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なぜ、職場での他人のフォローは疲れるのか? 潰れる前に“心の状態を知る3つのテスト”

佐藤恵美(メンタルサポート&コンサル沖縄代表)

2024年09月03日 公開

なぜ、職場での他人のフォローは疲れるのか? 潰れる前に“心の状態を知る3つのテスト”

なかなか仕事を覚えてくれない若手や、雑用をすべて押しつけてくる上司......。そうした人々へのフォローが、職場の「できる人」の心を蝕んでいる。そんな「できる人」たちが自分の心の状態を知り、ケアするための工夫やノウハウを、心理臨床家の佐藤恵美氏に教えてもらった。

※本稿は、『THE21』2024年9月号掲載記事の内容を抜粋・再編集したものです。

 

「他人のフォロー」がしんどい人が増えている

以前は楽しく取り組めていたはずの仕事が、そう思えなくなっている。ブラックというわけではないし、辞める気もないけれど、「この雑用、私ばかりがしている気がする」「新人くん、そろそろ仕事覚えてよ」といったモヤモヤが、職場にいる間ずっと心のどこかにある──そんな方はいないでしょうか。

そこには当然様々な事情がありますが、その大きな原因として「職場における他人のフォローに疲弊すること」があります。 特に、周囲から「面倒見がいい」と頼られるような、よく気がつくタイプの人は要注意。そういう人ほど、職場の「名もなき小さなフォロー」を一手に抱え込んでしまうからです。

そんな状況が続けば、「なんで自分だけが」とか「他の人はどうして気づかないのか」などという気持ちに蝕まれ、心がささくれ立っていくのも当然でしょう。 私が相談を受ける中でも、こうした声を聞くことがよくあります。雇用形態が多様化し、育児や病気、親の介護などの事情を持つ人への配慮がこれまで以上に求められるようになる一方で、人手不足が深刻化し、世の職場からどんどん余裕が失われているのがその原因。職場の細かなフォローを担う人が、パンクしやすくなっているのだと思います。

メンタルの不調で一人が休職した途端、他メンバーの負担が激増し、次々に休職者が――そんな悲しい「休職ドミノ」も、今や珍しくはありません。

では、そんな厳しい環境で自分の心を守るには、何をすればいいのでしょう。できる行動は大きく分けて2つです。

①仕事の手順や日程など、自分の「外側」に働きかける
②自分が「しんどい」と感じる理由を探り、自分の「内側」を変えることを模索する

もちろん、①も環境次第では有効です。ですが、すぐに自分で取り組めるのは、②の方向性での対応ではないでしょうか。 そこで本記事では、自分の内面から「支えることのつらさ、しんどさ」を乗り越えるための様々なコツをお伝えします。

 

「自分の心の状態」を確認することから始めよう

心の状態を知る3つのテスト

自分の内面から「他人のフォロー」のしんどさに対抗するためには、次の2つのことに取り組むことが必要です。

①自分を客観視し、心の状態を把握すること
②心を癒す技術を知り、正しくケアすること

この2つを繰り返し実践するだけで、日々の困難にも折れないしなやかな自分を育てることができるはず。まずは①の、自分の心の状態を知るためのチェック方法からお伝えします。

最初に、基本的なテストで心の状態を探りましょう。自分の中に「心のエネルギータンク」があり、満タンで「10」のエネルギーが入るなら、今のエネルギー量はどのくらいでしょう。直感で答えてみてください。数値に対応する心の状態の目安は、上の図に示しておきました。

これは、何か学術的根拠のあるテストではありません。ですが、自分の心の元気度を数値化することは、自分の状態を知るうえで大変重要なこと。大切なのは、これを日々継続することです。心の疲れは、身体のそれと違ってなかなか自覚できません。数値化する習慣をつけて初めて、日々の変化を知ることができるようになるのです。

そうすることでようやく「今日はいつもと比べて心の調子がが微妙だな。昨日の残業のせいかもしれないし、今日は無理してでも定時退社で」などと、原因とその改善策まで考えられるようになります。行動の改善につながるこの「気づき」を得ることこそ、このテストの最大の意義だと言えるでしょう。

なお、心のエネルギー量は時間にも左右されますので、これを自分に問いかける時間は、毎日だいたい同じにするのがお勧めです。

このテストを基本にしつつ、疲れが続くようなら上図で紹介している「応用編①②」にも取り組んで、自分の状態をより詳しく把握しましょう。心が疲弊しきってしまう前に立ち止まれるよう、役立ててください。

 

「まだ大丈夫」なうちに自分のために時間を使う

心をケアする小さな技術

テストを通じて自分の状態を客観視できたら、次は「自分の心をケアする技法」を知り、活用する段です。

職場で細かく他人をフォローできるほど面倒見のいい人は、つい「やるべきことを、ここまでは全部終わらせないと」と考えて、いったん自分に課した完成度ややり方を変えないのですが、人間のエネルギーは有限です。まだ大丈夫と思っているうちに、突然「もう無理」の状態になってしまいます。比喩ではなく、うつ状態は本当にある日突然やってくるものなのです。

身体に強制ストップをかけられてしまう前に、ぜひしっかり時間を使って心をケアし、エネルギーを補充しましょう。 そのための具体的な方法は全部で9つ。こちらも上の図にまとめましたので、詳しくはそちらを参照してください。

まずはレベル1から焦らず順番に取り組むのがいいでしょう。少なくとも「十分な睡眠時間を確保すること」には、ぜひ手をつけていただけたらと思います。

そうしてある程度気持ちの余裕が生まれてきたら、図の一番下にある「認知行動療法的ストレス対処法」にも、ぜひチャレンジしてみましょう。

メールやチャットが社会に浸透し、仕事中は息つく間もなく「やること」に追われる時代になりました。そんな中で「本当に大切なこと」を見失わないためにも、常に自分の心の状態を把握し、ケアすることが欠かせないのではないかと思います。

著者紹介

佐藤恵美(さとう・えみ)

メンタルサポート&コンサル沖縄代表

精神保健福祉士、公認心理師、キャリアコンサルタント、臨床発達心理士。20年間で1 万人以上の相談実績がある、労働者メンタルヘルスの専門家。北里大学大学院医療系研究科産業精神保健学修了。医科学修士。日本産業精神保健学会理事。埼玉県内の精神科単科病院医療相談室、東京都内の医療法人社団弘冨会神田東クリニック副院長、同法人MPS センター副センター長を経て、2020年に「メンタルサポート&コンサル沖縄」を設立。現在、沖縄在住。県内外の企業や官公庁に対して、さまざまなメンタルヘルスサービスを提供し、年間500人以上にカウンセリングを行なっている。

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