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生き方

中村天風が語った「明るい人生を送れる人」が実践する3つの行為

池田光(経営コンサルタント)

2023年08月04日 公開

中村天風が語った「明るい人生を送れる人」が実践する3つの行為

経営者や一流アスリートをはじめ、メジャーで活躍中の大谷翔平選手にも影響を与え、精神的支柱となっている中村天風。そんな天風による「生きていく上で重要な教え」とはどのようなものなのか。人生を積極的なものに変える天風の教訓を、池田光氏が端的に解説する。

※本稿は、池田光著『キーワードでわかる! 中村天風事典』(PHP文庫)を一部抜粋・編集したものです。

 

学びとは何か

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<天風の言葉>
カリアッパ先生にこういうことを言われた。(中略)「おまえの知ってることは、ただもう値打ちのないことばっかりだ。(中略)もう少し馬鹿になれ」 (『信念の奇跡』)
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カリアッパ師との不思議な縁に導かれて天風が向かったのは、ヨーガの里であった。インドの東北部、ヒマラヤ連山の東の端に、標高約8600メートルのカンチェンジュンガがそびえる。その山麓の村里に辿り着いた。

村里ではカリアッパ師は一身に尊敬を集めていた。天風は最下級のスードラ(奴隷)として村に入れられた。スードラは家畜よりも下に位置づけられる。

遠くから師の姿を仰ぎ見ながら、師の教えを待った。しびれを切らした天風は、「いつになったら教えをいただけますか」と直訴する。しかしカリアッパ師は、「おまえには、学ぶ準備ができていない」と、答えるにとどまった。

それでもひれ伏す天風に、師はどんぶりの形をした器を指さすと、「この器に水を満たして運んできなさい」と命じた。

天風が器を置くと、次に、師は別の器に湯を運ばせた。そして、「水を張った器のなかに、湯を入れてみよ」と命じる。湯を注ぐまでもない。「いっぱい入った水のうえから湯を注ぎますと、両方こぼれてしまいます」と、天風は答えた。

次の瞬間、「器の水がおまえだ」と、師は一喝した。「おまえの頭のなかには、屁理屈が詰まったままではないか。いくら私の教えを湯のように注いでも、おまえには受け取ることはできない。馬鹿になれ」

馬鹿になれとは、屁理屈を捨てよ、ということである。どんなにカリアッパ師がヨーガの教えを説いても、屁理屈を通して解釈するなら学びにはならない。頭をカラッポにすることが、学ぶ準備だと天風は気づいた。

カリアッパ師は、「よろしい。生まれたての赤ん坊の心になって、今夜から私のところに来なさい」と優しく言った。この日から師のそばで新しい学びを始めていく。

 

生きていることは当たり前ではない

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<天風の言葉>
感謝に値するものがないのではない。感謝に値するものに気がつかないでいるのだ。(『運命を拓く』)
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当たり前だと思うところに感謝はない。当たり前だと思っていたことが、当たり前ではないと感じたとき、自然に感謝の言葉が出る。

睡眠から目覚めると、天風はいつも、「ありがとうございます」と感謝の言葉を口にした。なぜ目覚めたことに感謝したのか。「あなた方は生きているのが当たり前だ、目をさますのが当たり前だ、とこうなるんだ。当たり前じゃありませんよ」(『成功の実現』)と語る。

軍事探偵となって死線を経験したからこそ、生きていることは当たり前ではなかった。目を覚ませば生きているという事実は、「有り難い(有ることが難しい)」ことだったのだろう。

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