「20歳になれば、おとなになれると思っていた。30歳になったら、人生のいろんなことが叶えられると信じていた。ところが、30歳になっても、わたしはちっとも変っていない―――」
若いとき未来に思いをはせて大人な自分を想像してみることは誰しも経験があるのではないでしょうか。でも実際は?
画家のソン・ミファさんは20代、30代と過ごす中で「変わらない自分」に悩み、ある日ふと自分は、ただ自分なのだと気づきます。
環境が変わっても年齢が変わっても、「自分」を受け入れて大切にすること――。ソン・ミファさんの言葉は、ささくれた心に沁みこみ、忘れがちな温かさを取り戻してくれます。
※本稿はソン・ミファ著、桑畑優香訳『あなたを応援する誰か』(&books/辰巳出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
いちばん大切なのは「自分を愛すること」
20歳になれば、おとなになれると思っていた。
30歳になったら、人生のいろんなことが叶えられると信じていた。
ところが、30歳になっても、わたしはちっとも変わっていない。
むしろ焦って、うまくいかないことばかり。
いま歩いているのは進むべき道なのか。
そばにいるのは一体どんな人なのか。
わからないことばかり。
でも、もう背は伸びないから、わたしはおとなになったのだろう。
だったら、おとならしく生きようと思った。
世の中をあるがまま見つめるのではなく他人のフィルターを通してながめるようになっていた。
他人のものさしで自分を測って失敗するんじゃないかと、びくびくしていた。
感情をありのまま表すのは、他人に自分の弱点をさらけ出すことだと思っていた。
でもある日、ふと省みると、自分は、ただ自分なのだと気づいた。
わたしはいま、自分だけの道を一生懸命歩いている。
もう背は伸びないけれど、居場所を探す自分を見つめながら少しずつ本当のおとなになっていくのだろう。
まだとても不器用で、ときには人よりのそのそとしていて焦り、ときにはだだをこねる子どものようなわたし。
感情をストレートに表すのは怖いけど、このままの、こんな自分でもいいと思う。先はまだ長いから。
今はただ人生の途中にすぎないのだから。
やり直せばいい
はじめての場所に行くときは道を間違えてはいないかと、何度も地図を確かめる。
周りをよく見て、標識どおりに進み道を尋ねたりもするけれど、
それでも、とんでもない場所にたどり着いてしまうことがある。
そんなときわたしは、出発点に戻って道を探し直す。
方向音痴だからちょっとは焦ってまごつくけれど、また同じ道を進む過ちは繰り返さない。
次に選んだ道がまた間違っていたとしても、最初にいた場所に戻って、出直せばいい。
目的地までたどり着くのに時間が少し余計にかかるだけ。
やり直せば、それでいい。
苦労してやっと見つけた道ならば二度と迷うことはないはずだから。