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稼ぐ力は全国トップクラス…決算書にみる「さいたま市の財政」の現実とは?

竹内謙礼(有限会社いろは代表)

2023年11月08日 公開

 

自治体では数字の見方が真逆

しかし、この経常収支比率の話は、自治体に置き換えられると数字の見方が"真逆"になる。民間企業は利益の極大化が経営のあるべき姿であり、利益中心に考えるのが基本となる。

一方、行政は地方自治法によって規定されている項目以外の借金が禁止されているため、歳出と歳入は単年でバランスを取らなくてはいけない。そのため、経常収支の比率が低ければ低いほど自由に使えるお金が多くなり、財政にゆとりがあることを意味することになる。

先ほどのサラリーマンの家計にたとえると、食費やローンの返済額の割合が低ければ低いほど家計が楽になるのと同じ意味合いになる。そのため、民間企業での経常収支比率は100%を超える必要があるが、一方で、地方自治体は100%よりも限りなく低いほうが、経済構造の弾力性が高いので"良好"という意味になる。

ただし、市政の発展や市民サービスを向上させたり、事業を早く、多く進めるために補正予算を組み、税金を有効に活用するなど、100%よりも低ければよいというものでもなく、バランスが必要という議論もある。

さいたま市の2021年度の経常収支比率は「92.5%」となっており、財政状況は健全といえる。総務省が発表した政令指定都市の経常収支比率の平均は92.7%となっており、その点から見てもさいたま市の財政は、民間企業でいえば「平均より少し良い」という部類に入る。

また政令指定都市20都市の中で、さいたま市の市民1人当たりの市債残高(国や金融機関など外部からの借入金)は2番目に低く、自主財源のゆとりを示す財政力指数は3番目に高い。これらの数字からも、さいたま市が他の自治体と比べて財政状況が健全であることが分かる。

ちなみに、政令指定都市の経常収支比率はすべて100%を切っており、特に大阪市は地方税や地方交付税などの経常一般財源が大幅に増えたことで経常収支比率がマイナス9.2ポイント好転し、85.1%と良好な数字になっている。

一方、北海道夕張市の経常収支比率は118.9%という状況であり、この数字からも地方都市の財政の厳しさを窺い知ることができる。

 

街の人口が増える=企業の売上が増える

さいたま市の収支のバランスが取れていることは、経常収支比率から理解することができた。次に考察しなくてはいけないのが、このお金がどこから入ってきていて、どこに投資されているかである。

さいたま市の一般会計の歳入を見ると、「市税」が41.9%を占めている。さらにさいたま市の普通会計決算カードの市税の内訳を見ると、8割以上が「個人市民税」と「固定資産税」であることが分かる。

これらの数字からも、さいたま市の財政の多くは市民の「税金」で成り立っていることが理解できる。つまり、さいたま市の「売上」は、市民の納める税金で賄われており、その市民の「数」が増えれば増えるほど、税収が上がることになる。

さいたま市において「人口を増やす」ということは、企業で言う「売上を増やす」という意味に近いところがあり、自治体にとっての生命線であることが分かる。さいたま市は財政力指数が政令指定都市中3位と、「稼ぐ力」がトップクラスの市である。

人口を増やさなければ、当然、歳入が減っていくので、財政が圧迫されることになる。民間企業でいえば、売上が下がり、設備投資にも採用にもお金をかけられず、働いている従業員にボーナスが出せなくなるのと同じことになる。

そのような視点で考えると、さいたま市がやるべきことは、「人口を増やすこと」が都市計画の中心になる。多くの人が移住してくるような魅力のある街をつくる必要があり、住んだ人が出て行かないように、住民に対するサービスを充実させていかなければいけない。

日本政府が少子高齢化対策に必死になっているのも、このような事情が背景にある。また、地方都市で人口が減少している街が、Iターン、Uターンで移住者を増やすことに力を入れているのも、「人口減=売上減」という危機感から行っている施策といえる。

 

大阪市が統合型リゾート(IR)に力を入れる理由

他の政令指定都市の普通会計決算カードも検証したところ、人口の多い政令指定都市の場合は、おおむね個人の市民税と固定資産が市税の大半を占めている。

しかし、例外なのが大阪市である。

市町村民税が約3277億円に対し、法人税が1083億円となっており、市町村民税の約3分の1を法人税が占めている。つまり、大阪市には多くの企業が集まり、法人税によって大阪市の「売上」が成り立っているのであれば、大阪市がやるべきことは、住民を増やすことに加えて、法人企業を誘致し、それらの企業の売上を伸ばすことが、財政を豊かにする政策ということになる。

大阪市が関西国際空港からのインバウンド客を増やす施策や、統合型リゾート(IR)に力を入れて国内外から人・モノ・投資を呼び込もうとしているのは、決算書の数字からも正しい政策の打ち出し方といえる。

一方、さいたま市において法人税は市民税のうちの7%弱しかなく、これが今のさいたま市の弱点ともいえる。しかし、裏を返せば、さいたま市の法人税にはまだまだ大きな伸びしろがあり、企業や工場、ホテルなどのサービス業を市内に誘致することは、歳入を増やすことに直結するため、今後、力を入れていくべき政策のひとつといえる。

 

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