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超多忙でも“1日1冊の読書”を続ける人のシンプルな方法

井上新八(ブックデザイナー)

2024年05月17日 公開 2024年12月16日 更新

超多忙でも“1日1冊の読書”を続ける人のシンプルな方法

圧倒的な仕事量・質・実績で、業界では知らない人がいないブックデザイナー・井上新八さん。井上さんは多忙ななかでも毎日1冊必ず読書し、感想をSNSに投稿しています。なぜそんなことが可能なのか? 井上さんの読書の習慣に迫ります。

※本稿は『「やりたいこと」も「やるべきこと」も全部できる! 続ける思考』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。

 

「1日1冊本を読む」という難関を攻略する

本を読む習慣がなかなか身につかない......。ちょっとした悩みだった。時間をつくって読もうとしても、なかなかそんな時間はつくれない。買った本もデザインした本も、積み上がっていって、完全に積ん読状態。

このままじゃダメだと思って、2021年の1月に今年やりたいこととして「週に1冊本を読む」ことを目標にしてみた。「本づくりを仕事にしているんだし、週に1冊くらいは読もう!」と。

そこそこ時間に余裕のある日曜日に読むことにして、日曜は少し早起きして朝1冊、本を読む。とりあえずそう決めてみた。

1月は毎週読んだ。週1冊で4冊読んだ。ひと月で4冊。悪くはない。順調に続いていきそうだったんだけど、2月に入って1週間読むのを忘れてしまった。そしてその翌週にはどうでもよくなっているのに気づいた。

「無理に読まなくてもよくない?」まさにその通りなんだけど...ああ、このままじゃ、続かないな。そう思ったので週に1冊というルールをやめた。

週に1冊をやめて、1日1冊読むことにした。2021年2月21日のことだ。突然、そう決めてみた。かなり無理矢理だけど、毎朝いつもより少しだけ早起きして、朝のルーティーンをこなす速度を少し上げて、時間をつくることにした。

 

・続けるなら、毎日やる。

やはり「継続の秘訣はこれしかない」とよくわかった。毎日やること。これこそが「続ける」ためにもっとも必要なことなのだ。

 

・ほどよい負荷をかけてやる

1日1冊は、かなり大きな負担だ。1日1冊はそれなりに大変ではあるんだけど、意外に続けるのに大切なことって、ほどよく負荷をかけるってことなのかもしれないとも思った。簡単すぎず、無理しすぎないくらいのほどよい負荷。「わーちょっときついかも」くらいの目標設定。毎日1冊読むにあたってルールをなんとなく決めた。

○とにかく最後まで読みきること
○気になった箇所はメモを取ること
○1冊で2つ以上は人に話せるネタを探すこと

これくらいのちょっと負荷の大きいシンプルなルール設定。なかなか大変ではあるんだけど、負荷が大きい分、「やった」という達成感が大きい。

1日1冊は、ちょっときつくて、むしろちょうどいい。難易度が高すぎて、どうでもよくならない。できない日はやらなきゃいいだけの話なので、ちょっと無理すりゃできるじゃんってくらいの目標設定にして、負荷をかけてやるのが、難しいことを習得するのにはいいのかもしれない。

 

・考えないでやれるように自動化する

だいたいひと月くらい続けてみて、改めて気づいたことがある。意志の力には限界があるということ。本を読むのは楽しい。学びにあふれている。意外な本から意外な学びを得ることもあるし、読書が「超楽しい!」ってなってきた。

「超楽しい!」には違いないんだけど、毎朝1冊読む時間を確保するのは、やはりなかなか大変で、いざ実行するとなると、それなりにハードルが高い。いちいち毎日「さー読むぞー」って気合いを入れるのはやっぱりしんどくなる。「やる気」とか「意志の力」で続けるのは限界がある。

