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稼ぐ力は全国トップクラス…決算書にみる「さいたま市の財政」の現実とは?

竹内謙礼(有限会社いろは代表)

2023年11月08日 公開

稼ぐ力は全国トップクラス…決算書にみる「さいたま市の財政」の現実とは?

しばしばニュースで報じられる自治体の財政破綻。だが、じつは自分の街も大赤字だったと気づくのは、往々にして住んでみてからの話である。

ふとしたきっかけでさいたま市に興味を持ち、街の実態を調べはじめた経営コンサルタントが、民間の企業経営と比較しつつ「自治体の決算書」を読み解く。

※本稿は、竹内謙礼著『翔んだ!さいたま市の大逆転』(PHP研究所)を一部抜粋・編集したものです。

 

誰でも閲覧できる自治体の決算書

統計データやお客様のアンケート結果などは、見せ方や表現を工夫すれば、誤魔化しがきくところがある。発表した人の都合の良いようにデータを見せることはいくらでも可能であり、数字を使った情報のコントロールは、さほど難しいことではない。

一方、企業の決算書の数字は、誤魔化しようがないところがある。経営者がいくら「儲かっています」と言っても、決算書を見れば儲かっていないことが明らかになることは、コンサルティングの現場ではよくあることである。

ビジネスモデルのどこに問題があり、経営戦略の何が間違っているのかを把握するには、決算書を読み解くのが手っ取り早い。

全国の市町村では、ホームページ上で決算データが公開されている。民間企業とは数字の出し方に若干の違いはあるものの、およそ「こんな財務状況なんだ」というのは、誰でも容易に閲覧することができる。

 

さいたま市の財政状況は健全なのか?

最初に着目したのが「経常収支比率」である。企業の資金繰りの実態を示す指標のひとつであり、民間企業でいえば、1年間の企業の資金収支を評価するものである。経常収入を経常支出で割ったものに100を掛けたものが、この数字になる。

この話はサラリーマンの給与にたとえると分かりやすい。給与が「売上」で、生活費が「販管費・経費」と考えれば、生活費が給与を上回れば、家計が破綻するのは明らかである。

もちろん、会社経営はサラリーマン家庭のように毎月決まった売上が立てられるものではなく、支払いも数カ月先のものもあるので、単純に計算できるものではない。

しかし、収入を支出が上回れば、家計が回らなくなることは簡単に理解できることであり、これを数字で表したのが「経常収支比率」ということになる。

たとえば、経常収支比率が「200%」といえば、収入が支出の2倍あるから安泰ということになる。その逆で、経常収支比率が「50%」になれば、収入が支出の2分の1しかないので、家計はかなり苦しい状況ということになる。

収支がプラスであれば、収入のほうが多いのでフローがうまく回っているということであり、マイナスであれば、支出のほうが多いのでフローに問題があるということになる。

先ほどの家計の話にたとえれば、夫の月収が30万円しかないのに、ギャンブルに50万円使っていたら、妻に「いい加減にしてよ!」と怒られるのが、いわゆる"フローに問題がある"ということになる。

この経常収支比率だが、一般的には民間企業で100%を超えるのが理想といえる。100を切るとフローがちゃんと回っていないことを示し、95%を切ると経営自体が厳しいと判断する人も少なくない。

さらに95%以下が3期続くと、「これはちょっとヤバい会社だな」と思われてしまうこともあり、場合によっては金融機関がお金を貸すことを警戒してしまうケースもある。

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自治体では数字の見方が真逆

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