄年の年齢に男女の別はなく、また厄落としのための加持祈祷や物忌みなどの風習も、この時期にこの経典と一緒に伝来したと思われる。

厄年の意味や年齢の根拠はよく分からないが、最初の厄年の7歳は、昔は、医療体制が整っていなかったので「7歳までは神の内」と言われ、神様の意思でいつ生命を落としてもおかしくない存在だったのだ。

そこで子どもが7歳になると、子どもの安全と成長を神様にお願いする「七つ参り」や「七五三」のお宮参りの儀式が生まれた。この風習は7歳の厄年から生まれたものだと考えられる。

次の厄年の13歳も、「十三参り」という風習が残り、子どもの成長を祈り感謝する節目の年で、男女ともに思春期を迎え、成長期で大人の仲間入りをする、身体的にも変化を迎える健康面でも大きな影響を受ける年。

とくに当時の女性は、13歳で結婚できる年齢となるので、人生の大きな転機の年齢と言えるのかもしれない。

このように厄年は、人が成長したり年を重ねていく中での、身体や健康の変化や、成人や就職、結婚などの通過儀礼に合わせて、人生の転機になる時期を、厄年として示した先人たちの人生の知恵と言えるのではないだろうか。

人生の通過儀礼の年齢は、時代と共に変化するので、時代が下ると人々の生活習慣の変化に合わせて、厄年に若干の変化が生まれてくる。

江戸時代になると厄年に、女性の19歳、男性の25歳が、小厄として加わった。江戸時代の文化では女性は15歳から19歳までに結婚し、それを過ぎると年増と呼ばれ、男性は15歳で元服し、25歳では嫁を娶って責任ある地位につく年齢。男女ともに人生の大きな転機の年齢といえるのかもしれない。

また19歳は重苦。25歳は5×5=25で5が5つ。四五を越える=死後を越える。33歳は、散々な歳。42歳は死に歳という、ちょっと縁起の悪い語呂合わせも作られたのだった。

 

厄落としと厄除け・厄払いの違い

厄年の災厄を祓うことを「厄落とし」と言う。本来はいつも身につけているものをわざと落とすということで、自分の身代わりになってもらうことと、何か大切な物を失うことで厄年に受ける悪い出来事を先にすませてしまう、という意味がある。

また厄年の人が家族や知人に贈り物をしたり、宴席を開いてご馳走したり、ご近所を集めて餅撒きをして、お餅やお菓子やお金を大勢の人にもらってもらうことで、厄年の災厄をみんなに背負ってもらい小さくする。

金銭的にも負担を負うことで、悪いことを先にすませるという意味合いの風習も各地に残っている。

これらの行事は、小正月や節分のお祝いとして行われ、これで、二度目のお正月を祝ったとして、厄年を乗り越えたという意味もある。ご馳走や贈り物を送られた人たちは、厄年の人にネクタイやスカーフなどの長いものをお返しすると、厄を防ぐことができるとされている。

厄落としが自分でする縁起かつぎのおまじないだとすると、仏様に祈って加持祈祷をしてもらうのが「厄除け」だ。各地に厄除け大師とか厄除け不動とか呼ばれる寺院があるが、密教系の寺院で護摩をたいて、厄年の災厄から身を守ってもらう。

厄除けは、先に小さな禍を起こす厄落としと違って、お大師様やお不動様のような悪を戒める仏様に祈願をして、悪事や災難を身に寄せつけないようにお願いをする儀式。

厄除けのお札やお守りをいただいて、それを身につけ家に祀り、仏様のご加護を受けることで、厄年の災厄を防ごうとする。

厄年の災厄を、神様に頼ろうとするのが「厄払い」だ。厄払いは、厄除けのように神様に災厄から守ってもらおうというのではなく、神様の神通力でその身に宿った厄年の穢れや災厄を祓い清めようとするもの。

本来は、お祓いを受ける厄年の方自身も精進潔斎をして身を清め慎んで、お祓いを受ける心構えを持つことが大切だ。そしてお祓いを受けたあとは、その厄年の期間は、清めたその身体が、再び厄や禍で穢れないように、身を慎んで正しい行いをする必要がある。

やはり厄年は、厄落としや厄除け、厄払いをしっかりとしたうえで、無理や冒険を慎んで穏やかで冷静に厄年をやり過ごすことがよいと思う。

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