こういうめんどうなことを続けるために必要なのは、意志の力とは関係なくやれるように行動を「自動化」することだ。

自動的に本を読むアクションが実行できるように、具体的にやる順番を決めて、何か別のアクションとセットにする。毎日やることをいくつか決めておいて、めんどうなアクションは、いくつか簡単なアクションの最後に組み込んで、別の簡単なアクションとセットでやるようにする。

朝のルーティーンの最後に「本を読む」を組み込んだ。そして「本を読みはじめる」前に「コーヒーを淹れる」、このアクションをセットにした。「前置きをセット」する考え方だ。

「よし、本を読むぞ!」って気合いを入れるのではなく、コーヒーを淹れたら、飲みながら本を読む流れをつくった。「この2つはセット」と決めてしまう。

もちろんそんな簡単なことではないんだけど、コーヒーを淹れるというアクションを挟むことで、それがスイッチになる。これを2年以上続けた今では、もうコーヒーを淹れるアクションはいらなくなった。自然に本を読むことが自動化した。

 

・読みはじめたら読みきる

1ページ読みはじめてしまえばあとはなんとかなる。読みはじめたら、あとはもう読みきるだけ。最初から最後まで全部読むことにしている。「やる気のスイッチ」は、やれば勝手に入る。

読むのはたぶんそこそこ速いほうだと思うけれど、本のタイプにもよる。速読はしない。どうせすぐ全部読むので目次は読まない。それが唯一の時短。

たまに情報が多いタイプの本は速読的に読むこともあるけど、基本的にはしっかり読み込むことにしている。1冊読むのにかかる時間はだいたい1時間半か2時間くらい。薄くて文字が少ない本なら30分で読み終わるのもあるし、分厚い本だと3、4時間かかることもある。

読み終わるまでは中断しないことにしているので、ときどき5時間も朝から時間を使ってしまって仕事が大変なことになる。「1時間くらいで読めそうだな」と思って、読みはじめたら3時間かかったとかざらにある。ただ大事な仕事はすでに片づけてあるので、それで焦ることはない。じっくり読んで得たものが多くてむしろラッキーだったと思うようにしている。

 

・1日で読みきれない本は「チリツモ」する

1日で読みきれない超長編をどうするか問題。これは毎日少しずつ読むことで解決した。少しずつだけど、1,2ヶ月かければ読み終わる。チリツモ。これもしっかりタイミングを決めてやる。

1日1冊読む読書に向き合う前に、コーヒーを淹れる時間を使って読むことにした。お湯を沸かして、コーヒーを淹れ終わるまでの時間。5分とか、長くても10分。その間じっくり時間をかけてコーヒーを淹れるので、コーヒーも美味しくなる。一石二鳥だ。1年目の最後のほうではじめたことだけど、これで無事解決した。

例えば600ページくらいある小説『テスカトリポカ』(佐藤究 著、KADOKAWA)。コーヒーを淹れている時間でチリツモして数ヶ月で読みきれた。少しずつだけど毎日やれば確実に先に進む。
これも慣れてきたら「コーヒーを淹れる」はいらなくなった。今日読む1冊を読む前に、今は2冊、何ページかずつチリツモ読書をしている。

 

・どうしても読む時間がない日の対策をする

仕事が忙しすぎてまったく時間がない日や、母の通院の付き添いで朝から病院に行かないといけない日など、あまり読んでる時間がない日のために、すぐに読み終わりそうな本も何冊か用意しておく。30分以内で1冊読みきれそうな本。

忙しくて時間がなくても「読まない」という選択肢はできるだけ使わない。「例外の日をつくらない」というのが継続のために最も大切なことだったりする。「今日は忙しいからパス」こういう例外の日をつくってしまうと、それが慣例化してしまう。

工夫してどうにかできそうなときは、事前に策を打っておく。本当の本当にどうしようもないときもあるので、そのときのために1冊余計にストックをつくっておくというのも策のひとつ。

どこかのタイミングで1冊余計に読んでおいて、表紙写真も用意して、Xに投稿する用のメモも書いておく。これをいざというときの最後のカードとしてとっておく。とにかく1日1冊のルールを絶やさない。

 

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