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生き方

自信のない僕が“陽キャの趣味”に手を出した結果、船上でびしょ濡れになった

横川良明(ライター)

2024年01月05日 公開

自信のない僕が“陽キャの趣味”に手を出した結果、船上でびしょ濡れになった

物心ついた時から自己肯定感が低く、その生きづらさをなんとかしようと日々もがいてきたライターの横川良明さん。巷にあふれる「自己肯定感を高める方法」を片っ端から試すも、いつも失敗。ついには「陽キャのなかに飛び込む」という荒行にまで手を出すことに......。果たしてその結末は?!

※本稿は、横川良明著『自分が嫌いなまま生きていってもいいですか?』(講談社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

必死で「陽キャになろう」としていた20代

結局、僕のこの自分嫌いの原因を辿っていくと、根っこにこびりついているのは人に対する苦手意識だ。人にどう見られているかが気になるとか、人に不快に思われたらどうしようとか、他者からの目線にオロオロとうろたえるあまり、自分を責めたり、とる行動が全部裏目に出て自己嫌悪に陥ってしまう。

ならば、もっと対人スキルを磨けば、堂々と胸を張って生きていけるのではないか。そんな仮説を実行してみたこともあった。

真っ先に思い出すのは、20代半ばの頃。僕はなぜか陽キャキャンペーンなるものを張っていた。当時の言葉で言うなら、リア充になろうというやつである。いかにも陽キャがやるような趣味にトライしてみたり、陽キャが集まるような場所に出かけてみたり。

1個の腐ったミカンが箱の中のミカンを腐らせてしまうのであれば、逆に大量の陽キャに囲まれれば、陰キャの僕も陽キャに染まれるかもしれない。朱に交われば赤くなる。郷に入っては郷に従えである。

 

陽キャの中で明らかに浮いている僕

ということで、陽キャの友達にお願いし、クラブに連れていってもらった。よくわからないけど、あの頃の僕はクラブに行きさえすれば陽キャになれるという、クラブからすると荷が重すぎる思い込みをしていたのだ。

ただ、実際のところクラブは本当にギラギラとした男女の集まりで、やたらと低音の効いた音楽に合わせて、知り合いでもない男と女が密着して踊りまくっていたので、クラブ=陽キャは、ある程度、統計に基づいた偏見であったようにも思う。

朱に交われば赤くなる。ここで僕も腰をくねらせ踊り狂えば、きっと陽キャとパーティーピーポーな夜を過ごせるに違いない。そう意気込んでダンスフロアへ降り立った。

が、合コンさえままならない僕がそんなクラブのノリについていけるわけがなかった。確かに朱に交われば赤くなるだろうけど、僕が黒ければ、どんな朱も太刀打ちできない。なんというか、種族が違うのだ。妖艶に全身をしならせる陽キャたちに対し、僕のそれは伝説の井森ダンスに近似値だった。明らかに浮いている。

実際、陽キャたちは僕のことなんて気にしていないのだろうけど、場違い感がすさまじくて、フロア中にいる全員から後ろ指を差されているようないたたまれなさがあった。気だるい熱狂につまはじきにされた僕は、隅っこでチビチビと酒をあおる。

それを見た友人が「踊ろうよ」と腕を引っ張ると、「こんなところに集まるやつはみんなビッチだ」と悪態までつき出すありさま。自分から頼んでおいてこの言い草である。つくづく性格が悪すぎる。

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