年齢を重ねるごとに感じる、疲れやすさや肌の衰え。そんな心身のアラームを解決する鍵は、私たちの生命活動を支える「自律神経」にありました。だからこそ着目したいのが、自律神経のシステムに深く関与する「腸」の存在です。朝起きてすぐに飲むコップ1杯の水や、1日3分の「腸もみ」など、誰でも今日から始められるシンプルな習慣が、あなたの肌と体を劇的に変えるかもしれません。その驚きの秘密を探ります。
※本稿は、小林弘幸著『科学的に証明された 自律神経を整える習慣』(アスコム)より一部抜粋・編集したものです。
腸内環境が整うと自律神経も整う?
自律神経を整えられれば、多くの症状が緩和され、生き生きと楽しく、しかも若々しく生きていける。
では、何をすれば自律神経が効率よく整うのか、気になりますよね。
私が強くおすすめしたいのは、「腸を整える」生活習慣です。
腸が整えば、自律神経も整うといっていいくらいです。
腸と脳は位置的にもけっこう離れているのに、なぜ? と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ところが、じつは「脳」と「腸」は強く連携しているネットワークです。
自律神経によって腸の動きがコントロールされているという意味でもそうなのですが、自律神経のシステム自体が整うかどうかに、腸の動きが深く関連しているからです。
私はよく自律神経を整える第一歩として、「朝起きたら、食事の前にまずコップ1杯の水を飲む」ことをおすすめしています。
わかりやすい効果は、便秘の解消です。便秘は女性だけでなく、男性高齢者にも悩んでいる方が少なくありません。朝の水は、腸を刺激して「蠕動(ぜんどう)運動」を促してくれます。
1杯の水は、便秘解消以外の作用ももたらします。腸は副交感神経の支配下にあるため、腸を刺激することは副交感神経を刺激することにもなるからです。
腸の動きが鈍るのは副交感神経が低下しているからなので、朝に水を1杯飲むことは、腸を刺激して動きを活発にするだけでなく、起床後の交感神経が高まるタイミングで副交感神経が低下しすぎないようにする効果も期待できます。
冷水が苦手なら白湯や常温水でもOK。朝だけでなく、1日を通じて合計1.5リットル程度の水を毎日飲むように心がけるといいでしょう。
1週間も続ければ、多くの方が効果を実感できると思います。そして、改善するのは便通だけではないことにも気づくでしょう。頭痛が和らいだ、疲れがとれた、体が冷えにくくなった......などなど。そう、すべて自律神経が整ったための効果です。
そして、便秘の改善は腸の動きをさらに活発にしてくれます。
自律神経と血流には強い関係がありますが、よい血液を送り出すために働いているのは腸です。
腸がよければ全身の状態もよくなると考えてみてください。
便秘による不調が生活の質を低下させる
アメリカの研究データによると、慢性便秘症に悩む患者は、そうではない人よりもQOL(生活の質)が相対的に低く、日常活動性の障害率や労働生産性の低下率も格段に高くなっています。
毎日不快な症状を抱えていることで自律神経も乱れてしまい、人生のパフォーマンスそのものが低下してしまっていると考えられます。
便は毎日出るのが理想ですが、2〜3日に1回でも大丈夫です。ただし、3日以上出ない状況が続くなら便秘です。
私の所属している順天堂大学医学部附属順天堂医院では、日本で初めての「便秘外来」を開設しています。便秘に悩む患者さんは非常に多く、受診までには年単位でお待ちいただかなければならない状況が続いています。患者さんの中心層は、女性は20〜30代、男性は50代以上です。
そこで、ここでは私たちが多くの患者さんに共通してアドバイスしている内容を3点、簡単にまとめてみました。
まずは自分に合っていそうなもの、やりやすそうなものから始めてみるといいでしょう。
まずは、「腸もみ」です。
便秘は便が腸に滞留してしまっている症状ですから、体の上から直接刺激して、腸の機能を上げてみましょう。
腸もみは1回3分、朝晩の2回だけで結構です。食事の直後を避け、腸の四隅を刺激します。
次に、併せて行ないたいのが「腸活ストレッチ」です。本来なら排泄機能が高まるはずの朝の時間帯に、ひねりを入れた運動や腰を回すといった、腸に刺激を与えるストレッチをします。
なお、これらの運動は、呼吸法と一緒に効能に行なうとさらに効果的です。
そして、最後は便を出しやすくする食品をとること。効果的なのは、オリーブオイルなどのオイル類です。毎朝起きたあと、スプーン1杯程度をめどにとってみましょう。オイル単体でとるのが苦手な方は、サラダにかければ食物繊維も一緒にとれて一石二鳥です。
また、私のおすすめは「はちみつとオリーブオイルをかけた焼きりんご」。
りんごは水溶性食物繊維のペクチンが豊富ですし、加熱することで、りんごの皮に含まれるペクチンの量と吸収率がさらにアップします。
気になる方は、ぜひレシピを検索してみてください。
美容におすすめはヨーグルトとチョコレート
自律神経が乱れると起こる症状のひとつに、「肌荒れ」があります。年齢を重ねて副交感神経が低下してくると、肌のターンオーバーが遅れてシミが目立つようになってしまうだけでなく、髪のパサつきも進んでしまいます。
そこで自律神経を整えれば、おのずと肌も整い「美肌」への変化が期待できるわけですが、腸を整えることこそ、その最大の近道だといってもいいでしょう。
腸内に腸内細菌がいるように、肌にも菌が常時存在し(常在菌)、肌の状態に影響を与えているという研究があります。その数、250種以上ともいわれています。
また、腸内に善玉菌と悪玉菌が存在するように、肌にある菌にも、「美肌菌」とでも呼ぶべき善玉菌と、悪玉菌に相当するものがあると考えられています。善玉菌には悪玉菌を抑える「表皮ブドウ球菌」や、乾燥から肌を守ってくれる「サーモフィルス菌」が、悪玉菌には炎症やかゆみのもとにもなる「黄色ブドウ球菌」などが存在するほか、日和見菌もあります。
肌もやはり、善玉菌が悪玉菌よりも優勢であればよい影響があります。腸内に腸内フローラがあるように、肌にもいわば「肌フローラ」があるわけです。
腸内フローラが改善されれば直接的に肌フローラもよくなるのかどうかについては、まだわからないことが多く、今後の研究課題となっています。
ただし、腸が健康であれば、少なくともよい血液が体中に行きわたるようになります。美肌のためには血の巡りが欠かせませんから、その意味では直結しているわけです。
肌の乾燥を防いでくれるサーモフィルス菌は乳酸菌の一種で、ヨーグルトなどにも含まれている菌です。つまり、腸内環境を整えるためにヨーグルトを食べることは、肌の改善にも貢献してくれるということです。
ヨーグルトと同様、自分に合う質のいいサプリメントを見つけることもいいでしょう。私は栄養素の補給にサプリメントを使いすぎることには否定的ですが、乳酸菌は例外です。そして、もちろん食物繊維も同時にとるようにしましょう。
さらにおすすめの食べ物は、チョコレートです。カカオポリフェノールの抗酸化作用がシミの予防に効き、またカカオプロテインが肌のターンオーバーを促進すると考えられています。
チョコレートはナッツと並ぶ「完全栄養食」です。
食べすぎは禁物ですが、自律神経を整える成分が豊富なので、カカオ含有量の高いチョコレートを間食に取り入れるのもおすすめです。








