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「とらドラ!」作者・竹宮ゆゆこ「半年無休でも平気なほど、書くのが楽しい」

竹宮ゆゆこ(小説家)

2023年07月20日 公開 2024年10月21日 更新

「とらドラ!」作者・竹宮ゆゆこ「半年無休でも平気なほど、書くのが楽しい」


竹宮ゆゆこさんご本人

「とらドラ!」など多くの人気ライトノベルシリーズを世に出し、近年は『砕け散るところを見せてあげる』など一般文芸作品でもヒットを連発する、小説家の竹宮ゆゆこ氏。最新作『心臓の王国』の制作秘話と共に、デビュー20年目を迎えてもまったく衰えることのない竹宮氏の創作意欲の源を聞いた。(取材・構成:川端隆人)

※本稿は、『THE21』2023年8月号掲載「私の原動力」より内容を抜粋、取材内容をもとに再編集したものです。

【竹宮ゆゆこ】
小説家。1978年生まれ、東京都出身。2004年に「うさぎホームシック」で小説家デビュー。これまでのシリーズ作品に「わたしたちの田村くん」「とらドラ!」「ゴールデンタイム」(いずれも電撃文庫)がある。長編小説に『砕け散るところを見せてあげる』『あなたはここで、息ができるの?』(共に新潮文庫)など。最新長編『心臓の王国』(PHP研究所)が7月20日に発売。

 

人生は続くが、青春は終わる...濃密ではかない時間を物語に

最新作『心臓の王国』のテーマは何か、と聞かれたら「青春」と答えます。人生はその先も続いていくけれど、青春はすぐ終わってしまう。世の中には「何歳になっても青春を生きられる」という考え方もありますが、今回はそのはかなさのほうに焦点を当てたかったんです。

それに、コロナ禍のせいでここ数年、本来なら青春真っ盛りだったはずの歳の子たちが、ろくに遊びにも行けない状況でしたよね。それも気になっていて、青春の重要性みたいなものを物語として正面から扱いたい、という思いもありました。

書いていて楽しかったのは、主人公の鋼太郎と神威が、仲良く「せいしゅん」しているシーン。物語後半の怒涛の展開を知っているからこそ、そこまでは純粋に楽しい時間を二人にあげたくて。ただチャリンコで並んで走っているだけで心底楽しい、そんな時間を目一杯過ごしてほしくてたまらなかったんです。

この歳になると、高校生までの時間の「果てしなさ」に驚かされます。大学以降の人生の駆け足感に比べたら、その頃の時間はまるで永遠に続くかのような...。青春小説というと若者向けのようですが、実は「10代の時間の濃密さ」を重々理解している上の世代の方にこそ、響く作品だと思っています。その世代の方に向けた小ネタも、随所に盛り込んでいるんです(笑)。

 

「ターゲットに向けて書く」ことは昔も今もしていない

私は元々、「電撃文庫」というライトノベルのレーベルからデビューしました。それもあって「ラノベ」と普通の小説の書き分け方を聞かれることがときどきあるのですが、実のところ昔から、自分が面白いと思うものを書いているだけ。そこはずっと変わっていません。

何かの賞を受賞してデビューしたわけでもないので、「この評価基準に沿うように」という書き方をした経験がそもそもないんです。私としては、今も「とらドラ!」(06年〜)の頃と変わらないスタンスで書いているつもりでいます。

実は過去作を読み返すと、似たシーン、似た題材を書いているな、と感じることもあるんですよ。同じ人間が同じように全力で書いているんだから、変わらなくて当たり前か、とも思うのですが(笑)。

年齢を重ねて変わってきた部分があるとすれば、それは「恋愛がうまくいけば、物語は丸く収まる」という考えが薄れたことですね。以前は恋愛の絡むボーイ・ミーツ・ガールをよく書いていて、もちろんそれは物語を楽しむための「共通言語」として確立しているものだと思うのですが、最近はそれ以外の物語の可能性も模索してみたくなっているんです。

今作もブロマンスに仕上げましたが、恋愛が成就しなくても、主人公は幸せになっていいし、幸せになれるはず。この心境の変化は、年を経る中で生じたものかもしれません。

※ブロマンス:男性同士の友情を描いた物語

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毎日「お話」のことばかり考えていた幼少期

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