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医師が教える「満員電車のストレス」が軽減する朝の習慣

小林弘幸(順天堂大学医学部教授)

2024年01月04日 公開 2024年12月16日 更新

医師が教える「満員電車のストレス」が軽減する朝の習慣

出勤前、通学前の朝の時間を、バタバタと忙しなく過ごしていませんか? 高いパフォーマンスを発揮するには、余裕をもって1日をスタートさせることが重要です。医師の小林弘幸さんが自律神経を整えながら、快適な1日を過ごすための朝の習慣について紹介します。

※本稿は、小林弘幸著『「ゆっくり動く」と人生が変わる』(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「朝の過ごし方」が、その日一日の出来を決める

朝の過ごし方は本当に重要です。

なぜなら、朝の自律神経の状態は長く持続する傾向があるからです。つまり、朝の過ごし方がその日一日のみなさんの自律神経のバランス、ひいてはパフォーマンスや精神状態をも大きく左右するといっても過言ではないのです。

そして、ここで鍵となるのは「ゆっくり」です。

最近人気の朝ヨガや早朝禅は、自然と「ゆっくり呼吸」になり、その日一日を自律神経のバランスのいい状態で始められるのでおすすめです。ただ、休日の朝ならともかく、平日の朝にそんな時間はとてもない、という人がほとんどでしょう。

「ゆっくり」といっても特別なことをやる必要はないのです。毎朝やっていることを少し「ゆっくり」を意識してやるようにする。たとえば、少し早めに起きて、ゆっくり朝食をとり、ゆっくり新聞を読み、ゆっくり歯を磨く。それだけで、みなさんの自律神経は整い、その日一日がうまくいく方向に変わるのです。

逆に、朝、ギリギリに飛び起きて、朝食もとらずに、バタバタと出かける。そうすると、その人の呼吸は乱れ、自律神経のバランスもかなり乱れてしまいます。

そして、一度乱れた自律神経は、よほど意識してリカバリーしないと尾を引きますから、その人は、その日一日をずっと自律神経のバランスが乱れた状態で、バタバタと焦りながら過ごすことになってしまいます。

そうなると、頭も五感の働きも鈍くなって仕事などのパフォーマンスが上がらないばかりか、血流が滞って血がドロドロの状態になるので、肉体の健康という面から見ても非常にマイナスになってしまうのです。

 

「ゆっくり歩く」で、一日を快適にスタートする

歩き方というのは、じつは、その人の自律神経のバランスが如実に出るものです。さらに言えば、歩き方ひとつで、その日一日、すべてが変わってしまいます。

ですから、もしもみなさんが、「今日をすばらしい一日にしたいな」と思われるなら、とりわけ朝の歩き方を意識していただきたいのです。

まず、背筋を伸ばして、肩の力を抜きます。それから、頭の中心がまっすぐ空につながっているような意識で首を伸ばし、脚ではなく、おへそから前に出すような気持ちでゆっくり一定のリズムで歩く。これが、理想の歩き方です。

なぜなら、この歩き方をすると、まずは気道がストレートになります。すると、呼吸も自然にゆっくり深くなり、副交感神経の働きが上がって、自律神経のバランスが整い、結果、血流もよくなり、気持ちまですっと爽やかに落ち着いてくれるからです。

ですから、「今日はちょっと調子が悪いな」「何か気分が晴れないな」と思ったときほど、目線を上げて、この理想の歩き方を意識してみてください。

調子が悪いからといって、うつむいて背中を丸めて歩いていると、気道が狭まり、呼吸が浅くなり、自律神経のバランスが乱れて血流が悪くなり、心も体もどんどん悪いほうに向かってしまいます。

また、「時間がない」と、焦ってバタバタ歩くのも禁物です。バタバタ歩くことによって、残念ながら、その日一日の自律神経のバランスはかなり悪いものになってしまうからです。

つまり、美しい姿勢でゆっくり一定のリズムで歩くということは、一日を快適にスタートできるだけでなく、その日一日の成功・不成功さえ左右する大事なことなのです。

ですから、みなさんもぜひ、この美しい姿勢での「理想の歩き方」を日常生活の中で意識していただけたらと思います。美しく歩くことは、美しい人生を開いてくれる鍵でもあるのですから。

 

満員電車を不快にしないコツ

自宅のドアをゆっくり開けたら、「ゆっくりと美しく、一定のリズムで」を意識して歩きだします。このときバタバタと歩かなくてもいいように、やはり朝は少し早めに起きたいものです。

また通勤や通学の場合、意外と大切なのが定期券や財布をすぐ取り出せるようにしておく、ということです。駅に着いたとき、電車の時間が迫っていたりすると、どうしても早足になります。このとき定期券や財布がすぐに出てこなかったりすると、あせって完全に自律神経のバランスが乱れてしまうからです。

通勤や通学といえば、満員電車も無視することのできない問題です。満員の電車やバスに乗ると、当然、非常にストレスがかかりますから、それだけで副交感神経の働きが下がり、極端に交感神経優位になってしまうからです。

けれども、この満員電車の不快感を軽減することはできます。

たとえば、同じ満員電車に乗るとして、バタバタと急いで飛び乗ると、呼吸が乱れて、自律神経のバランスもさらに乱れてしまいます。暑い夏の日などは汗がどんどん出てきてしまいます。

一方、時間に余裕を持って駅に着き、ゆっくりと乗るようにすると、自律神経のバランスはそれほど乱れません。不思議と汗もそれほど出てこないのです。

では、満員電車に乗ってからはどうでしょう。

「身動きひとつできなくなるのだから、ゆっくりを意識してもあまり意味がないのでは?」

そんなことはありません。「ゆっくり」という意識を持って立っているのと、せかせかとあわてた意識で立っているのでは、同じ満員電車の中で過ごしていても立ち方がまったく違うのです。

ゆっくりの意識で立っていると、自律神経のバランスが整って、周りもよく見えていますから、カバンの位置ひとつを直すのでもゆっくり落ち着いて動かすことができます。そうすると、周りに迷惑をかけることなく、いいポジションにカバンを持ってくることができます。

一方、せかせかとあわてた意識で立っていると、自律神経が乱れて、周りが見えなくなっていますから、カバンを動かすときもついバーンと乱暴にやってしまう。そうすると、それがひどいケースに発展すると、他の乗客とトラブルになってしまったりするのです。

本当に不思議なもので、同じ満員電車に乗るという行為でも、一瞬、「ゆっくり」を意識するのとしないのとでは、その人のパフォーマンスの良し悪しがまったく変わってしまうというわけなのです。

意識ひとつだけで、人間はこれだけ大きく変わります。

そして繰り返しになりますが、勝負はなんといっても朝です。朝、「ゆっくり、早く」を意識して実践できた日は、きっと、その日一日全体がスムーズにいい方向にいくはずです。

 

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