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なぜ「ハラスメントに過敏な部下」が増えたのか? 今求められる指導の特徴

前川孝雄(株式会社FeelWorks代表取締役)

2023年05月11日 公開

なぜ「ハラスメントに過敏な部下」が増えたのか? 今求められる指導の特徴

パワハラの取り締まりが一層厳しくなる中で、上司に必要なのは部下との密なコミュニケーションだ。誤解を生まない関係性を築くために、管理職が注意すべきこととは何か。前川孝雄氏が解説する。

※本稿は、前川孝雄著『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(株式会社FeelWorks)より一部抜粋・編集したものです。

 

いま求められるのは「支援型」の上司

人的資本経営が叫ばれる時代に求められる上司像は、性悪説で部下を監視し管理しようとするのではなく、本人の意欲と可能性を信じ、その持ち味と能力を十分開花し発揮できるよう支援する、「支援型」の上司です。

支援型マネジメントの最初のステップは、部下との「相互理解」を深め、信頼関係の土台をつくることです。上司と部下が互いによく知り合うことで、相互に安心感と信頼感を持ちやすくなります。

そして、上司は部下に仕事を任せやすくなり、部下は任された責任の範囲で自律的に働けるようになるのです。

相互理解による信頼関係の形成は、法制化された職場のパワハラ防止(施行は、大企業が2020年6月1日、中小企業は2022年4月1日)にもつながります。

今や、誰が見ても明らかな暴力や暴言は減っていますが、問題はグレーゾーンです。上司が意図せず部下に行った言動のあやが、部下を傷つけたり萎縮させたりして、ハラスメント・リスクとなるのです。

部下がハラスメントに過敏になるのは、往々にして上司への信頼感がないためです。信頼する上司の言葉であれば、多少厳しく、言葉足らずでも、部下は「自分を思って叱ってくれているんだ」と真意を受け止めやすくなります。

誤解を生まないコミュニケーションが取れる関係づくりのために、上司は意識的に部下との相互理解を深めましょう。

 

部下への理解を深めるための「傾聴面談」のすすめ

部下との相互理解を深め信頼関係を築くためには、まず部下との対話を深める一対一の面談(1on1ミーティング)を行うことが効果的です。そこで、以下では、部下との相互理解を深めながら部下育成につなげていくための傾聴面談の準備とプロセスを解説しましょう。

この傾聴面談は、仕事の期初等(年度始め等)に設定するとよいでしょう。面談では、まず部下の仕事への思いやキャリア志向、また強み、弱みなどへの理解に努めます。

その上で、仕事の目的や意義を共有しながら、本人に任せる役割・仕事を決めていくための手がかりをつかみ、互いに確認するものです。面談は部下1人1時間程度で、上司は肯定的な姿勢で傾聴していきます。

 

部下のキャリアを概観した上で、会社や仕事への思いを聴く

部下との面談に先立ち、分かる範囲で本人の経歴や現在の担当業務、将来のキャリアの希望などを把握しておきます。面談では、それらを確認・補強する形で本人の話を聴き取ります。

経歴や担当業務で本人の将来に役立つ部分やさらに伸ばしたい部分などは、詳しく聴くとよいでしょう。本人の将来のキャリアへの希望も改めて確認していきます。

合わせて、部下が会社や仕事に抱いている満足感や充実感、また一方で不満や悩みに思うことを聴き取ります。プラスの内容や感想は話しやすく、マイナスの意見は打ち明けにくいものです。上司は、できるだけ率直な思いを語れる雰囲気づくりに留意しましょう。

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