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若手社員がどんどん辞めていく原因をつくる「管理職の特徴」

井上洋市朗(株式会社カイラボ代表取締役)

2025年03月21日 公開

若手社員がどんどん辞めていく原因をつくる「管理職の特徴」

現在、50%以上の企業で人手不足が起きており、1人の求職者に2つ以上の求人があるというデータが出ています。人手不足の中で、若手の離職問題に頭を抱えている企業も少なくないでしょう。若手の離職を防ぐために、管理職に求められることとは? 書籍『離職防止のプロが2000人に訊いてわかった! 若手が辞める「まさか」の理由』より解説します。

※本稿は、井上洋市朗著『離職防止のプロが2000人に訊いてわかった! 若手が辞める「まさか」の理由』(秀和システム)を一部抜粋・編集したものです。

 

上司には「未来を描く力」が求められている

変化が激しく未来の予想が難しい時代だからこそ、リーダーには未来を描く力が求められています。

産業能率大学研究所が、5年に1回おこなっている「ミドルマネージャーの能力開発ニーズ調査」によると、2018年から2023年で、上位項目に大きな順位変動が起きています。まずは、2023年の1位~5位をご紹介します。

1位 部下を育成する力
2位 職場の構想を描く力
3位 部下の課題を形成する力
4位 部下を率いていく力
5位 事業戦略を立案する力

このうち、前回の2018年調査から大きく順位を上げているのが、2位の「職場の構想を描く力」と、5位の「事業戦略を立案する」です。

2018年:12位 → 2023年:2位 職場の構想を描く力
2018年:17位 → 2023年:5位 事業戦略を立案する力

職場の構想を描く力とは、言い換えれば職場の未来を描く力です。

ミドルマネージャーとは中間管理職のことなので、企業は中間管理職に「職場の未来を描き、事業戦略を立案すること」を求めているわけです。

でも、残念ながら未来を描ける中間管理職は少ないのが実情ではないでしょうか。管理職研修の場面で、先ほどのミドルマネージャーの能力開発ニーズの調査をお見せすると、受講者から反発を受けることがあります。

「未来を描くとか、事業戦略を立案するのは、経営者の仕事のはず。私たち中間管理職に、そんな役割まで押しつけないでほしい」というご意見です。言いたいことはわからないでもありません。

今までは経営陣が考えた方針を現場に伝えて、現場を管理していくのが仕事だったのに、突然「未来を描け」と言われても、困惑してしまうのも無理はないでしょう。

また、なかには、自分なりに未来を描いて上司に具申したが、相手にされなかった経験がある方もいるかもしれません。それでも、職場のリーダーである管理職は、未来を描かなくてはいけません。未来を描けない、未来を語れないリーダーに部下はついていきませんし、未来を語ることは、部下の成長予感に直結するからです。

メガバンクを1年半で退職したDさんは、銀行員の仕事はきついと思っていたものの、実際には残業も多くなく、パワハラもなく、仕事自体はそれほどきついとは思わなかったそうです。

その代わりきつかったのが、毎晩のように先輩たちから聞かされる仕事の愚痴、悪口、陰口でした。寮生活のため、ほぼ毎晩のように寮の先輩たちによる飲み会が開催され、愚痴を聞かされます。そのときのことを、Dさんは次のように語っています。

「寮が支店の近くだったので、寮に帰るとほぼ毎日先輩たちと飲み会なんですが、基本的に会社の愚痴を聞かされるか、説教されるかの時間でした。今から思うと、もっと反抗してもよかったかもと思いますが、当時はずっと我慢していました」

Dさんが退職を決意するのは、仕事以外の出来事が決め手でした。夏休みに再会した大学時代の友人と、2人でキャンプに行ったとき、友人が仕事のことをすごく楽しそうに話していて「俺は今の会社が好きだから、もっと会社の成長に貢献したい」などと話していたそうです。

「それを聞いたとき、自分にはまったくそんな感覚はないし、まわりを見ても、そんな気持ちで仕事をしている人はいないと思いました。上司も、会社の将来のことを考えているような発言なんてしないし、みんな仕事はつらいけど給料はいいから働いている感じです。

それでキャンプから帰ってきた翌日、上司に『辞めます』と伝えました」

実はDさんのように、周囲に仕事の愚痴を言う人ばかりのときに、仕事に熱い人(Dさんの場合は友人)を見て退職を決意するケースは、大企業・有名企業の早期離職で頻繁に見られます。

意外に思う方もいるかもしれませんが、今の若手社員は、リーダーが熱く未来を語る姿を求めているのです。

 

若手社員の9割は「アツい上司・先輩」と働きたい?

実は今どきの若者世代は、仕事に対して熱意のある上司を求めています。

人材系の会社が20代の求職者を対象に「『仕事に熱意のある上司・先輩』と働きたいですか?」とアンケート調査を実施したところ、なんと95.4%が「働きたい」または「どちらかといえば働きたい」と回答しています(株式会社ジェイック『仕事に熱意のある上司・先輩」に関するアンケート』2024)。

熱意のある上司のもとで働きたいという意見が大多数である一つの理由は、残念ながら熱意のある上司が少ない実情の裏返しとも考えられます。

また、同調査では『仕事に熱意のある上司・先輩』のイメージを上位2つまで選択できる形式で聞いています。
結果は「部下、後輩の育成を大切にしている」が72.3%で断トツの1位です。続いて「成長意欲があり、自己啓発を続けている」が38.7%の2位。「チームの成果を大切にする」が29.0%で3位となっています。

部下育成に熱心な上司のもとで働きたい20代が多いのは、早期離職の3大要因のうちの2つ、存在承認(=自分のことをしっかり認めてもらいたい)と、成長予感(=この組織でなら成長していけそうな気がする)を満たしたい人が多いからではないでしょうか。

そして人材育成も、未来を構想することも、管理職が成長意欲を持って自己啓発を続けることも、いずれも組織の未来をつくっていくことにほかなりません。

企業からも部下からも、管理職は「組織の未来をつくる」ことを期待されていると言えます。言い換えれば、組織の未来のつくれない上司のもとでは、若手社員はどんどん辞めていくということです。

 

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