現在、様々な分野の企業が集客や売上向上のツールとしてインスタグラムを活用しているが、現場で働く運用担当者の多くが思い通りにならない現状に頭を抱えているという。
「フォロワーが増えない」「エンゲージメント率が悪い」「売上につながらない」...。
数多くの企業のインスタグラム運用を支援してきた、鄭泰玉(チョン テオギ)氏は、「目に見える数字を追いかけるほど、求める成果は得られなくなる」と語る。今、企業のインスタグラム運用に必要な考え方について、鄭氏が解説する。
※この記事は鄭泰玉著『パーパス・ベースド・インスタグラム 本気でブランドをつくりたい人のためのインスタグラムの教科書』(PHPエディターズ・グループ)の内容を一部抜粋・編集したものです。
数字を追いかけるほどインスタグラム運用は失敗する
インスタグラムを行う目的は様々ありますが、多くの企業はフォロワー数、リーチ数、保存数、売上への貢献度といった「数字」を目的の最上位に置いています。
ただ、近年は数字を追い求めるがゆえに、結果としてインスタグラム運用に失敗している企業が増えていると私は感じています。多くの人の心を動かすクリエイティブなアイデアは、数字を追いかけることでは生み出せません。むしろそれは、短期的なバイアス思考を招くことにつながり、クリエイティブなアイデアの阻害要因となってしまいます。
少なくない企業がそのことに気づいていないために、うまくいかない現状に対して違和感を覚えながら、その理由を明確に言語化できていないのです。
私はこれまで100を超える企業のご相談に乗ってきましたが、そのような日々を過ごすうちに、多くの企業が共通してインスタグラム運用にまつわる「根深い課題」を持っていることに気がつきました。
それは、「人として当たり前の感覚を失ってしまっている」ということです。
インスタグラム運用は人間同士のコミュニケーションに似ている
インスタグラムは、企業と顧客、双方向のコミュニケーションが大前提となるだけに、「つながりの質」が運用の成否を左右するカギとなります。
より良い「つながり」を作り出すためには、私達が生きる上で大切にしている「共感する気持ち、他者を思いやる気持ち、ワクワクを楽しむ気持ち」といった感情的要素が必要不可欠になります。言うなれば、インスタグラムにおける顧客とのコミュニケーションは、現実世界における人間同士のコミュニケーションとよく似ているのです。
ところが、「売上への貢献」「即効性のあるマーケティング」といったお題目を与えられた瞬間、人は当たり前のことを忘れてしまい、相手がどう思うかよりも、自分たちが何を伝えたいかばかりに関心を寄せ、顧客の声に耳を傾けることができなくなってしまうのです。
インスタグラムでも「パーパス」が大切になる
昨今、ビジネスの世界では「パーパス」という言葉を耳にすることが増えています。直訳すれば、意図・目的といった意味ですが、ビジネスの世界では企業や事業の存在理由、つまり「何のためにそれはあるのか?」といった文脈で使われています。
この言葉は企業経営にひも付けられることが多いため、社長や役員が使うものといったイメージを抱く人が多いでしょう。しかし、実際は現場で働く一人ひとりにも「パーパス」は深く関係しています。
「なぜ、自分たちはこの商品・サービスを作り、売っているのか?」
「そもそも、この商品・サービスは何のために存在しているのか?」
「これを使うと、お客様はどんな気持ちになるのか?」
日々数字に追われ、忙しく働いていると、このような本質的な問いについて考えることは難しいと思います。また、組織の中で「そもそも論」を展開すると煙たがられるという事情もあるかもしれません。
しかしながら、こうした本質的な問いの中にこそ、「フォロワーが増えない」「売上につながらない」といった課題の解決策が隠れていると私は考えています。
そのことを理解し、課題の解決策を見つけるための鍵となるのが、「パーパス・ベースド・インスタグラム(Purpose Based Instagram)」です。