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仕事

飲み会は不要...上司部下の“建前の関係”が変わるコミュニケーション術

加藤芳久(株式会社ファイブベイ取締役・副社長 )

2023年08月25日 公開 2024年12月16日 更新

 

思いを共有することで距離感が一気に縮まる

弊社のクライアントである製造業の会社で、工場に勤務する新入社員と部長たちとでカードファシリテーションをやってもらったことがあります。

その会社は業績がよく、辞める人が多いわけではありません。ただ、工場では黙々と作業をするので、上司と部下との間に壁ができている状態でした。

このとき、新入社員には「楽しみにしていること」「不安や悩んでいること」、部長には「仕事の喜びややりがいを感じること」「不安や悩んでいること」というテーマで付せんに書いてもらいました。

それをそれぞれのグループで模造紙に貼ってから、場所をチェンジ。新人は部長のスペースに行き、部長は新人のスペースに行き、つぶやきを読んでもらいました。

新人の悩みには、「上司が忙しそうで話しかけていいのかわからない」「何度も同じことを聞きづらい」といったつぶやきが書いてありました。

一方、部長たちが悩みでつぶやいていたのは、「新人と話が合わない」「ジェネレーションギャップがあって、どう話しかけていいのかわからない」「自分の発言で嫌われるんじゃないかと思うと怖い」などなど。

それを読んだ新人たちは、「えっ、部長たちが、俺らにそんなことを思ってるの?」と驚いていました。部長たちも、「なるほど、自分が話しかけづらいオーラを出していたのかもしれない」と気づきを得たのです。

ベテランも新入社員も、「相手に話しかけたいけど、どう話していいのかわからない」という悩みは一緒。その思いを共有したとたんに、双方の距離感は一気に縮まりました。

 

場の空気感を共有することが大切

お題に対して一言ずつつぶやくのなら、グループLINEでもできるのでは、と思うかもしれません。

しかし、グループLINEだと誰が何を書いたのかがわかるので、上司が混じっていると部下は本音をつぶやけないでしょう。どんなに上司が「うちのチームは仲がいいから大丈夫」と思っていても、部下は無意識に言葉を選ぶはずです。

また、カードファシリテーションはみんなで集まって場の空気感を共有するところにも意味があります。そういう小さなところから信頼関係は築かれていくものです。

ただデジタルではないので、永久に残るということはありません。この消えるというところが安心材料にもなります。

付せんを貼った模造紙は、多くの企業ではそのまましばらく保管します。壁に貼ってみんなが読めるようにしている企業もあります。それもシェアリングの一つ。みんなの想いがこもった手書きの付せんを読むだけで、親近感が湧くからではないでしょうか。

歓迎会や新年会、忘年会などのイベントを通して、親睦を図ろうとする企業は多いでしょう。

私はそれだけでなく、カードファシリテーションをおススメします。

イベントでの交流は、それぞれのポジションから抜け出せないままなので、当たり障りのないことしか話せません。とくに部下は無意識に上司ウケがいいことを話そうとします。

カードファシリテーションを使うと、腹を割って話そうとしなくても、一人ひとりの本音が垣間見られます。どんなチームでも、チーム内に立ちはだかる見えない壁が一気に消えていくのがカードファシリテーションの法則です。

 

【加藤芳久 (かとう・よしひさ) 】
株式会社ファイブベイ 取締役 副社長 。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授 リーダー育成と組織変革を得意とする経営コンサルタント。情報経営イノベーション専門職大学客員教授。 大学卒業後、大手旅行会社、コンサルティング会社を経て、2016年に株式会社加藤経営を設立。日本ハム、三井ホームなどの大手企業を中心に、これまで200社以上に対して人財育成の体系化・組織風土変革を支援。台湾、シンガポールなど海外にも活躍の場を広げている。 2022年には、株式会社ファイブベイ(FiveVai)設立、取締役副社長兼CHO(チーフハピネスオフィサー)に就任。著書に『売上を追わずに結果を出すリーダーが見つけた20の法則』(かんき出版)などがある。

 

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