1. PHPオンライン
  2. 仕事
  3. 優秀なコンサルタントが実践する「どんな場面でも評価される」方法

仕事

優秀なコンサルタントが実践する「どんな場面でも評価される」方法

大石哲之(作家、投資家)

2024年05月22日 公開

優秀なコンサルタントが実践する「どんな場面でも評価される」方法

コンサルティング会社の出身者には、業界や職種を問わず、さまざまな場所で活躍している人が多くいます。つまり彼ら、彼女らが身につけているのは、どんな場面でも活躍できる、普遍的な仕事のスキルなのです。優秀なコンサルタントたちが口をそろえて、「ビジネスをする上でいちばん大事なもの」であると答えた、シンプルかつ最も重要な考え方とは何でしょうか?

※本稿は『コンサル一年目が学ぶこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。

 

相手の期待を超え続けることが「ビジネスの基本」

少々高度なお話をしましょう。高度ではありますが、非常に重要なことです。

「ビジネスをするうえでいちばん大事なものは何か?」こう問われたら、あなたはどう答えますか?やりがいとかお金とか、そんな個人的なことを聞いているのではありません。どうしたら、常に評価と信頼を得られて、次にも仕事がくるようになるのか? ということです。

取材を通して、多くのコンサルタントにこの質問をしてみたところ、なんと全員の答えがずばり一致しました。ひょっとしたら、あまり聞き慣れないことかもしれませんが。

それは、「相手の期待を超え続けること」です。

相手の期待を超え続けることがビジネスの基本。「ビジネスというのは、突き詰めると、相手の期待を、常に超え続けていくことにほかならない。顧客や消費者の期待を超え続けていくこと。上司の期待を超え続けていくこと」これこそがビジネスにおけるいちばんの秘訣です。

具体的には、どういうことなのでしょうか? あるコンサルタントの方の、新人時代の強烈な体験を通して説明しましょう。

 

「そんなこと、1ミリも頼んでない!」

彼は、コンサルタント一年目にマネジャーから激怒されました。その理由が、「ていねいな仕事をしてしまった」からだと聞いたら意味がわからないかもしれません。でも、怒られた。どういうことでしょうか?

彼は、一年目で配属されたプロジェクトで、あるサービスの市場規模を算出することに取り組んでいました。この仕事において、クライアントが最終的に知りたいことは単純で、そのサービスの市場規模の金額そのものでした。それを正確かつ合理的に算出するというのが、彼のミッションでした。

しかし、彼はサービス精神から、市場規模の数字以外にも、関係者に行ったヒアリングの議事録を書き直し、ていねいにファイリングして、正月を返上して自分なりに働きました。非常に前向きな努力です。しかし、正月を潰してつくったファイルをもって休み明けに会社に行ったところ、上司に言われたのが先ほどの言葉だった、というわけです。

「そんなこと、1ミリも頼んでない。それより、市場規模の算出を進めるように。きみがやっているのは単なる無駄。事実、正月休みだってなくなったじゃないか。そんなことして(過労で)倒れてしまっては元も子もないぞ」

彼はその考え方の違いに、ショックを受けたといいます。たしかに、クライアントの求めているのは、市場規模を出すことでした。数字の精度を上げる方向の努力なら喜ばれもするでしょうが、本筋と関係ないおまけをくっ付けたところで、クライアントからしたら、どうでもいいこと。クライアントの立場に立ってちょっと考えてみれば、わかることです。

求められていないことに時間を使っても、クライアントからも上司からも評価はされないのです。まずは、相手が何を期待しているのかを正確に把握する。相手が期待する中身がわかったら、それを絶対に外さない。

 

相手の期待値以上の成果を出す。常に出し続ける

コンサルタントというのは、基本的にはサービス業です。その基本は、相手のニーズを聞いて、それに応えていくことにあります。ですから、クライアントが何を求めているのかを把握することが、まず、何よりも大事です。そして、求められている中身がわかったら、次は、そのレベルにおいて、何がなんでも、相手の期待以上の成果を出す。これが、ビジネスのすべてです。

先ほどの例で言えば、「市場規模の数字を出すこと」がクライアントにもっとも求められていることでした。それ以外に関しては、さほど期待されていません。では、このなかで、どうやったら、「相手の期待を超え」、相手の満足を得られるのでしょうか?

市場規模の数字に関して100%の答えを出すこと。これが最低ラインです。もしここが90%の出来なら、その仕事は、失敗です。いくらおまけをつけて取り繕っても、全体の評価は決してよくなりません。逆に、そこさえちゃんと100%の答えをもっていけば、極論を言えばほかのことはゼロでも構いません。相手は期待していないのですから。

相手が何を、どのレベルまで期待しているかを見極め、絶対に外さない。そして、相手の期待値のちょっと上を常に達成していく。

「相手のニーズ、つまり、それぞれにどういう成果のクオリティを求めているのかをきめ細かく把握すること。そして、ビジネスというのは、その期待値のちょっと上を常に達成していくこと」

「相手の期待値がどこにあるのかを見極めて、絶対に外さない。そこだけは、相手の期待を上回る120%のものをもっていく」

多くのコンサルタントが語るビジネスの秘訣、それはつまり、相手の期待値を測り、いちばん重要な部分で期待を超えていくことです。

 

期待値を満たせないものは、安請け合いしない

相手の期待がどこにあるのか、どの程度までのものであるかを把握するためには、そのためのコミュニケーションが重要になってきます。一方で、ときには、相手の期待値そのものをマネジメントする必要がでてきます。つまり、期待値を下げてもらうのです。

ときには、相手の期待値を下げる、期待値のマネジメントも必要。

たとえば、相手がすべてにおいて100%を期待しているような場合。自社のリソースをはるかに超えるものを、実現不可能な期日とコストで求められるような場合。こうしたとき、決して安請け合いしてしまってはいけません。

常に、相手の期待値のちょっと上をいくことがビジネスの基本である以上、どんなに努力したところで、相手の期待値が絶対に超えられない、とあらかじめわかっている案件は受けるべきではありません。そういう場合は、本質的でない部分については期待値を下げてもらうように、事前にコミュニケーションをとっておくことも必要です。これが、期待値のマネジメントです。

 

著者紹介

大石哲之(おおいし・てつゆき)

作家、投資家

1975年生まれ。慶應義塾大学卒業後、外資系コンサルティングファーム、インターネットスタートアップ・エグゼクティブサーチファームの創業などを経て、現在は海外に拠点を移し、投資家としてプライベートな活動を行っている。著書に『3分でわかるロジカル・シンキングの基本』(日本実業出版社)、『過去問で鍛える地頭力』(東洋経済新報社)など20冊以上。

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×