社内のチームワークを高める施策というと、歓迎会や新年会、忘年会などのイベントや、終業後の"飲みニケーション"などが思い浮かびます。しかし、数多くの企業風土改革を支援してきた経営コンサルタントの加藤芳久さんは、「腹を割って話そうとしなくても、一人ひとりの本音が垣間見える"カードファシリテーション"の手法が効果的だ」と言います。
簡単にできてチームの関係性がガラリと変わるカードファシリテーションの方法を解説します。
※本稿は、加藤芳久著『売上を追わずに結果を出すリーダーが見つけた20の法則』(かんき出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
チームの関係性が変わるカードファシリテーション
私は「言いたいことを言える」のが、本当の意味でのチームワークだと思います。
相手を想うからこそ、時には厳しい意見を言わなくてはならない。私はこれを「厳愛」と名付けています。厳愛が通用する関係性にするには、まずお互いを理解するところから始めなくてはなりません。
私は、「カードファシリテーション」を実践すると、前と後でガラリとチームの関係性が変わることを発見しました。カードファシリテーションとは付せん=カードを意味し、カードを題材にして会議やミーティングで議論を活発にする手法です。
カードファシリテーションの方法は簡単です。
①参加者を役職などの階層ごとに分けてグループをつくる
②参加者全員に付せんを渡す
③ファシリテーターがテーマを出し、それに対する考えを一人ひとり付せんに無記名で書き込んでもらう
④付せんを模造紙やホワイトボードに貼り出して、全員で共有する
⑤感想を述べてもらう
これだけです。
一歩踏み込んだコミュニケーションが取れる
①は大事なポイントで、上司は上司だけ、部下は部下だけでやるのが基本です。
なぜなら、グループに上司が混じっていると部下は本音がなかなか出せないからです。上司も、部下がいると無意識に「ええかっこしい」スイッチが入ります。お互いが本音を出せるようにするためには、別々にやってもらうのが最良です。
ただし、それだけでは部下→上司の方向はあっても、上司→部下の方向がありません。一方通行ではなく、双方向に心を通い合わせるようになるためには、全員のカードを共有する必要があります。
ですので、上司の皆さんこそ率先して、カードファシリテーションを体験していただきたいと思います。
たとえば、新入社員にはテーマとして、「楽しみにしていること」「不安や悩んでいること」の2つのお題で付せんに書き込んでもらいます。仕事のことでもプライベートでも構いません。一言でいいので、付せんにつぶやいてもらう。それを模造紙に張り出して、みんなで共有します。
新入社員同士で共有すると、「目標を達成できるか不安」といった悩みや、「言葉遣いがちゃんとできるのか心配」「毎朝ちゃんと起きられるかな」といった不安の言葉を読むうちに、「みんな、同じことで悩んでいるんだな」と共感できます。
そこで、「私も目覚ましを2つセットしてるんだ」のように会話が弾み、一人ひとりを隔てている壁が消えていきます。
その付せんの一覧を、新入社員を教える立場の人たちにも見てもらいます。付せんに書き込むときは原則名前を書かず、無記名。誰が書いたのかわからないようにするので、心おきなく本音をつぶやけます。
上司は、「彼氏できるかな」「一人暮らしが不安」「自炊できるか心配」といったプライベートのつぶやきを読みながら、「新人はこんなことで悩んでいるんだ」と多くの気づきを得られます。
「自分も、新人の頃はこんなことで悩んでいたな」とか、「仕事以外のところでもストレス抱えているんだな」とさまざまな感情が湧いて来るでしょう。そのような本音を知ったら、自然と新入社員への接し方も変わっていきます。
「私も新人の頃は言葉遣いで散々注意されたから、大丈夫」と励ましたり、「新人の頃、起きたらお昼を過ぎてて青ざめたことがある」と失敗談を話したり。相手の本音を共有することで、一歩踏み込んだコミュニケーションが取れるようになります。