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経営者が必死に考えた「理念」は、なぜ社員に届かないのか?

小堀健一(変人[かわりびと])

2023年02月08日 公開

経営者が必死に考えた「理念」は、なぜ社員に届かないのか?

関西を拠点に、独自のノウハウを駆使した研修で様々な中小企業の組織風土改革に携わっている小堀健一氏。小堀氏による研修の評判は高く、自社の経営理念を現場に落とし込みたいと本気で考える経営者の駆け込み寺となっている。

同氏が開発した理念浸透のノウハウの一つ"「四重人格」フレームワーク"を理解すると、理念浸透も図りやすくなるという。そのポイントについて話をうかがった。(取材・構成:桐本真理)

※本稿は『[実践]理念経営Labo』(2022 SPRING 4-6、Vol.1)「理念浸透を図るカギは『四重人格』の理解にあり 成果や結果を『結ぶ』ために、互いを『ひも解く』」を一部編集したものです。

 

理念を押しつけていないか

「経営理念をつくったが、社員になかなか浸透しない」と悩む経営者は少なくありません。

話を聞けば、「誰からも賛同してもらえそうな立派な理念を確立する」「経営理念を学ぶ機会を設ける」「経営理念を人事や評価制度に取り入れる」といった取り組みをされているようですが、浸透される側(社員)のことをよく理解しないまま進めているのではないでしょうか。

それでは社員に理念を一方的に押しつけているだけで、理念浸透はうまくいきません。成果や結果に結びつけるには、まず社員の実情をひも解くところから始める必要があります。私が主宰する研修では、浸透させる側(経営陣)に対して、まず社員の境遇や心理状態を検証することを提案しています。

その検証はまず、社員の立場の理解から始まります。ひとくくりに社員といっても、細かく見ていけば、いろいろな境遇の人がいますよね。

経営理念が策定された創業時から入社している人もいれば、他社での勤務を経て中途入社で新たに経営理念に触れるという人もいます。

また、特にパート・アルバイト社員の中には、「その経営理念は私の仕事と関係あるの? お給料さえもらえればそれでいい」と思っている人も少なくないでしょう。多様な働き方が進む中で、経営者は社員それぞれへの理解を深め、きめ細やかに理念浸透を図る必要があります。

 

社員の反応には4パターンある

四重人格フレーム

理念浸透を図るうえでこのような前提があることを理解したら、次にやることは、社員一人ひとりの態度(表面)と心境(内面)の検証です。心境の検証とは、社員本人が、自分の主語で現在の心境を語れるかどうかを見ることであり、そうすることが社員それぞれへの理解を深めることにつながります。

経営陣から「理念浸透の実践を」と言われた社員の反応は、図の4つのパターンに分類することができ、私はこれを"「四重人格」フレームワーク"と呼んでいます。

「四重人格」とは、図の(1)~(4)の4つの人格に相当します。1人がこの(1)~(4)すべての反応を持ちえていることに注意すべきで、本人を取り巻く環境や状況に応じて、いかようにでも変化します。

たとえば、(4)の「表面:消極的、内面:消極的」の人は、経営理念の実践に対してやる気も興味もなさそうに見え、実際、本人のモチベーションも高くありません。

しかし、上司や取引先から褒められたり、プロジェクトが成功したりといったことがきっかけとなって、本人の仕事に対する自信が高まることもあります。そんなときに経営陣から「経営理念の実践を」と言われれば、態度(表面)においても心境(内面)においても積極的な(1)の状態になりえるでしょう。

このように人の態度や心境は流動的であるため、安易に(1)~(4)の個別の良し悪しで判断しないことが大切です。仮に(4)の消極的な社員がいるとしても、それを悪いと即断しない。今は(1)で積極的な人だって、つい最近までは(4)だったのかもしれないのです。「たまたま今は(4)なんだ。では、どうすればよいか」と、皆で考えていくことが大事です。

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